「制限される環境下でこそ愛は物語化する」愛に奉仕せよ kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
制限される環境下でこそ愛は物語化する
韓国映画に北朝鮮が出てくることが増えている気がする。北朝鮮から韓国に来た人を描くのではなく、北朝鮮で生活している人を描いた物語だ。でも、本作のように舞台が北朝鮮だけで終わる韓国映画も珍しい。しかもかなり攻めた濡れ場がある。これも珍しい気がする。
登場する師団長の家の雰囲気や話の展開が純文学のような趣き。でも、濡れ場の呼吸音や唾液を飲み込む音、衣擦れの音、ほとばしる汗なんかの臨場感がとてもいい。それでいて愛おしさがあふれ出ているような優しさや逆に欲望のままに荒々しく扱う野性味もあったする。不思議な濡れ場だった。とりあえずスリョン役のジアンはきれいで存分に魅了されてしまった。
ムグァンとスリョン、二人それぞれの夫婦関係を考えたとき、2人の本当の気持ちはわからない。特にスリョンの気持ちはどうだったんだろうと考えてしまう。でも、最初に見せた血と涙は嘘ではなかったはずだ。あのスリョンの心理描写だけでも観てよかったと思える作品だった。
ただ、若干違和感を覚えるシーンがいくつかあった。なんというかきれいでないというか、どんくさいというか、ダサいというか。妙なカメラワーク。それがわざとなのか、たまたまそうなったのかはわからないが、少しだけ評価が下がる要因にはなった。
少なくとも個人的には、抑圧された状況における愛の物語として印象深い映画となった。
コメントする