「原作再現がすごい」ゴールデンカムイ SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
原作再現がすごい
原作が好きなのだけど、予告編のコスプレ感が気になってあまり期待せずに観たが、予想外に良かった。
まず、原作の再現度がすごい。全体を通して原作愛にあふれていてとても好感がもてる。
俳優の見た目が漫画のリアル版はこうだろうなー、という芯のところをとらえていると思った。杉本が原作より細身なのもあまり気にならない。
シーンやストーリー展開も原作をすごく研究してると思う。特に、アイヌの文化や料理がオマケ程度じゃなくてちゃんと入っている。漫画原作の映画にありがちな、ストーリーを詰め込みすぎてダイジェスト版みたいになってるということもなく、1本の映画として自然なまとまりのある内容だった。
でもこの映画で本当にすごいな、と思ったのは、戦争のシーンと、熊やオオカミのCGシーン。ド迫力で、自然で、ついに邦画でここまでのクオリティの映像がつくれる時代になったのか―、とびっくりした。戦闘シーンも素晴らしかった。
原作特有のセンスのギャグシーンもちゃんと入ってる。白石の軟体人間の描写も原作再現ですごい。ラッコ鍋やサーカス編での谷垣も続編でぜひ見たいが、この作者の悪ノリすぎるシーンを実写映画でやってしまっていいのか?と思うところもあるが、それでもやはり実写だからこそ観たいなー。
リアリティ、という意味では、けっこう疑問に思うところもあった。やっぱりどうしてもコスプレ感はあるし、アイヌの生活の様子も含めて、「分かりやすすぎる」ところはもやもやする。「刺青人皮」を集める、というストーリーの骨子を成す要素も、漫画だとすごく面白い設定だが、実写でこの設定を観ると、いろいろ細かいことが気になって非現実感があるように思う。
原作を知らない人が観ても面白い映画なのか?というのはよく分からない。正直、感動するシーン、ぐっとくるシーンってのはあまりなかったな、って思う。アシリパが杉本を殴るシーンでも、あまり…。お互いのきずなを深めるようなエピソードが意外にないような…。お互いに信頼して尊重しあってるのはよく分かるのだけど。
でも、この映画をきっかけに、日本やロシアでアイヌの問題を考える人が増える、という意味では、すごく良いことだと思う。