「命と尊厳」アウシュヴィッツのチャンピオン ゆり。さんの映画レビュー(感想・評価)
命と尊厳
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第二次大戦中のポーランド。”テディ”の愛称で親しまれたボクシングの元チャンピオンはアウシュビッツに送られ、『囚人番号77番』と呼ばれることになり・・・
実話なので主人公が生き延びた事は分かっていても、警護兵の気まぐれでいつ殺されてもおかしくない状況は緊張の連続でした。
「あきらめずに希望を捨てずにいれば、きっと夢は叶う」というきれいごとは通用しない、狂った世界。いや、希望を持つのは大事だけれど、将来の事など考えられない、その日その日を生き抜く事がやっとです。
ガス室送りになる人々を見て、どこに行ったか分からない妻と息子の事を考えたでしょう。
こういう状況で正気を保ち続けることの難しさ。
「今この場で服を脱げ」と言われて拒否した少女。自分を気遣ってくれた人を攻撃することを拒んだ少年。
では、生き延びる為に憎い相手に媚を売る行為を責められるのか。
テディは人としての尊厳を守り抜いたけれど、本人の強さだけではなく、幸運だったんだろうと思いました。アウシュビッツを出られることになった時にも、テディに笑顔は無く、笑える日が来るのはもっと先なのでした。
非常に重い作品ですが、観て良かったです。
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