「もっとテーマを絞って、普遍性や一貫性を持たせた方が良かったのでは?」天間荘の三姉妹 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
もっとテーマを絞って、普遍性や一貫性を持たせた方が良かったのでは?
不遇で孤独な人生を送った末に臨床状態となった者が、天国に行くのか現世に戻るのかを選択するという話だと思っていたら、大災害で突然命を絶たれた人びとが、自らの死を受け入れて成仏する話になる。
臨床状態の登場人物は、主人公を含めて3人だけで、選択までの過程が比較的丁寧に描かれるのに対して、災害で亡くなった人は数十(百?)人もいる上に、(漁師の青年以外は)水族館でまとめて経緯を説明された後に、旅館で集団で昇天していくという雑な扱いで、バランスが悪い。
それぞれに、「誰にでも必要としてくれる人がいる」であるとか、「死んでも心の中に生きている」といったメッセージが用意されてはいるが、それらが、すべて台詞で説明されてしまうので、なかなか心に染み込んでこない。
不遇で孤独な人生を送っている人は、他にもたくさんいるだろうに、なぜ彼女たちだけなのか?ある日突然命を奪われた人は、大災害以外でもたくさんいるだろうに、なぜあの町の人たちだけなのか?といった疑問も沸き上がる。旅館がなくなってしまったら、これから先、臨死状態の孤独な魂はどうなってしまうのかという、最も大きな疑問も残される。
現世に戻るにしても、昇天するにしても、タクシーで行ったり、船で行ったり、光の玉になったり、門を通ったりと、一貫性が無さすぎる。
ファンタジーであるならば、それに説得力を持たせるための一定のルールが必要であろうし、そもそも、なぜファンタジーなのかという、必然性も分からない。
テーマやエピソードを絞り込んで、無理にファンタジーにせず、普通のヒューマン・ドラマとして作ったら、もっと良い作品になったかもしれないと、残念に思った。