「見世物にされた生き物のリベンジ」NOPE ノープ takaさんの映画レビュー(感想・評価)
見世物にされた生き物のリベンジ
序盤に流れるチンパンジーと暮らすホームドラマから始まる。
過去の惨劇の一部であり、すでに闇に葬られた出来事であることがわかる。
この部分が賛否の分かれるところであり、わかりにくい演出のようだったが
これから先の物語を暗示している。
序盤から数々の生き物に対して章立てで構成され
飼育している馬の名前(ゴースト、ラッキー)から始まり、チンパンジーのゴーディ。
そして本作の主役であるGジャン。
2秒の史上初めての動画フィルム。黒人ジョッキーの駆る馬。
馬主や馬の名は歴史に残っていてもジョッキー自体は歴史に残っていない存在。
彼らはエンタメの中で名もない存在だが馬やチンパンジーの名をあえて
章立ての中に組み込んでいるのも意図的と言える。
牧場経営困難の中、賞金目当てに意気揚々とUFO撮影に挑むが、
そんな状況ではいられなくなる主人公たち。
カメラを通してのノンフィクションである生物に慣れた現代人。
もしその生物が制御できない状態になったとしたら…。
この監督は「ゲットアウト」「アス」ともに風刺を入れた作品作りが定評があるが
本作でも「見世物」に対し皮肉を入れたものであると感じた。
監督自身コメディアン出身であり、ホワイトウォッシュ(白人優先)と言われるエンタメ業界の中
黒人やアジア人、また動物たちは異物の見世物でしかなかった。
またモンスタームービーとして海の「ジョーズ」陸の「トレマーズ」
そして空の「NOPE」となればいいがクリーチャーデザインがわかりにくかったのが
もったいなかったなと思いました。
エヴァンゲリオンの使途のように無機物と生物の中間のデザインを目指したとのこと。
エイリアンのように目がないことで感情を感じないという意味で
面白いデザインだなとは思いましたが。
本作の登場人物において見世物やショーを率先した人物たちは
一通り亡きものとなっていきます。
「ウォーキングデッド」のグレン役のスティーブン・ユアンは
かつてホームドラマのチンパンジー事件での生存者にもかかわらず
馬をUFOに襲わせるショーをしている。
またそれを見ている観客やスタッフ。
生物カメラマン。特ダネ狙いの突如現れたカメラマン。
ハリウッド撮影に代々協力してきた牧場主とその倅のOJ。
(彼が生きていたかどうかは議論されるかもしれませんが…)
後半急にバイクが出てきたのも日本の名作アニメのあのシーンを出したかったから?
ゴーディ事件の「立つ靴」が何なのか、わかりませんでしたが解説動画やサイトでは
凄惨な事件の中、最悪の奇跡。異様な光景(立つ靴)を見ていたジュープは
ゴーディと目を合わせずに済んで襲われなかったということらしい。
靴自体は本当に偶然でしかなく「目を合わせてはいけない」というルールを
演出していたわけだったんですね。