「コン・エアーに始まりコン・エアーで終える。」マッシブ・タレント レントさんの映画レビュー(感想・評価)
コン・エアーに始まりコン・エアーで終える。
偉大な才能を持ちながらもそれを持て余して苦悩する俳優を描いた作品。ニコラス・ケイジご本人のことを描いたかはさておき、多数の話題作に出演し、アカデミー賞受賞歴もある誰もが認めるハリウッドトップ俳優ニコラスケイジ。だが、その私生活は難ありで、何度も結婚離婚を繰り返し、その度ごとに財産は目減りし、それに加えていわくつきのお城やティラノザウルスの頭の化石、来日すればオタク力を発揮しガメラの特大フィギュアを購入するなどの散財ぶりで遂に破産してしまう始末。
多額の借金を抱えたために背に腹は代えられないとばかりにろくに作品選びもせずにB級映画に出まくり自分で自分の価値を貶めている。とまあ、これはあくまでも噂であり、当のご本人はそんな噂はどこ吹く風とばかりに自由に映画に出続けている。
本作はそんな噂を逆手に取ったアイロニーたっぷりの作品。やはりご本人同様かつての栄光の重圧に耐えられずスランプに陥っていたニックは大富豪のパーティー営業を最後に俳優業引退を決意する。しかし、そこで彼は心の友と出会い、再び映画への情熱を取り戻す。
二人でともにレジェンド俳優ニックに相応しい大作映画の案が練られてゆく。大味アクションではない人間心理を深く描いた重厚なドラマだ。
しかし本作自体が後半に進むにつれてかつて、いや現在もニコラスが出ていた大味B級映画にどんどん様変わりしてゆく。
映画でアクション経験があるからといって現実のマフィアと渡り合えるわけもないのに、何故か容易く危機を脱してゆく。メイク担当だった元妻の異常な度胸等々のご都合主義のオンパレード。
挙句の果てには事件解決で娘との確執も一気に解消なんて念の入れよう。まさに「コン・エアー」のラストそのままに。
結局、本作はニコラス・ケイジには重厚な人間ドラマよりもB級大味映画がお似合いなのだと思いっきり自分を皮肉って見せた映画ということ。あくまでそれは噂だけど。
幻覚で出てくるニコラス・ケイジの若返り様、CG技術もここまで来たのね。毛穴まですごい再現度。役を演じたのがニコラス・キム・コッポラって(笑)。
ちなみに「コン・エアー」は傑作。