EO イーオーのレビュー・感想・評価
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美しい描写で表される苦いストーリー
所属していたサーカス団が解散し、パフォーマンスの相棒である女性と離れ離れになってしまったロバが、望まぬまま様々な人と関わりながら放浪するといったストーリー。多くは説明せず、表情に乏しくつぶらな瞳のロバとの関係性を通して、関わる人間の性質を描写している。
最後に関わった貴族の息子の元にいれば、ロバは恐らく命を落とすことはなかったと思われる。しかし、大好きな相棒の元にはもう戻ることができないことを悟り、自らサラミになる選択をしたようにも見える。
序盤は愛らしく見えたロバが作品後半ではやや凛々しく、終盤では少しくたびれて小さくなったように見えた。演出によるものだと思っていたが、エンドロールによるとどうやら複数のロバがEOを演じていたとのことだった。
ストーリーのつなぎがやや荒く、展開に違和感を感じる部分がある。一方、大自然や町並みの中でロバのシルエットのみを映し出す映像、赤い光の点滅や短調の音楽でストーリーの転換を示唆する手法は面白いと感じた。
まあまあだった
評判がいいので見たところ、特にロバについて関心がないせいか、あまり心に何も残らない。つまらなくはないけど、見ても見なくてもどっちでもよかった。時間が短くてよかった。でも、ロバが家に一頭いたら、子どもを乗せて散歩したりして、それはそれで楽しそうだ。ニンジンのネックレスをして食べていたけど、口が届かないところのニンジンはどうしたのか気になる。
雄大な映像とろばの名演技は良いけれども、物悲しい
ろばが荷車牽いても軽やかに進む姿は、『小さな麦の花』でもあった。サーカス小屋から様々な世界を転々とするのは、『ダンボ』や『エレファント・マン』を連想した。可愛がってくれた人間を慕い、動物の命を粗末にする人間には一撃を食らわせたり、野性を求める姿は、『野性の呼び声』にも似たところがある。牛たちとともに屠殺場へと誘導路を進む姿は、『テンプル・グランディン』の発案にも描かれていた。ドローンにより、小川から森の宙空を駆ける映像は雄大だったが、赤い光は、ろばにとって刺戟的ではなかったのだろうか。虐待はしなかったといっても、たばこの煙は害ではなかったのだろうか。にんじんや藁を食べなかったり、ぐったりと寝込んだり、様々な仕草の場面は、ろばの名演技ということなのだろうか。
映像は良かったけど
主演ロバに近い目線から映し出される風景、生き物、人間…カメラワークはすごい良かった。
冒頭、少女から溺愛されていたEOは予想しなかったエンディングを迎えるが、移り変わる場面の掘り下げが無く、突然ストーリーが切り替わって、「え?どうしてこうなった?」「その経緯は?」って思う事がたくさんあった。
もうちょっと登場人物に感情移入できたらなぁと。
ストーリーとは関係ないけど、ゴールキーパーのわがままボディはなんか凄かった。
ロバの瞳に映る世界
ロバが様々な地域を旅する作品という事前情報のみで鑑賞。
全体的にEOと名付けられたロバの瞳で映る世界をそのまま映した特殊なロードムービーのようでした。人間の優しさに触れつつも、人間の身勝手さが色濃く描かれていて考えさせられるものもありました。
とにかく人間同士の争い、マウント、自己満足、同じ生物なのに屠殺する様子も、自身が襲われる様子も主観で映され、辛い映像も度々挿入されていました。
良い方向に取られることもあれば、悪い方向に取られ、その相反する状況に何度も巡り合ってしまうEO、喋れないが故にその瞳でしか感情を読み取ることができないのがなんとも歯痒いです。
終盤、EOと関係性が薄い人物たちの会話劇になってしまうので、そこからEOの物語のラストに繋がる感じがしないまま唐突に終わってしまったのは消化不良感が否めなかったです。
物語に何か整合性があるわけではないですが、人間の残酷さを知るにはこの上無い作品でした。もっと動物に優しくせねばな…と思いました。全ての動物を救うというのは夢物語ですが、少しでも力になれればと引退競走馬の支援をしています。ナイスネイチャ~。
鑑賞日 5/11
鑑賞時間 14:30〜16:05
座席 G-3
サーカス団で、若い女性カサンドラ(サンドラ・ジマルスカ)とのコンビ...
サーカス団で、若い女性カサンドラ(サンドラ・ジマルスカ)とのコンビネーション芸をみせて人気の灰色のロバ・EO(イーオー)。
ある日、団長の債務不履行で団の動物たちは接収されることになった。
それを皮切りにイーオーは放浪の旅を続けることになるが・・・
といった物語で、ロベール・ブレッソン監督『バルタザールどこへ行く』にインスパイアされた作品。
5月公開作の中でもっとも期待していた作品なので、『バルタザールどこへ行く』はもとより、スコリモフスキ監督の旧作2本を鑑賞して挑んだ次第。
結果・・・
うーむ、映像的には観るべきところは多々あるのだけれど、なんだかつまらない。
こちらの心に響かなかった原因を考えると、
1.ブレッソン監督『バルタザール~』にあった宗教臭がほとんど感じられない
2.イーオーが遭遇する人物たちの描き方が点景的であり、結果、表層的な感じとなってしまった
3.イーオーの視点を強調しすぎているがゆえに、ロバと少女の間の偏愛映画にみえてしまう
といったところか。
3つは絡み合っているのだけれど、
『バルタザール~』では様々な人々を描いているように見えながら、その実、ロバを愛した少女とその少女に恋慕する青年の物語に帰結し、結果、汎用の物語ではない深度を感じることができた。
が、本作では、イーオーが遭遇する人々はイーオーにとって一過性・通りすがりの人々に過ぎず、人物の深みを感じるまでには至らなかった。
また、恋愛感情の取り扱いも異なっており、『バルタザール~』では少女と青年のどうしようもない恋愛感情だが、本作ではイーオーとカサンドラとの間の恋愛感情が主軸となっており、傍観者(当事者に関与したくてもできない者)として「やきもきする神」のような感じがあったが、本作ではイーオーが当事者の立場になっている。
で、結果、恋愛の当事者となったイーオーは「キリスト的受難者」ではなくなり、単にひどい目遭うだけの存在となり、最終的には「あ、やっぱりね」のような最期を迎えてしまう。
付け加えるなら、最期を迎えるにあたって、イーオーはその前のエピソードでサラミだのなんだのと言及されており、逃れられない運命だとしても予定調和的な感じがしてしまう。
と、まぁ、どうもこれぐらいのことを思ってしまって、いかんともしがたい。
ブレッソン監督とスコリモフスキ監督の宗教観や社会観の違いと言えばそれまでなのだけれど、寓話に昇華できていないあたり、もしかしたらスコリモフスキに向いていなかった類の作品なのかもしれません。
映像は魅力的だがストーリーが心に響かない
詩情豊かな映像には思わず引き込まれる瞬間があるが、EOの放浪の旅からはあまり寓意や教訓のようなものが感じられず、動物の目を通して人間の本質を炙り出すような話にもなっていない。
サッカーチームにボコボコにされて瀕死の状態になっているはずのEOが、いつの間にか荷車を引いて働かされていたり、人間を蹴り殺した?EOが、次のシーンでは馬と一緒にトレーラーに乗せられたりと、エピソードとエピソードの繋がりの悪さも気になる。
EOを巡る物語のはずが、終盤ではEOとは関係のないところで話が進むため、エンディングでEOが迎える運命にも唐突感が否めない。
途中、ロボット犬が出てきたりして、結局、何が言いたいのかよく分からなかったのだが、「動物愛護」の名目で保護されたことから始まるEOの受難を描くことで、人間の偽善や身勝手さを糾弾したかったということなのだろうか?
ホンワカしたロバの冒険を期待していたのですが、、、
人間の身勝手な都合で、色々な環境に迷い込んで、最期は食肉処理所に運ばれて、屠殺されるイメージで終わっています。
暖かい、ホンワカした作品を期待している人は、見ない方が良いです。
おとぎ話は飛躍する
おとぎ話は飛躍する。ましてやロバ目線だと話がとんでしまい、人間(私)はなかなかついていけませんでした。
エンドクレジットの音楽が流れ始めると同時に、思わず「まじか…」とつぶやいてしまった。
私の両サイドに座っていた(20歳代と30歳代らしき)2人の男性は、まるで申し合わせたように同時に前かがみになって、頭を抱えてました。
ごめんなさい。僕にはわからなかった。
イエジー・スコリモフスキ監督は今回が初鑑賞
『バルタザールどこへ行く』は未見(TSUTAYAにすら無いとは驚いた)
それが良くなかったのか、イマイチ流れに乗れなかった。
最初の動物愛護団体のいわゆる誰得運動は良かった。
動物のことなど微塵も考えてなく、ただ自分が信じる正義に酔いしれたいだけの偽善者であることは、その後のEOへの仕打ちから明白である。
次に、白馬と雑誌(?)の撮影をしている光景を見かける際も、結局人間は動物を都合の良いインテリアにしか思っていないということが伝わってくる。
この流れから「EOはこれからいろいろな善人や悪人と会うけれども、どいつもこいつも人間様が偉いというスタンスは自覚的であれ無自覚であれ同じで、そいつらの身勝手な行動によりEOはどんどん不幸になっていく」という話を想定したが、どうも微妙に違った。
サッカーチームのところまではその観点で見ると面白かったが、そこからどんどん人間の所業とEOの運命の関連性が希薄になっていったように感じた。
特にイザベル・ユペールが出てくるあたりでは、人間側の行動とは関係なくEOは自由に動けてしまう。
よってあのラストも「人間の身勝手さのしわ寄せを一身に受けた成れの果て」という感じがあまりせず、理不尽さや不条理さもさして感じなかった。
そのような憤りを感じさせることがこの作品の目指していたところだとは思うが、以上の理由により僕にはイマイチ響かなかった。
たらい回しの旅
イーオーにとって傍迷惑でしかない動物愛護団体による無駄な正義感から人間の愚かさをロバの目線で描く目的ですら定かではない旅、サーカス団は居心地の良い場所でカサンドラとの再会を待ち望んでいる、そんな寂しげな表情を見せるけれど、それですら人間側の勝手な考え方でしかない、仄々とした動物映画をイエジー・スコリモフスキが、そんな意外性を感じながら、危機感を煽るショッキングな映像描写から優雅で自然美溢れる映像とロバに癒されるだけの映画にはならない、人間が世界の中心で暴力が当たり前の日常でしかない。
イザベル・ユペールが登場してから別の映画が始まるようで短編にもならない本作との重要性も感じられない不思議な感覚、インスパイアされたロベール・ブレッソンの『バルタザールどこへ行く』と比較しなければならないか、少しだけエミール・クストリッツァだったらどう撮っていただろう、と、関係無いけれど思ってみたり!?
人為的な被害者としてのメタ。
抵抗することも、文句を言うことも、ましてや自決することもできない無垢なロバが直面する困難な処遇。ロバでなくても多くの人間は心を痛めるだろう。その原因は、我々を代表する愚かな人間の所業。ロバを思想、多様性、民族、宗教、地球と置き換えることで、作品のスケールは無限の拡がりをみせる。沈鬱な気分のまま観終えた。
絶賛されるほどの共感は持てないけれど…
ロバの目をとうしてみる人間世界。ただ純粋に飼い主との愛情を求めるだけのロバから見たらなかなか不思議な世界かも。ただ、日本人の感情と根本的に違うから単純に共感はしずらいかも。難しい事理解できなくても充分見応えはあったけれど…
斬新?特異?悲哀?啓発?
ヤバイ、オモロくないかも・・・。いや、ヤバイ、オモシロすぎる・・・と思うものの、一気に落とされたー・・・といった率直な印象。
動物目線というには特段新しいわけでもないけれど、ロバ目線って・・・なぜか新鮮に感じたものの、明らかに人間が作り出したロバの気持ちにしか思えませんでした。だから、一瞬めっちゃ引いた感じで眺めていたのですが、展開がなかなか面白くて、ロバという選択肢はなかなか絶妙なのかもと面白みを感じ始めると、結構見入りましたが、まさかまさか・・・とおそれている間にバツンと暗闇で終わってしまった・・・という感じです。
難しくはないけれど、感情のもって行き方とかや思考が追いついていかないような、そんな難しさを感じる作品でした。
令和の子猫物語
サーカス団の人気ロバ「イーオー」くんが辿る数奇な運命を、ロバ目線で描いた作品。
サーカス団の解散で売り飛ばされたイーオーは、隙を見て逃げ出すと元の飼い主恋しさに欧州をさすらう。
ロバは言葉こそ話さないが、そのつぶらな瞳で雄弁に訴えかける。
動物目線のドラマといえば先日亡くなられたムツゴロウさんの「子猫物語」を思い出す。主役猫のチャトランを実際には複数の猫で撮影したという。
本作ではチャトラン同様、イーオーは六頭一役とのこと。ちなみにパンフによれば名前はタコ、オラ、マリエッタ、エットーレ、ロッコ、メラだそう。
なおあちらとは異なり、撮影時に動画虐待は一切なかったそうな。
EOにとっての人間
EOの黒い瞳に映る人間は可愛がってくれる人、冷たい対応の人、親切な人、暴力をふるう人、犯罪者だろうが、善人だろうがみんな同じ。
衝撃の最後のため決して後味が良い作品ではないのですが、観ない方が良かったとは思いませんでした。
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