「筋力不足のゆるふわ社会派」ヴィレッジ ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
筋力不足のゆるふわ社会派
何がしたかったのかなー?
中盤まではテンポも悪くないしまあまあ……ところがあの「メイクで大丈夫」以降の展開がよくわからない。
いや、意味としてはわかる。この「ムラ」の真の悪質さ、逃げがたさをこそ描きたかったんでしょう。
そしてあの産廃施設は原発やら米軍基地やら、日本中に置き換え可能なメタファーだってことも。
でも結局のところこの映画としてのテーマはよくわかりませんでした。
勝手な想像だけど、そういうめんどくさい文脈はおじさん映画人のアイデアで、本人的にはそれほど興味ないのでは疑惑。まじで浅瀬でチャプチャプどころか、アサリが取れそうなくらい浅いからね。
能が題材で、山の中にある過疎の村、そして一ノ瀬ワタルと横浜流星、と来ればもうウルトラ暴力の予感。
クライマックスは能と血まみれの死闘がカットバックするのかなーとか、暴発した横浜流星が八つ墓村ばりの大虐殺をやり切ったあと、能面をつけて舞うのかなー、などドーパミン大放出の場面を想像した自分がバカでした。せっかくの配役がもったいないなー。
他者発祥の因縁でヒドイ目に遭いつづけた主人公が村を出ない理由もわからなければ、**(ネタバレ)に受け入れられた程度で別人のように真っ当な会社員になるのもよくわからない。いや心情はわかるけど、実際やれるかどうかって話。そもそもそんな適応力あったらここまで煮詰まってなくない?
もしや自分の後ろ暗い部分が相手にバレるんではとヒヤヒヤする、とかいう流れならまだわかるが…
藤井道人作品って、一見社会問題に興味あるフリして解像度が低いっていうか、手つきがザル。リアルな問題の実相には興味なさそう。。
エンタメとしての快楽があるわけでもなく、社会問題もふわっとしか扱えない。これなら実在する社会問題のドキュメンタリーを観た方がよほどマシ。
テンポが悪くなく、ほぼ2時間に収められたことだけは評価したいけど、それも多数いる登場人物の描き込みが浅いからという気もする。
売れっ子だし、今後もこういうセンで行くなら、いっそ荒井晴彦とかめんどくさいベテラン脚本家と組んで大揉めした結果、味わい深い珍映画を世に放ってほしい。
