帰れない山のレビュー・感想・評価
全56件中、21~40件目を表示
失われた「何か」を求めて
その「何か」は時であり父であり友であり居場所である。友のブルーノは山の民でいようとするために試行錯誤し、結局山のなかに骨を埋めてしまった。鳥葬の話が見事に回収されていた。高山病によって山の民への道を閉ざされたピエトロはドレッシングにならず、外の世界を求め8つの山をぐるぐる回る。お父さんの日記回収ツアーはちょっと泣けたな。
山の営み。人の営み。
四季を通した景色や降り注ぐ自然光が美しい、イタリアはアオスタ渓谷。4:3のスクリーンサイズが山岳映画ならではの垂直方向の表現が、そこで営む人々が主役として描かれる。 山を舞台に、共に生き生きと幼少時代を過ごす子供たち。だが、父親との関係はそれぞれ(都会と自然との対比と労働者)で、その後の2人の人生や生き方に大きく影響を与える。その二人の葛藤と成長を山は静かに見守る。 最後に、お父さんが若い頃に乗って車がアルファロメオは(多分)Alfasud。ついエンジンオンに耳を澄ませてしまった。次にお父さんがアルファに乗ってるいるのが路駐後に息を引き取ったシーン。ここでは164。お父さんが出世していることを車から窺い知れた。
生きることの根源的な意味
イタリアの作家の世界的ベストセラー小説を映画化した作品だが、イタリアらしい映画というよりはむしろ普遍的なテーマを扱っている重厚な人間ドラマだった。 都会育ちと山育ちという対照的な2人という設定、かけがえのない友情というテーマ、これは自分の青春時代と重ね合わせることができた。生活環境が違うからこそ引かれ合いお互いの足りないところを補い合ったり、若い時に芽生えた友情を年が経ってからより深めていったりした友人が自分にもいたことを思い出した。 「何者にもなれない」というピエトロ、「やりたいことをやればいい。人生は挑戦だ」というブルーノ。ブルーノのように自由奔放に生きたいと思いながら結局実践できず、結果としていろいろなことに手を出してしまいどれも中途半端な状態になっている、自分はどちらかというとピエトロ型だ。最終的にはピエトロが生き残っているので、ピエトロの人生の方がよかったように思えるが、どちらの人生が正解ということはない。あくまで人生の美学という観点も添えなくてならない。 鳥葬というものがあると知ったのは『ボヘミアン・ラブソディ』という映画を観た時である。フレディ・マーキュリーという人は、両親がインド系でゾロアスター教徒であるが、そのゾロアスター教というのが今日では珍しい鳥葬を行うらしく、映画のラストでフレディが亡くなった時にそのことに触れていた。実際にフレディの葬送は火葬だったようだが、遺体を放置して鳥がついばむなど自然に任せるという方法があるというのは衝撃的だった。 「山の民として生きる」ことを決意したブルーノの死は、生きることの根源的な意味を問うている。
映像がとにかく美しい
アルプスやヒマラヤの美しい山々、村、遠景近景ともとても美しい。 これを見るだけでも十分。 ピエトロのお父ちゃんはいいお父ちゃんだよ。 お父ちゃんの「2人の」息子の波乱な人生は最後、悲しい結末を迎えますけど、2人の友情は確かにあった。
映画の人生、自分の人生
久々にイタリア映画を見た気がしますが、あまりイタリア映画らしくない(?)重厚で重く深みのある人生の物語でした。 感想が書き難い作品でしたが、何かを書いて残しておきたいとも思える作品だったので、無理矢理ふり絞り書きました(苦笑) 特に今を生きる現代人(都会人)にとっては、馴染みのない思考(世界観)を扱っているので、分からない人には全く理解不能な物語なのかも知れませんが、しかしちょっとでも現在社会に疑問を抱いていたり、田舎生活(大自然との接触が身近にある)の経験あったり、趣味で大自然と触れ合う機会のある人であれば、なんとなく物語の趣旨は掴めると思います。 物語の舞台はタイトル通り“山”ですが、それに捕らわれ過ぎると物語の本質が見え難くなりそうな作品だとも思います。それだけ見事に山の風景が描かれていましたが、ただそれに目を奪われると美しい映画だったという印象しか残らない可能性もあります。 本作は一見『冬の旅』や『イントゥ・ザ・ワイルド』の様な、現在社会に適応出来ない種類の人間の自分の生きる場所探しの作品群だとも思うのだけれど、本作の場合はこの2作の主人公ほど頑なでも他者との接触を拒むわけでもなく、最終的にそうならざる得なかったという感じで、一般的な家族愛も友情も描かれていました。だからこそ決して特殊ではなく、本来そういう種類の人間も少なからずいるのだろうと思える作品でした。 なので、本作は決して自然賛美(美しく崇高で純粋)や都会批判(醜く卑俗で不純)の様な自然と都会の対比ではなく、それぞれの環境依存によるある種の適応障害が描かれていた様に思います。 私の様にあまりにも都会で長く生き続け歳を重ねれば重ねるほど、この様な舞台設定の作品は別世界の出来事過ぎるのだけど、全く正反対の見方をすれば本作の“山の民”でも“都会の民”でも、対局ではあるがそこでしか生活できないという共通点も見つけることが出来ます。 ひょっとしたら、こんな見方で本作を見る人はいないのかも知れませんが(レビューでもあまり見かけない)、当然都会でも孤独や飢えで死ぬことはありますので、本作では山で生まれ山で死んだある男の人生が描かれていましたが、映画で描かれている他者の人生と、それを見る私の人生をどう結び付けるかで映画の見え方は全く違ってくるのでしょうね。 そういった事を、考えさせられた映画でした。
とにかく山に行ってみたくなる映像、そして一度限りの人生をどう生きるかの選択。
自分の天職は?って訊かれて、「山の民」って答えていたブルーノ。生きる力もあって優位に思えたのだけど、、、、、、、、。 「田舎のネズミと町のネズミ」って童話があったのを思い出した。二人の青年が一人の父親を共有し、自分の行き方を自分で選んだ物語。 環境に適応する人、環境を変える人。自分の運命に従順な人、自分探しの旅に出る人。どちらが正解かはわからないけど、観てる人はみんな自分はどっちタイプなんだろうって思ったんじゃないかなあ。 雪が覆い隠してしまう時間と孤立。「山の焚き火」(日本公開1986 年)を思い出した。 ピエトロ、(ドレッシングを思い出すけど)イケメンでしたね!!
山男にゃ惚れるなよ
様々な解釈ができそうな好作品。 親とも学校とも街とも自分の家族とすら関係を保てず唯一の居場所が山小屋,というブルーノは最後にひとりで空へ還り「俺たちの家(Casa nostra)」は瓦礫に戻る。そんなブルーノと時に対立しながらも見捨てなかったピエトロに彼が遺したのは前へ進む勇気ではなかったか? 蛇足ながら,アルプスとヒマラヤの雄大な山岳風景を、できればワイド・スクリーンで観たかった。
(原題) Le otto montagne
大阪遠征中2本目!都会育ちのピエトロと山しか知らない野生児ブルーノ。少年期の出会いからを描く今作、祈るような気持ちで最後までスクリーンを見つめてしまいました。
人生に疲れてる方に見てほしい作品
北イタリアのモンテローザ山麓を主な舞台にした親子と男同士の友情、家庭、美しい自然風景と共に描いた ドキュメンタリー調の人生ドラマです。 全編ロケ撮影と思われる山岳風景は全て素晴らしく、ネパール含め世界各地の心象風景も見応えはありました。 私小説原作の映像化らしく隅々まで監督のこだわりが感じられて出演者達の演技とは思えないリアルな姿に現実の人間を感じました。 過去に親子関係や家庭環境に因縁がある人は心に何かを感じる作品になってると思います。エンタメ感は皆無で淡々した心象風景が続くので 睡魔に負ける人もいてもおかしくないかも。人生に疲れ落ち着いて物思いにふける時間を持ちたい方に強くお勧めします。
静かで淡々としてて小難しくて眠くなる
開始そうそう眠くなる眠くなる(笑) 静かで淡々としてます。 さらに小難しいからタチが悪い(笑) 落ちてくるマブタと必死に戦い、最初30分すぎたぐらいから、どうにか面白くなっていくんだけど、 その後も、静かで淡々としてて小難しい映画です(笑) 時間も147分と長いんだから、本当タチが悪い(笑) 山や荒野を歩くので、ゲーム『デス・ストランディング』みたいな画が出てきます。 60点ぐらい。 2回目はムリ(笑)
男の友情と山。
長い人生、友情のかたちも変わるもの。都会のやさぐれ感が無いある意味あこがれの生き方。雄大な山の風景は人生を絡めて描くのに絶好のシチュエーションかも。大事件は全くなく淡々とした語り口。まあ生きて行く事自体が大事件か。山一筋の人生、まわりはどうあれロマンなり。
山は、父
実の息子と血の繋がらない息子。 大人になったふたりを繋いだのは、父の想いと山の存在だった。 純粋に仲睦まじい時期を送った子供時代から10数年を経て、再び友情を育むことは本来は難しいことなのかもしれない。 でも山の峰々がそんなふたりを優しく包む。 撮影に対しては、どんな過酷な状況で行われたのだろうと心配してしまうほど、360度山、山、山。BSのドキュメンタリーを見ているようだった。 山好きの方はご視聴をお勧めしたい。
深みはある
ピエトロとブルーノ 少年期からの友情を壮大な景色とともに描いた作品。 子供の頃は無邪気で楽しいが、成長するにつれて段々と複雑になっていく。 1度は疎遠になり、15年会わなかった2人だけど、大人になってピエトロの父親が亡くなったことで再会する。やはり友情は健在していて、一緒に2人の家を建てたりして、これから2人の友情がふたたび、そして長く続いていくのかなと、これで良かったと安心できるかと思えた。 厚い友情だけれども、なんか複雑。すごく重たい。 ブルーノは鳥葬を選んだってことなのかな。 エンドロールが無音だった。 無音のままエンドロールが終わるまで誰も立ち上がらなかった。感じ方はそれぞれだと思うが、それだけ深みのある映画だったのだと思う。
ポエティックで、山の景色は美しく、二人の男たちの、距離はありなが...
ポエティックで、山の景色は美しく、二人の男たちの、距離はありながら硬い友情の物語は美しい。それは、恋人への愛より大切なもの。父との記憶。山はあくまで場としてあり、父とも友とも一人でも共有されるもの。山の頂から、深い谷や広がる空が見えるとき、人はどうして震えるような感情を持つのだろう。 孤独に突き落とされながらも山を捨てなかった、そして別の山を見つけた彼に対し、それ以外の生き方を見つけられなかったもうひとりの友。人は、父や幼い時の記憶に強く繋げられる存在。
山男とハイブリッド男
トリノの育ちの11歳の少年ピエトロと、山岳地域で暮らす同い年のブルーノの友情と山への想いの話。 夏の間暮らす為に山岳地域に家を借りた両親と共にピエトロが村にやって来て、そこで暮らす少年と友情を育み、そしてピエトロの父親がブルーノの就学を支援すると言い出して…。 山を降り13歳で大人になったブルーノと、いつしか父親の想いとはすれ違い、それでいて居る場所を見出せないピエトロ。 15年の時を経て、再開してからのそれぞれの想いは、自分の思想とはかけ離れ過ぎていて腹落ちはしないものの、そういう人もいるよね…とは理解は出来るし、比べてみると自分の人生ってつまらないものなのかもとも…だからといってそうなりたいとは絶対に想わないけれど。 シチュエーションも内容も全然違うけれど、海で死ねて本望なサーファーを描いた某作品を思い出した。 ところで仏教では九山八海だと思っていたけれど、8つの山なんですね。
全56件中、21~40件目を表示