「「負け犬」は誰が決めるのか」雄獅少年 ライオン少年 sumiさんの映画レビュー(感想・評価)
「負け犬」は誰が決めるのか
綺麗なアニメーションだな、と思って
ちょうどレイトショーをやっていたので鑑賞。
獅子舞にも中国にも詳しくないですが、
ストーリーも社会背景も獅子舞のことも
分かりやすくてよかったです。
最後もスッキリ終わるし、王道といえば王道なのかも。
主人公のチュンは、幼い頃に両親とみた獅子舞に
きっとこっそり憧れてもいて、
でもそれはいわゆる「勝ち組」や「一軍」たちが
やる(できる)ことだと諦めていたけど、
同じ名前の女の子に助けられ、一緒に逃げて、
獅子頭をもらって、友達を誘って、
友達の友達がさらに仲間になって、師匠ができて…
それこそ獅子舞が足場の上を
くるくる移動するように、いいことも悪いことも
テンポよく進むので、飽きないし
話がスッと入ってきました。
主人公のチュンは、ひょろくて気弱だけど、
「あいつらが羨ましい」と素直に言える。
「僕はもう大人だよ、心配しないで」と
遠く離れた両親に気丈に振る舞える。
「早くじゃなくて、無事に帰ってきてと
ちゃんと願えばよかった」と
神を恨まず、自分の非を嘆く。
可愛い女の子に釣られてやり始めたマオは、
もう女の子のことなんか忘れて
ずっと友達と師匠の心配してた。
川の場面ではいつも助けられてたワン公は、
最後の足場が崩れかけたとき、すぐ水に入って
柱を支えにいってて、友達を助けようとしてた。
踏み躙られても立ち上がる。
嘘みたいな地図も一旦信じて行ってみる。
教えを乞う前にまず配達を手伝う。
獅子になりたいと願い、闘う。
あぁ、あんたらは負け犬なんかじゃないよ、と
何度も思って何度も泣いた。
妻と生活のために獅子舞を諦めたチアン師匠と
夫の身体のために諦めさせた妻アジェン。
師匠よ「後悔してないよ」はきっと本当だけど、
そんな夫に対して「私が後悔してる!」って
ずっと言いたかったんだろうな。
「子どもいないけど、
あの子達がうちの子だね」
両親が出稼ぎに行くような地域で
こんなふうに思ってくれる大人、
なかなかいないよな。あったけぇな。
両親の代わりに出稼ぎに行ったチュンが
チュンと再開するところ。
かたや床に寝かされて、毎日肉体労働で、
雨の中傘もさせずに走り回ってる。
かたやきれいな服を着て、傘をさして、
ピカピカの車を運転してる。
こういう細かい対比もあって、
映画館でもう一回観たくなりました。
もっと早く観ればよかった!