「実写化成功と言って良い迫力」ゴールデンカムイ MP0さんの映画レビュー(感想・評価)
実写化成功と言って良い迫力
原作の漫画を少し読んでいましたが、単行本を集めたり作品の完結を追いかける熱心さはない程度です。
漫画など二次元作品の実写化にはかなり否定的な立場です。
そういった立場から観て、迫力と映像美の点から「実写化が上手くいった作品」と言って良い出来だったと思います。
特に良かったのは序盤の日露戦争でのシーンは杉元の動機に大きく関わる部分ですが、原作の序盤ではあそこまで描かれていません。後々と繋がる事で効果的に「不死身の杉元」の所以を描いたのは脚本の巧さだと思いました。
あとは俳優の演技は見事です。様々な個性的なキャラクターの魅力(不気味さや気持ち悪さ含む)を引き出すために若手からベテランまでとてもよくキャラクターを理解していたと思います。
また映画館で観る映像は基本的にスクリーンの目の粗さがある事から近年はバックライトの明るさのあるテレビなどの解像度に対して見劣りすることがありますが、遠近感のぼかしなどを駆使して、解像度の高い映像美で仕上がっていることに驚きました。
特に映画館で観る場合の鬼門となる夜の描写や室内などは黒が潰れることなく描かれており、劇場向けに撮影班や編集がかなりの労力を費やしたことが伺えます。
ストーリーとしては完結までではなく途中までですが、原作にもある杉本とアシリパの掛け合いや笑いなどを巧く再現していて、こちらの解像度も高かったです。またヒグマや狼などはCGなどとわかっていても迫力があります。
一方でここからはネガティブな点ですが、私は音響設備の良いBESTIA(+300円)で視聴したのですが、熊や狼の恫喝声、銃声や物のぶつかったり落ちたりする音などは良いのですが、エンドロールで流れる主題歌がボーカルの声を引き出そうとして調整されていたりの収録の関係か分かりませんが、楽器の音が大きすぎてかき消されるようで折角の締めの場面で非常に聴きにくかったです。4DやDolbyAtmosだと違うのかは比べていないので分かりません。(BESTIAはこれらに比べてシアター数や上映回数が少ないからシアターごとの調整不十分なのかもしれない)
また話のテンポは原作から大きく外れることなく進みますが、やや一気に2時間の中に入れようとした影響か戦闘シーンが多いためか、村でのやり取りなどは集中力が切れて中だるみする眠くなるような場面も。
大切なシーンのはずですが、映像の解像度が高いせいかどうしてもアイヌの家の中などがセットっぽさが浮いて見えるようでまるでNHKのドラマ作品を見ているような気分に。
(あの小さな村の規模で明らかに家の中の空間が大きすぎるなど)
この辺りはアイヌの人々の暮らしへの解釈違いかもしれませんが、私は北東北生まれなので小さい頃から博物館などでよく見ていたのでそんなに間違っていないと思うのですがちょっと違和感を感じました。