「タイトルなし」プアン 友だちと呼ばせて えみりさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
主人公の俳優がいい。何故か向井理くんの眼差しとの近さを感じる。
センスはいいし、作り方もうまい。でも器用さが目立ってつまらないかもと感じていた。良かったのは、恋愛に関してのりを超えてしまうストーリーだろうか。瞬発的な彼らの怒りの演技もいい。非アジアにいるアジア人たちの裕福さのセンスなのだろうか。でも、階級が埋め込まれているのも良かった。
元カノたちが魅力的だ。それらは監督の元カノの面影だというから、恵まれた恋愛経験というか、女性たちの方が自立し成熟し魅力的だったことがわかる。男性は二人共、女性を支配し、古い。監督もそうなんだろうと思われる。その意味でどうして、プリムがボスをそこまで好きだったのか、物語に説得力がない。監督のファンタジーという気もする。
ボスのお母さんの話はちょっとあまりにめちゃくちゃだし。
カクテルのディテールがいい。監督はいつもバーで仕事してて、自分でもバーを開いちゃったというから、その経験の厚みは生きている。
ノスタルジーでもあるけれど、思い出の一コマへの一瞬の映像の輝きは素晴らしいと思う。彼がもう死んでしまうから、元カノと会ったとき、再会はどれも散々なのに、彼の思い出の中での彼女たちはとても輝いていて、女優たちもとてもチャーミングなのだ。その表現は何だか感動的で、この点ですごくいい映画だと感じた。人と出会うこと、二人での経験の輝き。どんな挫折や不幸さえ、カクテルのように一つのオリジナルなテイストを生み出す。
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