「30年前の未解決殺人事件を追う映画に当時の担当刑事が主演し、当時近所に住んでいた少年が監督した異端作... "調べても意味が無い"に抗い続ける映画」とら男 O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
30年前の未解決殺人事件を追う映画に当時の担当刑事が主演し、当時近所に住んでいた少年が監督した異端作... "調べても意味が無い"に抗い続ける映画
今から30年前に発生し、2007年に公訴時効が成立した実在の未解決事件である金沢・女性スイミングコーチ殺人事件を題材に、なんと非俳優の当時の担当刑事が主演し、事件現状近くで幼少期を過ごした監督が撮り上げたセミドキュメンタリーという異端作…。
その根底に警察組織の縦割り社会と無謬性への強い抗議があるため、警察内部での物語とは成り得ず、一人の女子大生の卒論研究という体裁を取ってはいますが、それゆえに単なる内部告発ではなく、周縁に忌避されて忘れ去られた事物に敢えて踏み込むことへの倫理を問う作品にもなっていると感じました。
一人の誠実で愚直とも言える熱意を持った元警察官の生き様が彼の険しい表情に現れており、それが映像ディレクター出身の監督の示した画角で有無を言わせぬ圧力になっていたように思います。
事件のルポとしては些か中途半端だったかもしれませんが、間違いなく執念は感じられる作品でした。
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