「友達あるあるをちりばめつつ、「回復」のあり方について語りかけてくる一作」ショーイング・アップ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
友達あるあるをちりばめつつ、「回復」のあり方について語りかけてくる一作
気心が知れた知人だからこそ、雑にあしらわれていると感じた瞬間に、無性に心がささくれ立ってしまった経験は誰しもあるはず。ましてや自分の人生を大きく踏み出す直前であればなおさらでしょう。
本作の主人公、リジー(ミシェル・ウィリアムズ)とジョー(ホン・チャウ)という二人の芸術家の関係もまさにそんな感じです。それぞれの個展に向けて準備を進めていく中で生じる、様々なできごとに翻弄される二人(というか、主にリジー)の姿を、格別大きな事件も交えず落ち着いた筆致で描いているところは、いつものライカート監督作品だし、すっかりライカート作品の看板となっているミシェル・ウィリアムズの演技も心得たものです。
これまでのライカート監督の作品は、どこに行きつくのかわからない「漂泊の人々」を描いてきました。一方、本作のリジーは大学に所属し、個展の開催という、物語上の到着点も明確です。
本人はどうも周囲に対して疎外感を抱いているようですが、少なくとも立場上は、ちゃんと「居場所のある人」というわけで、少し今までのライカート作品の主人公とは毛色が異なっています。むしろ、どうもかつて芸術家を志して挫折しらたらしい、リジーの兄に、心が彷徨っている人々の姿を託しているようです。
序盤から目を引く傷ついた鳩と、中盤に登場する損傷した「あるもの」とが、回復しうるものと回復しえないもののわかりやすい対比となっているのですが、こうした明確な対比構図の提示もライカート作品では珍しいかもしれません。傷ついた「あるもの」が何で、どのような役割を帯びていくのか、ぜひとも注目してほしいところ!
プロダクション・ノートとか読みたくても、公式ホームページ自体が配給を手掛けたUNEXTの特集ページの一部なんですよね…。短くとも劇場公開して、パンプレットも販売してほしい!