「期待度△鑑賞後の満足度◎ 思わぬ拾い物。六人の女の素性が直ぐ判るのは私が自然豊かな奈良県で生まれ育った田舎者のせい?森(自然)が人間を試した話とも云えるかな。」唄う六人の女 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
期待度△鑑賞後の満足度◎ 思わぬ拾い物。六人の女の素性が直ぐ判るのは私が自然豊かな奈良県で生まれ育った田舎者のせい?森(自然)が人間を試した話とも云えるかな。
①何の予備知識の無いときは観る気は無かった。けれど、ローカルニュースで宇陀市と大和郡山市でロケした(奈良奥山自然林も有った様な?)と知れば、“奈良県人たるもの観ずばなるまい”とかなりええ加減な動機で観たけれども、結果として観念的なところは少々あるものの幻想と現実とが混ざり当った不思議にも面白い映画であった。
②話の筋の方は他の方のレビューを読んでもらうとして(勿論観てもらうのが一番良いのですが)、現実空間とも異空間ともとれる二人が迷い混んだ(連れてこられた?)世界の構築が作り物臭くないのが宜しい。
それとも美しく撮られた森のマジックがそう魅せるのか。
③主演の二人は拒否反応を示しておりましたが、虫って美味しいんだぞ(蜂の子とか)。
あと、久しぶりにマムシを見たけど、あんな大っきなマムシは見たことないなぁ。
④不可思議な女達に二人の男が右往左往させられる前半から、真相はかなり現実的なものだと判る後半への流れが不思議と自然に感じられるのも、時折挿入される萱島の記憶のフラッシュバックが伏線になっているのと、リアリステックな部分とファンタジックな部分とが上手くシンクロしているせい。
⑤あの森が仕組んだ大芝居は単に自分達の自然を守るためだけではなく、欲にまみれた人間が将来引き起こすかもしれない惨事からもっと大きなものを守るためだったのだろう。
⑥萱島がふと心に残った一枚のセピア色の写真が全ての謎を解明するキーになっていたこと、萱島がカメラマンを仕事として選んだ根底に父の存在があったこと、これらが最後に繋がる脚本はなかなか巧い。
⑦自然(人間を含めた)は今が進化の終着点ではなく、現時点でも進化を続けていて、いずれ人間も進化の果てに存在意義がわかる(その前に滅びなきゃいいけど)という結構壮大な監督の視点というか哲学観も、あの美しい森を観ていると頷けるような気もする。
⑧森の意図・自然(人間を含め)の真の姿を理解できた方を竹野内豊が演じ(アマガエルに転生出来た?)とその意志を継いだ武田玲奈(後輩の奥さんによく似てるんだよね)(唯一一人二役で共に子供を見守る役。化身の方は山田孝之に惨殺される。これも人間の悪行か?)せっかく生んだ卵を山田孝之に無情にも割られる見つめる女。ここにも人間の破壊欲がシンンポライズされているようだ。
森・自然に最後は復讐される人間を山田孝之が演じる(プロデューサーも兼ねているから憎まれ役の方を選んだのかな?)
氷川あさみは、今期のNHK朝ドラ『ブギウギ』での浪速のおっ母さんぶりがウソみたいな妖艶さ。やはり女は化け物だわ。
女たちの目の色が全て同じ(コンタクト?)にしてあるのも細かい演出だ。
⑨父親役の俳優さん、どこかで見たことがあると思ったら『赤目四十八滝心中未遂』や『キャタピラー』の主演男優さんだった。当時より大分ふっくらされているんで直ぐには分からんかったわ。
⑩と、地元愛から少々誉めすぎてしまったかも知れない。分かりにくい点が少なからず有るのも確か。
でも今年の日本映画のなかでも映画らしい映画として記憶に残る一本だと思う。
共感&コメントありがとうございます。
自分が不愉快になるって・・役者は大変ですね。「愛はイナズマ」の三浦貴大さんもそうだったんでしょうか、「ほつれる」に書いたんですが、幸せそのもの! という演技が一番難しそうです。