劇場公開日 2022年8月26日

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「宗教的モチーフと反宗教的モチーフがぎっしり詰め込まれた空の『トレマーズ』」NOPE ノープ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0宗教的モチーフと反宗教的モチーフがぎっしり詰め込まれた空の『トレマーズ』

2022年8月27日
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鑑賞方法:映画館

前作『アス』ではエレミヤ書第11章11節が何度も言及されていましたが、本作の冒頭で引用されるのはナホム書第3章6節。”わたしはあなたに汚物をかけ、あなたを辱め、あなたを見世物にする”という言葉が暗示しているいくつもの惨劇が繰り広げられる時点で十二分に宗教的ですが、そもそも劇中で何度もコスられる捨て台詞の“NOPE“には“Nope not today, Satan!” (“Oh, my God“と似たようなニュアンス)を連想させられますし、奇怪な現象が起こる牧場の所在地アグアドゥルセはスペイン語で“甘い水”のこと。これはヤコブの手紙3:11で言及される言葉“泉の同じ穴から、甘い水と苦い水が湧き出るでしょうか”にも言及されている海水に対する淡水、もしくは悪に対する善のようなもの。予告でも象徴的に出てくるグータッチはプロテスタント信仰の一部である“携挙(Rapture)”に見えます。テーマパーク“ジュピターズ・クレイム“のオーナーで元子役のジュープを演じているのは、キリスト教的な物語だった『ミナリ』で主人公ジェイコブを演じていたスティーブン・ユァン。ジェイコブはすなわちヤコブであり、ジュピターはローマ神話における気象を司どる神ユピテル。

異物が降り注ぐファフロツキーズ現象とともに空に現れた人知を超越した何かに惹き寄せられる人達、その正体を捉えようとする人達、それに激しい憎悪を抱く人達。彼らが見上げる空を同様に見上げているのが“ジュピターズ・クレイム”にある作りものの井戸。それが象徴しているのはニーチェの反キリスト教的態度が滲んだ有名な言葉。

“深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ“

・・・とりあえずざっと拾えた限りでも結構なネタが封じ込められているんですが、そんなものが一つも拾えなかったとしても素っ頓狂なモンスター映画として全然楽しめると思います。個人的には空の『トレマーズ』みたいな映画だなと思いました。

キキ・パーマー演じる主人公OJの妹エメラルドがメチャクチャカッコいいのが印象的。一つだけもろに『AKIRA アキラ』リスペクトなカットを決めた瞬間には鳥肌立ちました。恐らく人類史上初であろう電子タバコをカッコよく吸うヒロインの登場に胸が躍りました。

よね