別れる決心のレビュー・感想・評価
全39件中、1~20件目を表示
意味を掴み損ねてしまった
レンタル110
よく観るYOUTUBE映画レビューで
落下の解剖学のときに引き合いに出されていて
観たいリストに入れていた
非常宣言がすごく面白かったのでかなり期待していたのだが
結果そこまでではなかった
数回に分けて鑑賞するのはいつものことなのだが
途中体調を崩してしまい鑑賞間隔が間延びして
作品に対する熱意が薄れて意味を掴み損ねてしまった感がある
出だしは良かったし主人公が時制をワープして語りかけるとか
スマートフォンを使った演出なんかも斬新ではないが現代風で
良さげだったのだが 如何せん意味を掴み損ねておるので
ちょっと北野武風な匂いも感じた
部下の女性刑事がいい味
健康第一としみじみ思う
男を守る為
刑事と被疑者女性との恋愛?
その世界を全く知らないが、時々あるらしい。
漫画でも見たことがある。
ある意味期待?したが、二人の間にあるのは
プラトニックもプラトニック。
男(刑事)にとって理知的な妻は、ちょっと肩がはる
存在だったのかも❓しれない。
対して、女(被疑者)は中国人であまり韓国語を話せず夫を亡くし途方に暮れた雰囲気を醸し出し、犯人かどうかはさておき刑事の同情を誘い、おまけに美人だった。惚れぬわけが無い。
女も男の気持ちを感じ取る。
張り込みをする男を見つけ写真を撮り、
「グッドモーニング」と声をかけられて、心弾む男。
恋する少年か⁉️
女が聞いた。
「韓国では、妻のいる人は、他の人を好きになってはいけないのですか❓」ということは?
刑事の部屋、
犯罪資料が壁一面に貼ってある部屋に女を通す。←ええのか⁉️
女夜中に来て入って写真を剥がす←ええのか⁉️
女は、母か❓恋人か❓妻か❓
男と女、デートか、
男はぬけぬけと言う。
「ソレさんを好きな理由を聞かないんですか⁉️」
韓国のお寺?カラフルな仁王像⁉️
歴史の繋がりを感じた。
料理作り合う仲?なんて⁉️
釣り中にメール、おばあさんのところになぜ行く❓
あなたの職業は?と聞きたい⁉️
男は、立証しようとクライミング。
時間が合った為、男は、自然と避けてしまう。
ここの男と女の会話なかなか。
他の男(=刑事)と別れる決心→しょうもない男と結婚する理由だと。
あなたに会うにはこうするしかって、犯罪だけど。
女の言葉、支離滅裂❗️
男が言った「愛してる。」の音声ファイルがあると‥‥。
詮索好きな夫に見つかると‥‥⁉️
ネタバレ、最初の事件、男が分かりながら隠蔽して
自殺案件としたが、女の犯行❗️よく登った。
女は男からの取り調べ中のシマ寿司のにぎりが
よっぽど良かったのか二度目も会いたくて、
投資詐欺の夫と結婚する。
恨みを買っている夫なのでよく女にも脅しに来る奴の母親を殺してその奴の怒りを発火させる。
案の定だけど、証拠のスマホを刑事の男に捨てろ、と
言われて捨てたけど、男は刑事なのに犯罪の片棒担ぎ。
会えたからうれしいけれど、刑事を巻き込み過ぎたと
思ったからか⁉️
女は助かったのだろうか⁉️
少々無理はあるが大人の禁じられた愛
カンヌ受賞監督パク・チャヌク(オールドボーイ)が、中国の人気女優タン・ウェイ(ラストコーション、大明皇妃)を迎えての大人のラブサスペンス。
とても面白かった。
エグい場面あるのでバイオレンス苦手な方は注意。
魔性の女というかファム・ファタルになるのでしょう。
危ういのに抗えない。
誰も彼女を実は見ていなかった。
介護人、妻、容疑者、そんな肩書の存在としてしか認識してなかった。
彼女はその犯罪と最後の選択で、いやでも決して消えない存在として傷跡を残せてしまったのだろう。
美しき崩壊
優秀な単身赴任刑事が、被疑者の中国出身の若妻にふにゃふにゃにされてしまう。単身男に限らないが、味方がいない殺伐とした日々の中で、優しくされたらイチコロだ。ふにゃふにゃになったら、こうもふにゃふにゃなのか。すっぽん食べて刑事としての矜持を取り戻せと言いたいところだが、もうスマホを一生握りしめて崩壊に酔ってくれ。ヒロインが超魅力的。必殺技は、覚悟の眼差し。
男を崩壊させる女・・・
2人の関係は刑事と容疑者
その女に関わったら身の破滅。
行く末は地獄か?煉獄か?
「オールドボーイ」は好きで何回も観た。
スパイク・リーのリメイクも観た。
「お嬢さん」にも仰天した。
両方に共通するのは倫理観の欠如と法令無視。
そんな過激なパク・チャヌク監督の最新作は、
なんともテクニシャンで大人で洒落た雰囲気・・・意外でした。
前半はもどかしいけれど、刑事のヘジュン(パク・ヘイル)が、
被疑者ソン・ソレ(タン・ウェイ)にどうしようもなく惹かれて行く。
刑事が事件の闇に呑まれて破滅する映画は多い。
ヒッチコックの「めまい」の主人公も刑事で、
高所から落下するトリックや女がファムファタールな点、
かなりインスパイアされていると思う。
そして驚いたのはファムファタールのソン・ソレを演じたタン・ウェイが
「ラストコーション」の主役の過酷な運命に翻弄される女スパイだった事。
過激な性愛が話題になった映画だった。
あの痩せっぽちが40代になっても、まだ可愛らしく美しい。
心理描写で見せる心理サスペンス。
アル・パチーノの不眠症の刑事が現実と妄想の区別の付かなくなる……
「インソムニア」もきっとパク監督の意識下にあったと思う。
双眼鏡を覗くヘジュンの意識が、ソレの部屋では隣に居てソレと
仲良く映し出されるシーンとか、
蟻のたかった死体写真を貼るヘジュンの居間。
事件に取り憑かれた刑事が、容疑者の女にも取り憑かれる。
タン・ウェイの表情はあどけない。
(口元の含み笑い・・見上げる瞳の媚び・・)
そしてイポという名の妻の住む「霧の町」に、
夫を伴って現れるソン・ソレ。
そしてまたしても、ソレの夫の死体!!
ソレはヘジュンの大好物を餌のようにテーブルに載せる。
《あなたの未解決事件になってあげる?!》
含み笑い、
狂っている・・・
ラストの海辺のシーンは怖しくも破壊的。
想像を超えた凄み。
パク・チャヌク監督の独創性と非凡さを見せつけられた。
あれ?がソン・ソレの「別れる決心」のやり方なの?
どんな思いを込めて、こうまでして、
私は、観客は、この映画のラストを、
生涯、忘れることは不可能だろう。
「女が、自分の記憶をあんな形で刻印するとは!」
男は完全に壊れて崩れ落ちました、
砂のお城のように。
インソムニア
自分が今も睡眠障害っぽいし、Cパップも使ったことあるためか、ある程度は共感できた。そんな睡眠不足の刑事ヘジュン。夫婦の職場が離れているため週末婚状態。セックスレスだと離婚の危機だと奥さんに聞かされて、とても情熱的とは思えない週末義理セックスを繰り返していた。ザクロやスッポンなんてのもいい伏線。ただ、指に食いつかれて痛そうだった・・・
刑事と被疑者による純愛と言ってしまえば簡単だけど、被疑者ソン・ソレが韓国語が苦手な中国人である点や、意外とデジタル人間であるという設定が面白いのです。絶壁の山頂から転落死した夫は、中国でソレが犯罪を犯していることを知っていて妻を縛り付けていた。彼自身も入国管理局に勤めて収賄なんかの疑惑がいっぱい。しかし、捜査の末、自殺として解決してしまうのだった。
そして13カ月後、妻の住むイポ市へ転勤となったヘジュン。そこの市場において偶然にも再婚したソレ夫婦と出くわしてしまう。新夫は詐欺まがいの投資コンサルタントで儲けていたが、損失が大きくなって逃げ回っていたという。そして第二の殺人事件が起きるのだ。
スマホを交換するといったアリバイ工作がミステリーとして秀逸ではあるものの、どこまでが真実かは闇の中。ヘジュンとしては真犯人だと確信を持ちつつも、ソレへの恋心からか「スマホを海に沈めろ」と忠告したりするのだった。
複雑な刑事の心理(最年少で警視になったとかでなんだか優秀な人みたい)で転任した海辺の町でも指揮を執るが、ソレを庇うやら犯人らしき人物を捜し当てるとか、もう入れ込みようは凄い。何しろソレがいてくれるおかげで不眠も解消したのだから。第二の夫殺しについては、プールの水を抜いて死んでいなかった夫にトドメを刺した感じに描かれつつも、よくわからない。この結末がわからないようにしたパク・チャヌク監督の力量を痛感した。だいたい、不眠症だとか現実と妄想を区別できなくなるストーリーは概ねこのような結末に・・・真実は「霧」の中だよ!
それにしても中国語と韓国語の意思疎通や、デジタルとアナログとの対比(最初の夫の家には大量のアナログレコードがあった)、タバコとかアイスクリームとか魚のさばきとか、なんだか考えさせられるシーンも多い。最も大きな対比は山と海だったでしょうか・・・それにしても絶壁の山が「クソ山」という名前だったので笑いたくなった。
恋を描くのに、愛してるもセックスも必要ない
ところどころにユーモアを織り交ぜながら、詩的かつ倒錯的に綴られる二人のロマンス。
ある意味、こんなにロマンチックな作品は初めて見た気がします。
運命の人に出会って人生を滅茶苦茶にされたい、
自分自身が崩壊しない恋なんて恋じゃない、という方におすすめ
まあまあだった
退屈ではないのだけど、長くて眠い。最初の事件で終わりかと思ったらその後も事件があって、そっちが長くてウトウトした。特にヒロインが主人公の刑事の不眠を直そうとして、寝させようとするのでこっちまで眠くなる。
晴れない霧の中で圧倒される作品
予告編を見て期待していました。
スピーディなカット割りの中で時間を前後入れ替えたり、回想シーン上に主人公を入れ込むテクニックや、物語上のキーでもある翻訳アプリなども含めて、字幕版では理解が十分に追い付かないところもあったうえで、お恥ずかしいことに最初のクライマックスでそのままエンディングを迎えるものと思いこんでいたため、その後の怒涛の展開に頭がついていかない状態になってしまいました。
作品そのものはとても好みだったため、急ぎ吹き替え版も見てきましたが、ようやく作品を理解できたように思えます。
とはいえ、すべてをわかりやすく描いているわけではないため、作中のイポの霧のようなモヤモヤの中にいるのも事実で、考察も進むし、ほかの人とと語りたいし、また見たくなる作品です。
クソ山やライオン岩海岸? など、あまり日本では見られない独特の風景美も興味深かったです。
そして、なによりタン・ウェイさんの派手すぎない美しさに終始圧倒されてしまいました。
R指定じゃないパク・チャヌクなんて!
始めの方でヤラレちゃった女の子が「私を殺して」という場面があって、その伏線回収を見守っていたのだが。ラストの砂浜生き埋めってこと?
予告の最後の右下のGマークにちょっとやな予感はしてたんだ。パク・チャヌクはR指定じゃなきゃ、という先入観が強く、脱しようとしている頑張りは認めたいところだが、やはりドロドロを期待している人には物足りないのかな。「八百屋お七」を爽やかにされてもね…
監督に惹かれて観たけれど。
オールドボーイを期待したわけではないのだけれど、少し物足りない印象を受けてしまった。
刑事と被害者の妻の一言で言えば恋愛映画だった。
2人がひかれあいながらも離れて、そしてまた出会う。
ストーリーはそれほどインパクトはない。
殺人事件の容疑者でもある女性を張り込みながら、なぜか不眠症の男が深い眠りに落ちるところは、2人の魂の同調を感じさせられて、クライマックスに繋がるような気がした。
1番インパクトがあったのは最後に彼女が亡くなるシーン。こんな死に方は思いつかなかった。
なんだか海の泡のように消える感じが美しく、主人公の刑事の叫びが届くのではないかと思った。
映像展開
その場にいない相手も登場して来るので、映像展開は面白いですが、内容的には少し物足りないかも、特に前半は。彼女が犯人である推理辺りから少し面白くなってきました。でも、彼女は魅力的ですね。
八百屋お七
別れる決心
Decision to Leave
病気の母を抱える、中国人の若い娘。
母に頼まれて彼女を殺したことによって、国を追われる身となる。
不法移民船に乗って、韓国へ潜り込む。
船は摘発されるが、移民管理官の温情によって見逃され、入国資格を得る。
女はこの入国管理官の妻となるが、夫は所有欲が強く、彼女を暴力によって支配した。
耐え兼ねた女は、ついに彼を殺し、事故を偽装する。
男の死を担当することになった警部が、彼女と出会うところから物語はスタートする。
・・・・・
母を失い、国を追われ、暴力によって支配される哀れな若い女。
警部はこの女を気にかけ、そして恋心を抱くようになる。
男の死は事故ということでいったん片がつく。
だが警部は、女が殺人を犯した証拠に気付いてしまう。
けれども女を愛する警部は、証拠を隠滅し、女を助けようとする。
男の死は事故として処理されたため、2人はもう出会うことはなくなる。
それでも女は、警部と会いたいがために、異動となった彼の管轄区域にまで越してきて事件を起こす。
(さながら、江戸時代に大火を起こしてまで恋人に会おうとした「八百屋お七」である)
2人が会うために、殺人事件を起こすしかない。
けれども容疑者と担当警部という立場上、2人が結ばれることは社会的に許されない…
男とのつながりを一生のものとするため、女は、決して見つからない方法で自殺する。
男が自分を永遠に探し続けるように。
男にとっての「未解決事件」になるために…
・・・
このようなストーリーを成立させるため、物語には「主人公と妻との不仲」や「仕事に取り憑かれた主人公が、未解決事件があるたびに不眠となる」と言った設定が盛り込まれています。
主人公の妻は、夫が事件に取り憑かれて自分を蔑ろにしていることから満たされず、夫婦仲は疎遠になっていきます。夫の側も、世話焼きな妻を面倒に思っています。
愛する女が事件(仕事)の容疑者となることは、ワーカーホリックな男にとって、男女仲継続のための解決策となってしまうのです。
それゆえに女は事件を起こし続けざるをせず、一方で、立場上2人は決して結ばれてはならない、というジレンマが発生します。
正直、そもそも男が女を気にかけてしまうことに始まり、あまりにプライベートで2人が密会しすぎている点は現実性を欠いています。
一方で、「不遇な女」の話は真実なのか?彼女は殺しに快感を覚えるサイコパスなのではないか?という疑念から物語はつねに緊張感をはらんで進行します。
最終的に、物語は『ゴーン・ガール』のような後味の悪さ・居心地の悪さというよりも、純愛の方向へとむかいますが、男は女を欲している一方、女のほうは「男を愛している」というより、「自分が丁寧に扱われること。求められ、大切にされるということ」に価値を置いているという印象です。
「八百屋お七」のように、「恋人と出会うため罪を犯す」というような物語の類型が、世界に点在しているのかは分かりませんが、2人の接点が「殺人事件」だけとなってしまい、捜査資料となる音声ファイルを通じまるでラブレターを送り合うように交信する関係にはフェティッシュさすら覚えます。
※正確には、女が事件を起こしたのは男と会うためだけでなく、2人の関係をバラそうとしている人間から男を守るためでもあったことが明かされ、純愛味が増します。
主人公が捜査を行う際に、犯行の様子をまるで現場にいたかのように再現していく映像には面白いものがありました。
映画の盛り上がりどころや起承転結がわかりにくい点は評価しづらいです。しかしフェティッシュな恋愛の形と、説得力を持たせるための人物設定、事件のトリックなど、豊富な作り込みが見られる映画でした。
映像も質の高いものでした。(2月21日)
・・・・・
【追記】劇中、マーラーの交響曲第5番から「アダージョ」が使用されています。この曲は、ルキノ・ヴィスコンティの映画『ベニスに死す』において使用されたことでも有名です。
『別れる決心』の後半には、ヒロインが海に向かって手を伸ばすシーンがありますが、これは『ベニスに死す』に登場した少年タージォと同じポーズです。
タージォは、芸術家にとって憧れであり理想でもある「永遠の美」を象徴する存在ですが、『ベニスに死す』の主人公である音楽家はついぞこの「永遠の美」を手に入れることなく、夕日を背にするタージォを眺めながら命を落とします。
『別れる決心』のヒロインがタージォと同じポーズをするのは、彼女もまた「永遠の存在」「永遠に手に入ることのない存在」であるということを示唆するものなのです。
映画のラストシーンまで見るとわかることですが、すでに映画の途中でヒントが与えられているのですね。(3月1日)
ソレが分かりにくい
へジュンがソレに惹かれる描写はストレートなのに対して、ソレのヘジュンへの想いがちょっと分かりにくいです。
殺人と話が絡んでいるので、影のある殺人犯とごく普通のひとり女性を描くのは難しいと思います。2人の旦那とのやりとり(関係)については、また別の人格が見えてくるので、そこが分かりにくい原因ではないかと思います。
あと、殺人については、もう少し謎めいていてもよかったかなと思います。
氷の微笑のような謎な女なのか愛に生きる女なのか、どっちかに振ってもよかった気もします。どちらも中途半端な感じがありました。
純愛女とフィルム・ノワール男
韓国映画の骨太な展開力は言わずもがな、繊細な演出にうっとりする。ヘジュン刑事とソレが取調室で高級な寿司を食べるシーンが印象的だった。寿司を食べ終えた二人が夫婦のごとき阿吽の呼吸で机の上を片付けるシーン。ほんの些細な描写だが、これから起こる破滅的な不倫劇をコミカルかつクリティカルに予示している。携帯や腕時計やApple Watchといったデバイスの運用も見事なものだった。
錯綜に錯綜を重ねながら破滅へと転がり落ちていく脚本、首の皮一枚でギリギリ意味が繋がり合う物語構成はいかにもパク・チャヌクらしい。しかし彼は『親切なクムジャさん』『オールドボーイ』のような、どんでん返しのカタルシスで強引に魅せるやり方からは既に脱しており、丁寧かつ丹念に疑惑と憂鬱の楼閣を築き上げていく。そしてそれは出口を見出せないままエンドロールへと暗転する。そういう意味では韓国映画らしくない韓国映画だった。
全体的にシリアスな色調ではあるものの、不意に挿入されるザクロやスッポン等の小道具が張りつめすぎたサスペンスにほんの少しの抜け感を与えていた。
探偵や警察といった「謎解き役」的職業に従事するハードボイルド・ガイが謎多きファム・ファタールに翻弄されるという構図は、40〜50年代ハリウッドのフィルム・ノワールを彷彿とさせる(というか直接的な参照項だろう)。ただ、本作の場合、ファム・ファタールは最後までハードボイルド・ガイの所有物にならない。
言ってしまえばフィルム・ノワールというのは男のマッチョな欲望を満たすための、メチャクチャ出来のいいAVみたいなものだ。素性の知れない美女に振り回されることでまずマゾヒズムが刺激される。そしてそれが女に対するミソジニー的苛立ちに変転する寸前で、美女の謎が暴かれる。武装解除された美女はなす術もなく自らの心も体も主人公に捧げる。そして最後は主人公が女のために重傷を負ったり命を落としたりする。エロスを突っ切ってタナトスまでをも満たす贅沢っぷり。アメリカ人俳優としては背が低く、見目もそこまで優れているとはいえないハンフリー・ボガードがフィルム・ノワールの代表的名優となり得たのも、まさにそのルックス的な敷居の低さ(=自己投影の容易さ)が理由の一つだといえそうだ。ゆえに受け手は作品のマッチョ的快楽に心から没入できる。
ヘジュンもまたこうしたフィルム・ノワールに内在する「男の欲望」を強く抱く人物だ。しかしその欲望は終ぞ完全に実現されない。仏閣でのデートのあたりまではほとんど完璧なフィルム・ノワールの作法を踏襲していた物語だったが、以降は気まずい肩透かし、掛け違えが次々に起きていく。
たとえばソレの2番目の夫。こいつは本来ヘジュンがどうにか片付けるべきだった人物だ。「寝取られ」という屈辱を面と向かって味わわされたのだから、ソレは全力でこいつを叩きのめしてやる必要があった。しかしそうするより先に2番目の夫は何者かによって惨殺され、晴らされぬ屈辱だけが中空に漂い続ける。ますます謎を深めていくソレに対するヘジュンのミソジニー的苛立ちは、妻やちんちくりんの女刑事への無視や無関心として露呈する。
あるいは深夜の山上でヘジュンがソレと共に彼女の母親の遺灰を撒くシーン。山上、男、女という構成はソレが1番目の夫を禿山の頂上から突き落とした冒頭シーンを思い起こさせる。ソレに背を向けて遺灰を撒くヘジュンも、もちろんそのことを知っている。知った上で彼女に背を向けている。ソレが次第に近づいてくることを悟りながら、ヘジュンは一瞬覚悟したような表情を見せる。そこには「女のために死ぬ」という彼のタナトス的欲望が映し出されている。しかしここでも彼の欲望は満たされない。ソレはヘジュンを優しく抱きしめ、2人は熱い接吻を交わす。
ラストシーンでは、ソレが生き埋めにされた砂浜の上を、ヘジュンがその名を叫びながら彷徨する。ソレがなぜ彼のもとを去ってしまったのか、という点にはさまざまな議論がありそうだが、私はヘジュンが徹頭徹尾フィルム・ノワール的な思考体系から抜け出せなかったことが原因にあると思う。
ソレは最初からヘジュンのことが好きだった。それだけだった。そこに勝手に疑惑を持ちかけ、勝手にファム・ファタールの幻影を見てとったのはヘジュンだ。ソレもそのことはよくわかっていて、だからこそ彼の関心を引くべく謎めいた女を演出し続ける必要に駆られた(「あなたの未解決事件になりたい」というセリフが好例だ)のではないか。しかしヘジュンは気がつかない。フィルム・ノワールの文法に従って相手を都合よく幻想化するばかりで、彼女それ自体を見ようとしない。だから彼女を失った。
これは純愛女とフィルム・ノワール男の滑稽で悲痛なすれ違い劇なのだと私は思う。
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