「訳が分からなかったほうが幸せな映画だが、訳が分かるようになりたい」NOPE ノープ Ko Fuさんの映画レビュー(感想・評価)
訳が分からなかったほうが幸せな映画だが、訳が分かるようになりたい
非常に良くできた映画で、社会批判と現代消費社会への警鐘をしつつエンタメSFに仕上げている。しかし問題なのは普通に視聴するだけだと訳が分からないUFO映画に映ってしまうところ。だがそれこそがこの映画のすごいところなので、そこを評価しろと言ってもそれは無理なので星3くらいの評価に落ち着くのは妥当といえば妥当かもしれない。
今の世の中、様々なものが話題になっては消費されて消えていく。この消費者は視聴者たる我々なのだが、それは無意識に他人を食い物にしていることにほかならず、それはまさにこの映画の「謎の飛行生命体」そのものなのだ。それに挑むのは、名のない、なんなら意図的に食いつぶされてきた有色人種の人々であり、アウトローなカメラマンだ。
言ってしまえば、この映画は「消費する側が暗喩された謎の生命体が、消費社会で食い潰される人々を食い荒らす様を、消費者である視聴者が眺める映画」なのであり大変に気色が悪い。趣味が悪いと言ってもいいかもしれない。この、映画を見ている観客そのものを皮肉る手法は「ジョーカー」でも使われており、少なからず影響があるのかもしれない。
ただの訳分からん映画としか感じなかったのならば、そのほうがきっと幸せなのだが、それに対して無関心でいたいとも思わず、気色の悪さを噛み締めながら、今の社会を生きていかなければならないのだろう。
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