「素晴らしい」EO イーオー Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい
スコリモフスキーは超人だ。キレッキレのショットと熟練技で、現代の最先端の映画を見せてくれた。現役バリバリの85歳。
「生き返る芸」を披露するサーカスを上から映し、その円環から“EO”の文字が現れるオープニング。EOの瞳の大写し。空中散歩をするようなドローン映像。動物を人格化せずEOの目線で世界を見る、こんな映画は初めてだ。
神は実に様々な形で存在する。宇宙や太陽、流れる透明な水、風、空を飛ぶ鳥、森の生き物、家畜や人間。万物はそれぞれが神が表現する様態のひとつだ。可愛いEOの無垢がそれを見事に物語る。
神は“自然の法則”そのものだから、超能力のような仕方では存在しない。宗教も奇跡も、サーカスの芸と同じでインチキだ。
そして人間は、インチキな神や王のように、動物たちにポジションをわりふって支配しようとする。
誰もかれもが抜きつ抜かれつ一方向に走り続けさせられる虚しい人間社会。科学の発展も止まることを知らない。人間の営みも自然方則のひとつだとすれば、もはやなすすべもないのか。
人間たちに酷い目にあったときにEOが見た4本足の機械の幻覚は、地上から動物がいなくなってしまい、機械が代用品として動き回る恐ろしい世界のイメージを思った。
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