「せかせかする岡田将生とモタモタする清原果耶の完璧な組合せ」1秒先の彼 yookieさんの映画レビュー(感想・評価)
せかせかする岡田将生とモタモタする清原果耶の完璧な組合せ
宮藤官九郎 脚本のドラマは好きだ。
でも宮藤官九郎 脚本の映画はそこまでではなかった。
「1秒先の彼」を観るまでは。
本作は、いつも人よりワンテンポ早いハジメと、ワンテンポ遅いレイカの、タイミングが合わない二人の“消えた1日”を巡る、ちょっと奇妙なファンタジーラブロマンス。
さすがクドカン、時間を操らせたら絶品だ。
既存作品のリメイクが初めてとは思えなかった。
原作は「1秒先の彼女」という台湾映画で、タイトル通り男女の設定が逆らしい。原作の方は見ていないが、思い返せば性別を逆転させたのは正解だと感じるシーンが多々あった。
とにかく主演ふたりの演技が素晴らしすぎた。それに尽きる。
岡田将生は「見た目は100点なのに中身が残念」なハジメの、ちょっとウザいけど憎めないキャラクターを見事に演じていたし、清原果耶は「おかえりモネ」に通ずる”ささやき”系女子の演技が完璧で。もはや吐息のような小さな声で喋る感じが堪らんでした。そして狂気にも近い一途さとハジメへの想いを秘めたあの表情!消えた一日での突飛な行動に観客を納得させられるのは清原果耶の成せる技。この人やっぱり天才だ…
全編に渡り、せかせかする岡田将生とモタモタする清原果耶を堪能した。
監督が抱く京都のイメージ「せっかちなのにのんびり」が本作のテーマにピッタリだからと京都を舞台にしたらしいが、天橋立の景色は美しいし、日本家屋の縁側とか、夏に食べるそうめんとか、手づくりお弁当とか、日本人の心をくすぐるノスタルジックな要素が満載な点も本作の魅力だ。
そのノスタルジーを助長する、本作のもうひとつ大きな魅力がアナログ感だ。レイカは写真部でいつもフィルムカメラを首からぶら下げ、毎日郵便局に通いお手紙を送る。そしてラジオを聴くのが趣味である。ハジメもまたラジオを聴くのが日課で、ラジオDJに悩み相談を送っている。ハジメとDJの軽妙なやりとりが可笑しくて、相談内容が悲しくてもしんみりせずに済むのもいい。(ラジオ好きな自分にとっては嬉しいキャラ設定!)それらレイカのフィルム写真やお手紙が単なる演出アイテムではなく、物語のキーになっているところもよかった。
全体的にはコミカルで微笑ましい作品だが、最後にハジメのもとにレイカが足を引き摺りながら現れるシーンには不覚にも涙がこぼれてしまう。生きててよかった…!(泣)
1つだけ欠点を挙げるとすれば、ポスターデザインが同時期公開の「交換ウソ日記」に似ているがために、キラキラ女子高生ムービーかと思って、危うく素通りしてしまうところだった。主演ふたりのお顔上下に並べるあのデザイン、テンプレなん??
主演2人の圧倒的演技力に周りを固める俳優陣も全員いい仕事してるし、幾多りらさんの主題歌もよきだし、ロケーションも素晴らしく、この夏の思い出になるような、期待以上の作品でした!