「N=日本のO=面白いP=ピクチャーE=『エヴァンゲリオン』。俺達ァ健康優良不良映画バカだぜ!」NOPE ノープ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
N=日本のO=面白いP=ピクチャーE=『エヴァンゲリオン』。俺達ァ健康優良不良映画バカだぜ!
空に潜む「何か」の恐怖と、それと対峙する人々の姿を描いたSFスリラー。
監督/製作/脚本は『ゲット・アウト』『アス』の、オスカー脚本家ジョーダン・ピール。
元子役のテーマパーク経営者、リッキー・”ジュープ”・パークを演じるのは、ドラマ『ウォーキング・デッド』や『オクジャ』のスティーヴン・ユアン。
社会派として知られるジョーダン・ピール。これは彼の長編監督作品としては第3作目にあたる。
ジョーダン・ピール作品は『アス』のみ観賞しているのだが、正直これは全くノレなかった😓
なので今作を劇場まで観に行く気はなかったのだが、あまりに予告編の出来が素晴らしかったのでついつい観賞してしまいました。
結果から述べますと、うーん最高っ!👍
「そうそう!ワイはこういう映画が観たかったんや!」という感じであります。
ジョーダン・ピール作品はなにかと考察されがち。
たしかに、黒人やアジア人を捕食するUAPが表すものは何か?とか、チンパンジーのエピソードが意味するものは?とか、何故『動く馬』を取り上げなければならなかったのか?とかとか、深読みしたり読解したりしたくなる要素がてんこ盛り。
そういったことを深く追究していくことも、この映画の楽しみの一つなのかも知れない。
ちなみに、YouTubeのユニバーサル・ピクチャーズ公式チャンネルで、お笑い芸人のこがけんさんが本作の解説をしているのだが、これが中々聞き応えがある。一聴の価値ありますよ。
…とはいえ、実はこの映画って考察云々はさほど大事じゃないような気がする。
というか、小難しく考え過ぎると大切なものを見落としてしまう、そんな感じの作品な気がする。
それじゃあ、この映画の大切なものって一体なんじゃらほい?ということになるわけだが、それはもうこの一言に尽きる。
…映画ってさぁ。やっぱり最高のエンターテイメントだろ!!!!!!!🛸💨
なんというか、この作品からはジョーダン・ピールの映画愛がビシビシと伝わってきた。
その多幸感にとってもニンマリ😆
もちろんインテリであるジョーダン・ピール、いろいろなメッセージを仕組んでいるのだけれど、そういう難しいことを全部抜きにしても、とにかくこの映画は楽しい✨
『アス』の時はイデオロギーが前面に出過ぎててかなりシンドかったんだけど、これはそんなことないっす!
前半1時間は、正直一体何を観させられているんだ?という感じで、ポカンとしながら観ていた。
何か起こる…かと思ったら何も起こらない。今度こそ何か起こる…!と思ったらやっぱり何も起こらない。この繰り返し。
勿体ぶった描写ばかりであまりにも事件が起こらないので、途中までこれは「何も起こらない」ということを怖がるホラー映画なんだと思ってました。
本当にそんな映画だったら流石にブチギレるぞジョーダン・ピール💢とか思っていたら、中盤からクライマックスまでは怒涛の展開。
いやー、凄かった凄かった👏
ノーランのような重厚感と、シャマランのような荒唐無稽さを併せ持っている、というのがこの映画の印象。
途中までは完全にシャマランの『サイン』だったし、撮影監督がノーランと同じホイテ・ヴァン・ホイテマということもあり、なんだか『インターステラー』を観ているかのような気持ちに陥った。
実はノーランとシャマランって、真面目ぶっているけど物凄くおバカ、という点で似た者同士だと思っていたのだけれど、なんとジョーダン・ピールも同じ穴の狢だった🕳🦡🦡🦡!!
この3人は「映画三馬鹿トリオ」として自分の中でカテゴライズしておくことにします🤣
主人公のヘイウッド兄妹は、UFO🛸を撮影しようと躍起になる。
それは当初、セレブになる!とか有名になる!とかいう俗世間的な目的だった。
そこにチャラいニイちゃんのエンジェルも加わり、ますますバカなYouTuberのようなテンションになってゆく。
しかし、UFOの恐怖を体験し彼らの目的は変わる。
人類を滅ぼしかねない脅威に、彼らはその対象を「撮影」することにより対抗しようとする。
金や名誉はもはや眼中にない。ただただ、確かに存在しているが実態の掴めない脅威に対する反骨精神、もしくは義憤や正義心といったものが彼らのモチベーションになってゆく。
ここで面白いのが、彼らの目的が怪物退治ではなく、ただ怪物を「撮影」しようとしているという点。
怪物の姿を撮影し、その姿を白日の元に晒す事が出来れば、人々はその怪物に対する対抗策を打ち出してくれる筈。
つまり、「撮影」することこそが世界を破滅から救う鍵である、というのがヘイウッド兄妹の考え。
これは、映画を通じて社会的メッセージを発し続けるジョーダン・ピール監督がその心根を端的に描き出した、ということなんだと思う。
現実世界の不条理なシステムは映画の怪物よりもはるかに恐ろしい。
それでもそれに立ち向かっていかなくてはいけないし、映画こそがその最大の武器になり得る、ということを、ピール監督はこの『NOPE』という作品で見事に描いてみせた。
本作は監督の所信表明であり、また映画に対するラヴレターであると言って良い。
そのあるがままの純粋さに、自分のような一介の映画ファンは胸を打たれてしまうのです🥲
そんなラヴレターに相応しい、ピール監督の好きなもの詰め合わせのような映画。
UFO、怪物、ディザスター、ホラー、カウボーイ…etc。
とにかく映画の盛り上げ要素がてんこ盛り。
さらに、怪物の正体はまんま『エヴァンゲリオン』の使徒!
ピール監督はインタビューで『エヴァンゲリオン』のファンであることを公言しており、本作にその要素をぶち込んだ模様。
まさか「NOPE」は「N=日本のO=面白いP=ピクチャーE=エヴァンゲリオン」の略である可能性が…!?
さらに、『AKIRA』のバイクスライドブレーキのオマージュまで!🏍💨
監督のオタク心が爆発しております。
大絶賛したい映画!…とはいえ不満点もあるのです。
ジュープというキャラクターをうまく扱いきれておらず、その為あの印象的な猿のエピソードがなんかフワフワしちゃっている。
ホルストとかいうカメラマンのオッさんの最期も、なーんかよく意味がわからない。
怪物の撃破方法も、意外性はあるんだけど絵的に地味だった。
一番不満なのは、『エヴァ』の使徒をオマージュしているあの怪物のデザイン。
せっかく「目を合わせてはいけない」という縛りがあるんだから、あんな無機質でミニマリズムなデザインじゃなくて、もっと目玉がギョロギョロとした、『鬼太郎』のバックベアードとか『ウルトラマン』のガンQとか、そんな感じのデザインが良かった。
まぁこれは好みの問題なんだけどさ。
あと、やっぱりエイリアンにはヌメヌメしていてほしい。やっぱギーガーは偉大だな、と思っちゃいました。
もっとどぎついホラー描写があっても良かった。
犠牲者の血の雨が家に降り注ぐ、というのはすごく良かったけど、いかんせん夜の闇が暗すぎて何が起こっているのかよくわからん。あれが真昼間だったのなら、相当凄惨な映像になっていたと思うのだが…。
もっと人間の内臓とか体の部品とかがボトボト落ちてきてもよかったかも。まぁこれも好みの問題ですかね。
完璧な映画だとは思いませんが、自分は大好き💕
健康優良不良映画バカ、ジョーダン・ピールの今後から目が離せません!!
※『動く馬』とは、エドワード・マイブリッジ(1830〜1904)が撮影した連続写真。
リーランド・スタンフォード(後にスタンフォード大学を設立)さんは、「馬が駆けてる時の脚運びってどないなってんねやろ?」という疑問を抱いていた。
シカみたいに四本の足が地面から離れる瞬間があるのか…?それとも常に何れかの脚は着地してるのか…?
うーん、わからん🤔ということで、マイブリッジに写真撮影を依頼。
マイブリッジは試行錯誤したり、奥さんの愛人をぶっ殺したりしながら、なんとか撮影に成功。
この連続写真を「ズープラクシスコープ」という幻灯機のようなもので動画化した。これが1880年のことである。
本作ではこれが「映画の始まり」であるということになっている。
つまり、映画とは「未知のものを映し出すことにより、その真相を白日の元に晒す」ことから始まっていたのだ。