劇場公開日 2023年10月27日

「やや明確に不自然な点はあるが(気づく方いるかな…)良い作品」唄う六人の女 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5やや明確に不自然な点はあるが(気づく方いるかな…)良い作品

2023年10月30日
PCから投稿

今年366本目(合計1,016本目/今月(2023年10月度)31本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))

 何十年ぶりかに実家に戻って広島でみました。

 内容としてはホラーに分類されるのだろうと思いますが、いわゆる「犯人の動機は何でしょう?」系も混ざってくるので複数の見方ができる映画です。また、意図はしていないと思いますが森林の描写がかなりきれいで(CGではないはず。京都か奈良だったはず)、「その意味で」ヒーリング的な意味合いも「ちょっとだけ」あります。

 個々細かい突っ込み点はあるものの、さくっと短い映画でホラー映画を見たいなら今週おすすめといったところでしょう。

 以下、気になった点ほかを書きつつ採点に入ります。
4.4を4.5まで切り上げています。

 ----------------------------------------------------------------
 (減点0.3/不動産業者が登記を行わない理由が不明)

 民法177条は以下の通りです。本質的に重要なので省略せずすべて記載します。

 第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 要は、「当事者の間では登記なしでも問題はないけど、第三者が現れてきたら先に登記しないと不動産の購入売却等の事実があっても相手側には勝てません(だから登記しましょう)」という趣旨のものです。

 そして、この映画では不動産業者が登場します。不動産業者というのは結局のところ「土地をただ単に買うだけ」ではなく、「誰かから買って、誰かに売る」つまり仲介役にたちます。記号でいえば、A(売りたい人)→X(不動産業者)→C(買いたい人) という関係です。

 ここで問題になるのは、AとXの間でも登記をしていないと「他人に乗っ取られてアウト」(177条のいうように登記しないと第三者には勝てません)であるため登記の話が出てくるのですが、何かの「一般の契約」と同じように「ここにサインしてください」みたいな感じになっているのが、明確に「そりゃ違うだろう」というのは気になったところです。

 ただ話がそれで済むなら簡単なのですが、「買いたい人」がすでにもう見つかっているような場合、X(不動産業者)は実質「いらない人」になります。つまり、A(売りたい人)からC(買いたい人)に直接登記を移してXは一切どこにも資料に出てこない、というようなことも可能「でした」。これを「中間省略登記」といいます。平成16年より前は、最高裁でさえ「3人が同意しているなら法は禁止していない」と述べたにも関わらず、行政は渋った状態で(これは、「一種の脱税的節税に使われる」「反社会的組織が関与しても追えない」「正確な登記記録ができない」といった理由があった一方、不動産業者からは大歓迎のシステムでこの方法では「不動産業者が払う手数料等が減る」「いくらで買っていくらで売る」といういわゆる「マージン情報」が残らない、といった実際上の事情もここにありました)、このために不動産登記法は改正され、今では「純粋な」「中間省略登記」は仕組み上できなくなりました。

 ※ ただし、2023年(24年の法改正は親族相続のみ)時点の民法でも、「ややずるい方法をとれば」結果的に中間省略登記と趣旨が同じことは可能で、これを「新中間省略登記」等といいます。ただ、法の趣旨を完全に逸脱したもので(民法も1000条以上あるので、すべての穴をふさぐのは無理)、「理論上は現在でも「新」中間省略登記は可能」ですが、これを扱っているところ(通常は司法書士。行政書士は業としてできません)はないのではないかと思います。

 ※ 映画内でこれらの話が一切出てこないので、実は「新・中間省略登記」の話をこっそりしている(これらの法律ワードを出すとレベルが高すぎる)とも思ったものの、おそらく「最初からあまり厳密には描かれていない」のだと思います。

 (減点0.3/錯誤によって意思表示は取り消せるか)

 ・ 「錯誤で取り消してやるからなー!」という発言がでますが(ここだけなぜか法律ワードが出てくる)、錯誤(95条)による取消しは色々な制限があり、その一つを欠いています(この点、ストーリーのネタバレになるため詳細省略)。
このケースは単純明快に96条(詐欺)による意思表示の取消しといったところです。

 (参考/減点なし/バルト11のシステム)

 ・ 公式ホームページや映画館の入り口などで「イオンシネマ系列ではありませんのでそれらの制度は使えません」とあり、また一方で広島市内にはイオンシネマが2つ(以上)ありますが(近い方と遠い方←ものすごく山の中にあるらしい)、その話ではなく、バルト11自体が「イオン系列のアウトレットモールだから」ということであるようです(大阪市でいうt-joy梅田系列です)。

yukispica