「衣装も美術も演者も素晴らしい!※そんなにゲイゲイしてません」チャイコフスキーの妻 たちつてとんさんの映画レビュー(感想・評価)
衣装も美術も演者も素晴らしい!※そんなにゲイゲイしてません
※巷で気にされてるほど同性愛主体の映画ではありません。
※なんならチャイコフスキーの伝記映画でもありません。
オケがバーン!と出てくる曲とてフランチェスカ・ダ・リミニ(多分)くらいしかなく、チャイコフスキーの香りはほぼない。
何かの真実を描こうとするとき、物語の設定を「困難」にすることは大映ドラマ的常套手段だ。時代によって困難を描く題材が変化していて、結核だったり白血病だったり戦争だったりマイノリティへの弾圧だったり。この映画の場合その困難の題材にチャイコフスキーが選ばれただけなんだろう。
あれから100年以上たってもロシアでは同性愛が違法で、冬季オリンピックが紛糾したのも記憶に新しい。
史実に則ってる部分もあるがかなりのエピソードがフィクションのようだ。
フランス語で語り合うまぁまぁ上流階級の描写もあったように、自分たちより高い文化があると認めている人々の中でも美しい女をただ美しい映像で、そして惨めに描いただけでもある。
象徴的なのがピアノの運送シーンで、結局「肉体の力」がないと世の中が回らない→オトコの威光でもなければ女には何もできない時代。男たちの肉体は老婆のはだけた胸を凌駕する。そこには肯定も否定もないんだと思った。
ロシアのオケを聴いていると馬力一発肉体のチカラが音色の特徴みたいになってることもある。ヴォートカかっくらったヒグマみたいな文化圏なのはわかってるつもりだが隣国に攻め入ったりするのはやめろと言いたい。
そんなことで先人たちの築いた自国の重厚な文化を台無しにするなと。
それとこの映画、ゲイであることがホモソーシャルのミソジニーであるかのように描かれていた部分は気になった。そこはイコールではない。
いや、待てよ。もしかするとそういう映画だったのかもしれない。だからといって映像美がチャラになるわけではないのだが。