「死して尚闘い続ける」ナワリヌイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
死して尚闘い続ける
今見なくてはならない映画というのがある。いつの世にも。
大ヒットとかブームとかそんなミーハーじゃなく、“今”を映し出す作品として。
本作は公開時からそうだったが、今のみならず今後尚更そうなっていくだろう。
昨夜(2024年2月16日)入ってきたニュース。アレクセイ・ナワリヌイ氏死去。
ロシアの政治活動家。プーチン政権と闘い続けてきた。
政敵とされ、幾度となく不当な妨害や逮捕。プーチンは“あの男”呼ばわり。
抗い続けるナワリヌイ氏を、プーチンは脅威に感じていたのだろう。遂には暴挙に。
2020年、飛行機内で体調を崩す。毒殺未遂…。
邪魔者は消す。が、プーチンは関与を否定。
ウクライナ侵攻と全く同じ。こちらに否はない。
ドイツにて治療。回復し2021年に帰国するも、身柄を拘束…。
映画は毒殺未遂事件~身柄拘束までが主となっている。
これはドキュメンタリー、全て真実。まるでスパイ映画のようなスリリングな出来事は作り話じゃない。衝撃と戦慄しか出てこない…。
現政権と闘う政治活動家故、ロシア国内でも支持派もいれば不支持派も。
プーチン派や時にはメディア・ジャーナリズムからの言及。
最も痛いのは、不支持派の国民からの声だろう。
プーチン独裁の現ロシアから国民を解放しようと抗い訴え続けているのに、プーチンを支持する国民もいる。誰を支持するかなんて、こればっかりは仕方ない。
が、味方も勿論いる。
同じ志の者。
愛妻。
ドイツのメルケル首相始め、あの事件以降世界中からの支持者。
そして、国内の支持派。何よりの最大の味方。
やはり多くがプーチンのやり方に異を唱え、否定している。
一人がただそう思っていても何も起こらない。
賛同者たちが現れ、集まり、声に。
やがて先頭に立って闘う者が現れる。
帰国の際、待ち望む国民たちも。
“英雄”。中には彼を“大統領”と呼ぶ声も。
その矢先の拘束。
ロシア国内の刑務所から北極圏の刑務所へ。戦後にタイムスリップしたのか、それとも時が止まったままなのか。
懲罰房入りも何度か。拷問もあった事だろう。
彼が解放される日は…? それこそプーチン政権が倒れないと来ないのだろうか…?
本作は昨年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞。
受賞スピーチで、監督や集ったスターたちがナワリヌイ氏にエールを送っていたのを覚えている。
まさかその僅か1年後…。こんな形での解放は誰も願っていなかった。
刑務所内の散歩中の急死と報じられているが、誰がそれを信じるものか。
例えそうだったとしても、苦境に陥れた事に変わりはない。
今尚続くウクライナ侵攻。
障害になる人物や側近への制裁。
反体制派の中心人物の突然死。
これだけの大罪を犯しながらプーチンの独裁が続く訳ない。
いつか必ず、暴かれる。倒される。
ナワリヌイ氏は死して尚、抗い、訴え、闘い続ける。
起きてほしくないことが、やはりおきてしまいましたね。選挙を前に反対派の候補者の立候補はことごとく排除され、ナワリヌイ氏までも。ニュースでも彼の献花に訪れた支持者を拘束する映像も。恐ろしい政権。
多くの人にこの映画観てほしいですね。