「ここまでやるかと驚く自虐ネタ乱発!ながらもニコラス・ケイジの魅力たっぷり。コメディーとアクションの加減も良く、派手なCGや巨大生物が登場せずとも爽快なエンタメ作品です。」マッシブ・タレント 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ここまでやるかと驚く自虐ネタ乱発!ながらもニコラス・ケイジの魅力たっぷり。コメディーとアクションの加減も良く、派手なCGや巨大生物が登場せずとも爽快なエンタメ作品です。
ニコラス・ケイジが自身をモデルにしたニック・ケイジを演じたコミカルアクション作品です。劇中「ニック・ケイジ」と名乗ってはいるものの、その本名と役柄はニコラス・ケイジご本人そのもの。ところが劇中のニックは、多額の借金を抱え、心から望んでいた役は得られず、妻とは別れ、娘からは愛想をつかされていたのです。その徹底した落ちぶれぶり、自虐ネタを演じる姿に驚きました。
といってもニコラス本人も、2010年前後、出演作が立て続けに興行的に失敗したことでメジャースタジオからのオファーがすっかり途絶えてしまったのです。また15個の不動産、50台の車、4つの豪華ヨットなどを所有し、とにかく金に糸目をつけずに買い物をしたニコラスは、2009年、税務署から1400万ドルの未払い分を取り立てられ、経済的な大ピンチに陥ちいりました。借金もミリオン単位であり、1億5000万ドルとされた資産の多くが失われてしまったのです。
そこから抜け出すには自己破産するという手もあり、実際、周囲もそう勧めました。しかし、ニコラスは働くことで乗り切ろうと決意をしたのです。それでニコラスは、この11年でおよそ45本もの映画の仕事を受けて借金を返済したのでした。
そんな彼に舞い込んだのが、本作のオファー。演じたのは彼の分身と言えるどん底の俳優役!そして公開を迎えた本作に対し、批評家や観客からの大絶賛の声は鳴り止まず、さらには全世界67カ国で初登場TOP10入りのスマッシュヒットを記録、華々しいカムバックを果たしたのです。
最初は、コメディに振り切った作品かと思っていましたが、見事に裏切られました。ハラハラドキドキの連続で、笑いも満載。ニコラスのファンは無論、なじみのない人も楽しめる、一級のエンターテインメント作品に仕上がっていました。
物語は、さる国の大統領候補の令嬢が誘拐されることから始まります。
場面は切り替わって、ハリウッドスターのニック・ケイジは悩んでいました。「かつて栄華を極めた俺の人生はもう取り戻せないのか」。彼は多額の借金を抱え、望む役にも恵まれず、妻子とも別れ、苦悩の日々を送っていたのでした。
悲観する彼の下に、スペインの大富豪の誕生日パーティーに参加するだけで100万ドルが得られる高額のオファーが舞い込みます。
借金返済のため渋々受け入れ、スペインへ飛んだニックを、彼の熱狂的なファンだという大富豪ハビ(ペドロ・パスカル)が待ち受けていました。最初は乗り気ではなかったニックでしたが、映画の趣味が合うハビと意気投合し、友情を深めていくのです。
ところがある日、アメリカが支援している大統領候補の令嬢の誘拐事件を捜査しているCIAのエージェントがニックに接近します。ハビの正体は国際的な犯罪組織の首領で、彼の動向をスパイしてほしいというのです。ハビとの友情をとるか、それとも国家のために働くのか。ニック・ケイジの俳優人生を懸けた一世一代の大仕事(ミッション)の幕が上がるのでした。
ニコラスの過去の出演作を引用しつつ、友情、家族愛、冒険などの要素を混ぜ合わせ、一見さんも楽しめる痛快作に仕上っていました。どこへ向かうかわからないマルチジャンル的な映画の構造そのものが、ニコラスの波乱に富んだキャリアを反映しているかのようです。そんな、どの場面を取っても現実なのかフィクションなのか、混乱させられることがむしろ心地よく、ストーリーの先読みを許さない一因となっています。
また、ニックとハビが、2人での映画制作を計画し、その脚本を練るために即興芝居を繰り広げるシーンの数々が出色です。自身もニコラスのファンだというハビ役のパスカルが、楽しげに演じる様子もほほえましかったです。彼の熱狂的なファンの心理を体現したハビのキャラクターにも大笑いすることでしょう。
ニコラスの過去作が劇中でも話題になることから、出演作を見返したくなる一方、ニコラスが出演していないけど、ニックが気に入る映画として劇中に登場する「パディントン2」にも気になることでしょう。
とにかくニコラス・ケイジの魅力たっぷり。コメディーとアクションの加減も良く、派手なCGや巨大生物が登場せずとも爽快なエンタメ作品です。
一転、二転と凝った展開もスピーディーで、ニコラスのファンのみならず、映画好きなら十分楽しめる佳品としてお勧めします。