「【性に奔放で、思う存分に生きた男女の作家の関係性の変遷を描いた作品。今作を観ると、改めて寺島しのぶさんと、豊川悦司さん及び広末涼子さんの凄さを感じた作品である。結局女性が一番強いのであるなあ・・。】」あちらにいる鬼 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【性に奔放で、思う存分に生きた男女の作家の関係性の変遷を描いた作品。今作を観ると、改めて寺島しのぶさんと、豊川悦司さん及び広末涼子さんの凄さを感じた作品である。結局女性が一番強いのであるなあ・・。】
ー ご存じの取り、今作で描かれるみはるは、情念でペンを取ると言われた故、瀬戸内寂聴さんであり、白木は、晩年まで女好きで知られ、数々の女性と同衾したと言われる故、井上光晴である。
それにしても、白木の妻(広末涼子)を含めて、凄い濃密な関係性である。-
◆感想
・今作では、男女のSEXシーンが多数描かれているが、殆どのシーンで、猥雑感はない。
みはると、白木が性欲を満たすためにSEXを行っているわけではないからであろう。
二人は、人としての繋がりを身体を重ね、相手の体温、重みを感じる事で、得ようとしたのであろう。
・白木の妻が、夫の浮気を知りながらも平静を保っている姿。常人には俄かには理解出来ないが、白木が妻の文才を買っていた事に、自分の存在意義を持っていたのだろうと、勝手に推察する。この辺りの微妙な心の機微を、広末さんが絶妙な表情で演じている。
・だが、みはるは”このままだと、情念及び白木の家庭を壊しかねない”と感じ、出家するシーン。前段階でみはるの髪を白木が風呂で洗ってあげるシーン。
この二つのシーンは今作では、胆のしーんである。
”女性の髪を優しく洗ってあげる男性って、魅力的ではないだろうか”
私は、無いです・・。
・そして、総てを察して白木の行動を赦す、白木の妻。
彼女はみはるの剃髪式を知り、”貴方が行ってあげた方がいいわ・・。”と言う。
その後、二人は馴染の鰻屋で鰻を食べるのだが、妻が”もう、あの人は食べられないのね‥。”と言う言葉を聞き、涙を流す白木の姿。
豊川悦司さんの畢生の演技であると思ったシーンである。
・十数年が過ぎ、臨終が近い病院のベッドに横たわる、白木の脚を出家したみはると、妻が揉むシーンも印象的である。正に、二人は、同士ではないだろうか・・。
<今作は、赦されざる不倫をどのように捉えるかが、評価の分かれ目であろう。
私は、不倫は許されざる行為と思っているが、実際に井上光晴と、瀬戸内寂聴氏は、今作で描かれた行動を取っている。
女性がどう感じるかは分からないが、男から見ると叱られるのは重々承知の上で”アレだけ、好きな事をして、最後は愛する二人の女性に看取られた白木って、何とも幸せな男だなあと”感じた作品であるとともに、結局強いのは女性なんだよなあ、と思った作品でもある。
あ、勿論、私は家人一筋である・・。>
■2022年11月12日 追記
・イロイロと考えて(時代状況も鑑みて)、評点を4.0から3.5に変更しました。悪しからず。
・レビューに大きな瑕疵がありました。御指摘頂いた方々、ありがとうございました。
NOBUさんは読書家だからたくさん本を読まれてて、知識量が凄いです。
たまには勘違いをされることもあるでしょう。お気になさらないで下さい。
いつも深い考察と多くの読書量からの素晴らしいレビュー、感服しております。
引き続きよろしくお願いします。
NOBUさん、こんにちは。トヨエツ好きなんですが寺島しのぶさんと共演だといつもこういう感じの映画でちょっと残念。でも二人とも安心して芝居ができるいい相棒だと思います。金子光晴は私の好きな作家・詩人の一人です。レビューで挙げられてた著書は金子の方ですね。光晴違い?