「ニコケイ、第2黄金期の幕開けとなるか」マッシブ・タレント 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
ニコケイ、第2黄金期の幕開けとなるか
ニコラス・ケイジと言えばアカデミー主演男優賞を受賞した「リービング・ラスベガス」(1995)を皮切りに、「ザ・ロック」「フェイス/オフ」「スネーク・アイズ」などハリウッド超大作に次々と出演した90年代後半が第1の黄金期と言えるだろうか。だがその後、浪費癖がたたって多額の借金を背負い、出演作が大コケしてハリウッドからのオファーが激減するも、地道に低予算映画に数多く出演して借金も無事完済したという。
そんなニコケイの俳優人生を彷彿とさせる“ニック・ケイジ”役をケイジ自身が演じるという、自虐まじりのセルフパロディ映画と言えるだろうか。意匠としてはジャン=クロード・バン・ダム主演作「その男ヴァン・ダム」に近いが、落ち目の俳優が復活にかけるストーリーという意味ではマイケル・キートン主演作「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」、さらにエンタメ業界でのカムバックに話を広げるならミッキー・ローク主演作「レスラー」、レニー・ゼルウィガー主演作「ジュディ 虹の彼方に」なども想起されよう。
本作の監督・脚本を務めたトム・ゴーミカンはこれが長編2作目の若手で、あふれんばかりのニコケイ愛を注ぎこみ、ニコケイの過去作への直接的な引用やオマージュをたっぷり詰め込んでいる。家族の危機、映画業界、バディもの、サスペンス、スパイアクションなどさまざまなジャンルと要素を盛り込み、ほどよく枯れてきたニコケイが気負わずに、いつもの困惑気味の表情で好演している。第2黄金期の幕開けになるのでは、と期待してしまう。
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