「ソダーバーグのジャンル論に基づくヒッチコック風スリラー。」KIMI サイバー・トラップ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ソダーバーグのジャンル論に基づくヒッチコック風スリラー。
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ソダーバーグは、ジャンル映画を手掛けることをよく「トロイの木馬」と表現していて、ジャンルの衣を着れば観客を物語に誘い込みやすい、という意味だと解釈している。この映画も、SNS時代とコロナ禍のリアルを描くために、ヒッチコック風スリラーという体裁を利用している。ソダーバーグの面白さは、いわば方便としてのジャンル映画についつ本気になって、つい必要以上にソリッドに仕上げてしまうことではないか。
この映画も、ソダーバーグ特有の、過不足のない表現が冴えわたり、やたらとこだわって値段以上に味がよくなったファーストフードメニューみたいになっている。フィルムメイカーとしての上手さとスタイルが、結果いびつなジャンル映画を生んでいる。どこを切っても面白いのだが、たまに作り手のつもりを見失って戸惑う。この宙ぶらりんな感覚もソダーバーグ映画の魅力だと思うのだが、ちゃんと伝えられてるが自信はない。
ただ一点不満を述べるなら、クライマックスでKIMIに命じてかける音楽は、前段のフリがあったテイラー・スウィフトが良かったんじゃないか。そこはちょっと安易に選曲しませんでしたか?と問いたくなる。しらんけども。
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