「人生のA面とB面」プアン 友だちと呼ばせて 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
人生のA面とB面
非常に興味深い映画でした。
2時間の上映時間の前半1時間は、ボスとウードの友情物語。
そこまでがA面です。
後半は金持ちのボンボンで苦労知らずのバーの経営者ボスへの、
ウードの屈折した思いそして結果としての【裏切り】
そのB面で真逆の2人の関係性や内面が描かれるのです。
A面では白血病で余命僅かのウードからNY住むボスに、
数年ぶりの電話が来る。
自分は死ぬ前に元カノに会って大事な物を渡したい、
だから、ボスにバンコックまで来てくれ!
元カノの所へ連れてってくれ!!
とのお願いでした。
ボスは経営するバーを休んで、わざわざNYからバンコックまで、
飛行機に乗り、着いたら車を調達して元カノの住む街に
ウードを送る、運転手役です。
するとウードの元カノはなんと3人も居て、
ボスは3都市へ送るハメになるのです。
まぁ、ボスさんてなんて優しく思いやりのある好青年でしょう。
おまけに韓国人にしか見えないイケ面でスマート。
頭髪が抜けて、眉もない痩せこけたウード。
B面にカセットテープをひっくり返すと、
(ウードの父親は人気DJだった男で、旅のBGMは父親の放送を
ラジカセで録音したカセットテープなのです。
きっちり1時間でテープを裏のB面にひっくり返す念の入れ用です。
後半で分かるのはボスの彼女のプリムの恋路を邪魔して
《裏切り工作》を、
していたのはウードだったと分かる。
「プリムは白人の新しい彼氏とカリフォルニアに行った」
なんて嘘をつく、
(実はウードもプリムを好きになり告白したのに振られた、)
プリムの心代わりにショックを受けたボスが、チンピラに殴られて、
その反動で線路に落ちる。
それを助けたのがウード。
恩に来たボスは、“命の恩人とウードの仕事を与えたり”
2人は親友になる。
プリムとの仲を引き裂いたウードは、最後に仲を取り持とうとするのだが、
ボスはもう聞く耳を持たなかった。
ともかく凝りに凝った映画です。
ウードが元カノと会う場面も、その前に、
ウードが夢見る・・こうだったら良いなあ・・・や、
過去にはこういうエプソードがありましたよ・・
が挟まります。
ボスの母親の再婚話や、連れ子のボスは体よくニューヨークに、
追い払うためにバーを持たせて更に仕送りする、などなど。
そしてバー経営より女遊びに明け暮れるボス。
ウードでなくても、嫉妬や、やっかみますよね。
「恋する惑星」や「天使の涙」などの恋愛映画の名手、
ウォン・カーワァイ監督が製作で手助けしたそうですので、
カメラワークもインテリアなどの美術も
とても美しいし、お父さんが有名DJだったので、
挿入される音楽もなかなかです。
しかしこれだけ複雑なSTORYですが、
それほど感動したかと聞かれると、
うーん、感心はしたのですけど、感動した、
とまでは言えない。
自分がシンプルな人間関係を築くタイプなので、裏切りとか、
隠し事とか、と縁遠いから、
紆余曲折のない平凡な人生なので、
イマイチ乗れませんでした。
ウードを演じた俳優さんは、本当に上手くて病人に見えたし、
ボス役の彼も美しいし15年位の外見の変遷を、上手く演じてました。
失礼かもしれませんが、タイ映画らしくない、
都会的なお洒落な映画でしたね。