愛に奉仕せよのレビュー・感想・評価
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まさに愛欲スリラー
ありえないよな
出世を望んで真面目に職務を務めるムグァン。師団長夫妻の給仕係をする事になったが師団長が出張中に奥様に誘惑されて不倫の関係に。周りも気がついた人がいても黙っていたり、ありえない。師団長が帰ってきても、騙しとおそる筈ないよね。
師団長も結局奥さんにいわれるままに憎い不倫相手に工場長の職に就かせたり、子供が相手の子供だってこともわかる筈なのに、育てている。どんだけいい人。
ただこの奥様、未練がましくなく、何年経っても約束を守ってムグァンが生活に困らないように工場長になるようしてくれている。なかなか男気があってカッコいい。でも、エンドロールでの場面、彼女は何処に行ったんだろう。その後の人生が気になる。
禁断の愛の先にあるのは幸福か、それとも破滅か……?!
権力欲のある妻のために、出世のために必死になる男を認めて身の回りの世話をさせることにした上官。その上官の妻……。
ドロドロした昼ドラの要素が詰まった設定ではあるが、まさにドロドロの愛憎劇だ。
妻との関係に悩むムグァンと夫との関係に悩むスリョンが出会い、互いに足りない愛を求め合うが、その先に待っているのは、破滅の道でしかない。
時代背景や立場など、全てにおいてマイナス要素だらけ、比喩ではなく、知られれば即処刑される状況の中で、それでも愛に生きる道を選ぶ男と女の本能を官能的に描いた作品である。
はじめはスリョンの挑発や、上官の妻という断れない状況下の中で関係をもってしまうが、 出世できない自分へのイラ立ちか、それとも上官への経緯を踏みにじる行為に快感を感じるのか……。
男女の愛欲だけでは説明できない感情の高ぶりが絡み合うことで、どんどん泥沼化していってしまう。
互いの屈折した愛欲が、次第に純粋に愛に変化していく中で、より互いが離れない関係になっていることに気付いていくふたり。
そんな関係を続けているわけにはいかないと思いつつも、やめられないし、やめたくないという葛藤の中で、”死”に対する緊張感が脳裏から離れない。
これでもかっ!と見事なまでの設定のつるべ打ちには、東海テレビ制作の昼ドラファンとしても納得の作品であった。
姉さんの大きな愛に包まれて
中国の作家、閻連科の小説、為人民服務( Serve the People)を原作とする韓国映画。
原作は中国では発禁本。
為人民服務は元々、毛沢東の演説から生まれたスローガンで、「北」でももちろん使用される。
「服務」は日本語から中国語に流入した日本語借用語とのこと。
文武に優り、「英雄」の称号を持つ師団長は美しい若妻スリョンと二人だけで立派な家に住んでいる。門では護衛が24時間見張る。師団長付の炊事兵に大抜擢された若い模範兵のムグァン。間もなくして、師団長は本部での会議のため1ヶ月間の長期出張で家を空けることになる。
食卓には為人民服務(人民に奉仕せよ)と書かれた木札が置いてある。この木札の位置が変わっていた時は二階に来なさいという意味だから、命令に従いなさいと言われる。
木札が所定の位置にない❗
二階に上がる階段でしどろもどろ状態のムグァン。師団長からは二階には絶対に上がってはならぬと言われているからだ。二階に上がると、蚊帳付のベッドにシルクの透け透けネグリジェ姿で横たわるスリョン。そして、「奥様」ではなく、「姉さん」と呼びなさいと命令される。4歳年上の女。故郷に妻子を残してきているムグァンは5年以内に幹部に昇進しなければならない事情があった。スリョンは元女性兵士で模範兵士として評価され、英雄の名誉ある妻になった。ところが、後半にスリョンが語るのだが、師団長は股間に銃弾を受け、その男性機能を失っていたのだった。
前半は「北」をディスるおふざけ映画なのかなと思いながら、見ておりましたが、だんだんクセになってきて、スリョンの手解きを受け、四十八手を繰り出すまでになり、とことんご奉仕するムグァンが可愛いと思うほどに。ラストに向かって、スリョンとムグァンが愛の本気度を競うように自暴自棄になる展開もあり、とてもスリリング。
スリョンの軍服姿にも萌えました。
ご奉仕にはご褒美が用意されていました。お姉さんの大きな愛に包まれたムグァン。ラストのスリョンのとった行動はミステリアスで、カッコいいなぁと思いました。
精神的、社会的抑圧からの圧倒的な解放感
中国で発禁処分を受けた小説の実写化。
師団長が一ヶ月の出張の間。
セックスで人間としての悦びを解放する
上官の妻と炊事兵。
女性として人間としての感情を
抑圧し続けたスリョンが
人間らしさを取り戻し少しずつ増える笑顔。
透き通るような白い肌の美し過ぎるジアンが
全身で剥き出しの愛を享受するスリョンを演じる。
社会主義の下。
素直に人間らしく生きられた二人の束の間は
どこまでも美しくて眩しい。
お互いの愛を確認する終盤。
真面目で模範的だった炊事兵のムグァンが
スリョンと共に破壊した絶対的だった価値観。
全てを犠牲にしてでも示したかった本当の想い。
色々な表現が厳しくなる昨今。
作品の為に体を張った主演二人の覚悟に
心から敬意を。
社会主義国家における報国と個人の恋愛感情
にっかつロマンポルノ的な展開で、ハードAV並なHシーンの連続。
中盤からさまざまな合体ポーズを見る羽目になりますが、アート的な描写なのでいやらしさはあまりなく。
物語の根幹を貫くのが
・封建的かつ社会主義 軍事国家で踏みにじられる人権、人間の尊厳
・国家に対する奉仕、忠誠心が義務付けられる世界での恋愛
・女性としての肉体的悦びを求めることの是非
といったテーマのため、文学的ですらあります。
男性兵士は村の都合で、女性は軍の英雄に惚れられて、二人とも強いられてあまり幸せとは言えない結婚生活を送っていた中での出会い。
たとえば映画なら溝口健二や増村保造らの監督作品、小説なら菊池寛や渡辺淳一などの恋愛小説・純文学など、近しい作風は日本にも多いので、傾向は理解しやすいのではないでしょうか。
純愛ですらあり、単なるポルノではありません。
エンドロール途中に物語としてのオチが挿入されていたので、画面が暗転し曲が流れたからと帰らない方がいいパターンです。
#52 人民のために服務しろ
というのが原題らしい。
当然北朝鮮が舞台で、韓国よりも北朝鮮のほうが豊かだった頃の軍人のダブル不倫のお話。
お偉いさんのお家の炊事係がそこの奥さんと出来ちゃうんだけど、奥さんには事情があってこうなっちゃうのも納得。
そもそも炊事係と奥さんを家に残して1ヶ月もお留守にするなんて旦那さんもどうなるかわかっててやってるよね。
ってゆーか周りみんなきづいてるし。
最後には殺されちゃうんじゃないかと思ってハラハラしちゃった。
濡れ場がやたら多いけど、そんないやらしくなくサラッと観れるので誰にでもオススメな映画。
制限される環境下でこそ愛は物語化する
韓国映画に北朝鮮が出てくることが増えている気がする。北朝鮮から韓国に来た人を描くのではなく、北朝鮮で生活している人を描いた物語だ。でも、本作のように舞台が北朝鮮だけで終わる韓国映画も珍しい。しかもかなり攻めた濡れ場がある。これも珍しい気がする。
登場する師団長の家の雰囲気や話の展開が純文学のような趣き。でも、濡れ場の呼吸音や唾液を飲み込む音、衣擦れの音、ほとばしる汗なんかの臨場感がとてもいい。それでいて愛おしさがあふれ出ているような優しさや逆に欲望のままに荒々しく扱う野性味もあったする。不思議な濡れ場だった。とりあえずスリョン役のジアンはきれいで存分に魅了されてしまった。
ムグァンとスリョン、二人それぞれの夫婦関係を考えたとき、2人の本当の気持ちはわからない。特にスリョンの気持ちはどうだったんだろうと考えてしまう。でも、最初に見せた血と涙は嘘ではなかったはずだ。あのスリョンの心理描写だけでも観てよかったと思える作品だった。
ただ、若干違和感を覚えるシーンがいくつかあった。なんというかきれいでないというか、どんくさいというか、ダサいというか。妙なカメラワーク。それがわざとなのか、たまたまそうなったのかはわからないが、少しだけ評価が下がる要因にはなった。
少なくとも個人的には、抑圧された状況における愛の物語として印象深い映画となった。
管理監視国家の中で逞しく生き上がる処世術を見よ!?
まるで日活ロマンポルノのような冗長な濡れ場シーンには、両俳優にブラボーの喝采を贈りたい。
それはそれは素晴らしい合体シーン満載です。
この濡場からこのままこのストーリーはどう収まるのか?と心配になって来ます。
そして更に怠惰な話に進み、これはそろそろ悲劇に展開されると思っていたら、
予想を越えるラストと思しきシーンが幾重にも幾重も展開し、とても粋なエンドとなる。
まあ見事な作品だった。
全体主義の監視管理国家のド緊張した組織の中で、命を賭けた反大革命の証あいが見事に爆発し、その中でも生き残り、さて、さて、その先はどうなるのだろう!?
もう一度観たくなるエッチで、命を賭けた駆け引きの小気味よい映画ですが、
やはり、独身、未経験者には刺激が大画面で展開されるのには強くすぎるので気を付けて下さい。
それでも、この作品の鍵はその初夜にあるのでので、見落としのないようにしてもらいたい。
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