「馴染みはあるのに実物を見ない」EO イーオー いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
馴染みはあるのに実物を見ない
wikiでも記載されていたが、日本では200頭という説もあり、多くとも数百頭位だろうと言われているそうだ にしては、小さい頃からよく登場している動物である グリム童話や、ピノキオ、ロバ君、王様の耳はロバの耳、そして、びっくりドンキー等々w 家畜としては懐かないというデメリットを克服すれば、燃費と耐久性がよい、高性能な動物とのことらしい そんなロバがサーカスで飼われていた飼主の女性と離ればなれになり、数奇な運命を辿り、その先には人間のご都合主義の犠牲になったという哀しい寓話である
映像、音声とも、迫力ある演出が散りばめられている レーザー光線や、四脚ロボット等の未来映像も差込まれたり、主人公のロバ、馬やその他家畜の嘶きや鼻息、その発せられる自然の息吹が大胆にスクリーンに映し取られる 人間の都合に依る流転の旅は、それ自体が死の匂いを充分纏わせながら、しかしその運命のギリギリなキワを逸れ続ける強運さは強引なストーリー展開とはいえ、推進力として面白い 行く先々で手痛い巻き込まれに会いながらも、しかし一矢報いるシーンもあって、主人公の意志が観客に染込んでくる 勿論ロバにはそこまでの意識はないから、そう映るだけかもしれない でもそこを演出として編集する監督の伝えたい意図は充分感じるのだ
人間の愚かさや自然の美しさ驚異を、あのつぶらな瞳に映し続ける事で、観客は理不尽で厳しい、しかし運命のダイナミックさを体感できるのではないだろうか 主人公は唯々、飼主であり、パートナーである女性に逢いたかった しかし彼女は男の方を選び、そして主人公は牛と一緒に屠殺場へ・・・ なんと人生の苦みが迸る、辛いエンディングだろうと、その逃げようのない循環構造に、唯々自分の人生を重ね合わせるシンクロ性の高い作品であった