「どこの国でも深夜ラジオには変わらぬ愛が詰まっている」プアン 友だちと呼ばせて 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
どこの国でも深夜ラジオには変わらぬ愛が詰まっている
疎遠だった親友と車で旅に出る。カーステレオからはひと昔前に流行った音楽と、初老DJのちょっと気恥ずかしくなるくらい真っ直ぐなメッセージーー。このシチュエーションを創り出した時点で、本作が世界中のあらゆる観客にとってノスタルジーをもたらす名作になるのは保証されたようなもの。「昔の恋人に会いにいく」という旅の目的からは、つい軽くて甘い映画を想像してしまうが、本作は早々にその域を飛び越え、重厚さ、そして人生のほろ苦さをあらわにする。一つ特徴的なのは、全てにおいてまず行動が描かれ、その後、経緯や心境が明かされるということ。一本調子、一直線ではなく、どこか展開図を開くような構造を持っているというべきか。過去と現在とで印象を変え、人間の美しい部分だけでなく負の部分をも覗かせる主演二人の存在感は見応えあり。彼らの人間としての変移や成長が、やがて美しい風景と深く相まって、本作を実に忘れ難い映画にしている。
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