「評価は分かれるだろう」チャイコフスキーの妻 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
評価は分かれるだろう
匂い立つようなリアリズム、
咽せかえるような描写、
技術的にはロシア作品ならではの,
非常に高いレベルのキャスト、スタッフによる作品である。
しかし、
物語の構造が複雑であり、
全ての要素をバランスよく描くことが難しかったように思われる。
そのため、観客によっては、
登場人物の行動動機が理解しづらいと感じてしまうかもしれない。
これらの要素を全て描き出すためには、
より長い尺が必要だったかもしれない。
勝手に整理してみると
メインプロット〈アントニーナの一途な愛〉
サブプロット1〈チャイコフスキーの取り巻き、弁護士達の思惑〉
サブプロット2〈その思惑に翻弄されるアントニーナ〉
サブプロット3〈アントニーナの本音(LOVE or MONEY)〉
4〈チャイコフスキーの作曲家としての凄さの強調、1と絡めて〉
5〈アントニーナの夢〉
6〈家族の環境とその関係〉
これらをしっかりと丁寧に描写するには、
恐らく140分の倍の尺は必要だろう。
もちろんロシアのスタッフならそんな事は100も承知だろうから、
何らかの理由があったのだろう。
それにしても、
駅や家で、時間経過の長回しのワンカット、
昼から夜、夜から朝、
生から死(生から死を1カットはロシア映画ならでは)、
晴天から雨、
しかも、
自然光を活かした舞台つくりは、
技術を超えた執念も感じる。
火事のシーン、落下した場所、
その意味・・・震えた。
プロットを効果的に編んでいけば、
ダンスもズバッと決まっていただろう。
ビクトル・ユーゴーの娘の実話、
「アデルの恋の物語」を思い出した。
【蛇足】
二時間で上記のプロットを省略して完成させる方法もあるが、
「チャイコフスキーの妻 ふるさと事件簿、偽りの結婚」
のようになるのでやめといたほうが・・・・