劇場公開日 2022年11月11日

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「三つ巴の鬼」あちらにいる鬼 shironさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0三つ巴の鬼

2022年10月27日
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鑑賞方法:試写会

決して不倫を擁護する映画ではないですが、このタイミングでこの映画を作った意味を考えると、かなり攻めた問題作だと思えます。
性や倫理から解放された愛の選択であり、
文学の犠牲者への弔いでもあると感じました。

アップの表情で語るシーンが多く、それに応える役者がまたすごい。
ガッツリ演技を堪能しました。
素晴らしいシーンの数々は予告編としても切り取られています。
風呂のシーンには感情が掻き乱されて泣けました。
そして、アップではない海辺の後ろ姿。
むしろここのロングショットを活かす為にアップを多用していたのか!と思えるほど。
ぜひご堪能いただきたい。

でも、一番のお気に入りは自転車の二人乗りでなびくスカート!
ドレープが計算されている衣装で、これまでの相手には感じなかった心のざわめきが表現されていました。
ここに至るまでの出会いのシーンがまた素晴らしい。

白木とその妻の笙子と長内は同類。
愛と快楽の狭間で人を傷つけたり自分が傷つけられたり…その体験から絞り出す珠玉の一編の為なら、どんな犠牲も厭わない。
生身の人間同士の業に身を投じながら、主観と客観に脚色を加え小説として昇華させる。
全てはその為だけに。
文学に魅了され、人の心を無くした三つ巴の鬼に感じました。

荒井晴彦さんの脚本は人間の性と業を真正面から描いていると感じます。
いつも、愛だけに収まらないセックスシーンが胸を打ちます。
孤独な心の癒しや慰めだったり、自己肯定だったり現実逃避だったり。そして時には闘いだったり。
更に本作では歌がキーポイントになっていて、当時の空気感を色濃く表すと同時に、
現代の風潮へのアンチテーゼにもなっていたと感じます。
ラストシーンも歌っていたのでは??と思うのですが。いかがでしょうか?
もし歌っていたのだとしたら、不要だからカットしたのでしょうが、ちょっと聞いてみたかったです。春歌だったらすごいな。

あと、音楽にすごく違和感があるシーンがいくつもあったのですが、重くなりすぎないように逆張りにした…とか??
意味があってその曲にしたと思うので、引っかかりました。

#あちらにいる鬼

shiron
shironさんのコメント
2022年11月28日

iwaozさん、素晴らしいコメント有難う御座います。
おっしゃる通り、綺麗事だけではない人間の本質を描いてますよね。
それに“あの”映画をチョイスしてくるあたり。
時代の空気を表していると同時に、今改めて見直すべき作品なのかもしれないと感じました。

shiron
iwaozさんのコメント
2022年11月20日

三人巴の鬼!言い得て妙ですね。^ ^
今だと、荒野さんからすると
あちら側(彼岸)に行ってしまった鬼たちとも捉えられますが、
執筆時から考えると
誰しもの心の内に存在する鬼
(自らの欲求)を
他の人の目に見えるように
生きてきた三人を通して
美しさも醜さも同時に兼ね備えた
人間というものを描いている
とも捉えられるような気がします。
m(_ _)m

iwaoz