別れる決心のレビュー・感想・評価
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昨日はブルーマンデー。
スタイリッシュに、思わせぶりに、意識高く淡泊な雰囲気で(熱く語らず)、犯罪サスペンスとしてオシャレに悲劇的な愛の結末を描いて、つまるところ『火曜サスペンス劇場』に成り果てた。ほいで、カッコつけすぎて、前代未聞の低視聴率を叩き出したとさ。
これはなかなか凄いな。
前半特に回想や説明時に時空を超えて本人がその場に居る、、という演出を多用してるせいで、そのやり方を理解するまでかなり観づらいというか混乱する。
あとヒロインが韓国語が上手くない中国人と言う設定で言葉のニュアンスその他、美味しい所が全くわからないのであった。
純愛の話ですよ。
真面目な刑事と犯罪者で運命の女。
どちらも立場やモラルや正義や欲望やら清濁入り乱れて板挟みになりもがきながらも、気持ちを育てて行く様が切ないわ。
映像的には死体や現場写真など死への暗示はフィンチャーの「7」とか思い出した。
しかし暴力やエロの描写は過激、過剰にならないように避けていて、それがもどかしい2人の関係を美しく儚く描けた理由かも知れない。
そう、ちょっとてんこ盛り過ぎだし、無理目だろ!とか、必要無いんじゃないかとか、、そのバケツじゃ無理だろ、、とか思うところもあるけどさ、、、新旧いろんな見せ方の組み合わせが、、なんか新鮮に感じたんだよなぁ。
そして私はラストでかなり悶絶しました。
2度見た方が良い映画。
海へ 捨ててください。
ラブストーリー
シンプルにおもんない
映像展開
その場にいない相手も登場して来るので、映像展開は面白いですが、内容的には少し物足りないかも、特に前半は。彼女が犯人である推理辺りから少し面白くなってきました。でも、彼女は魅力的ですね。
私の中でお眠りなさい
ポール・ヴァン・ホーベン監督『氷の微笑』(92)のシャロン・ストーンとマイケル・ダグラスが純愛をするとしたら一体どんなストーリーになるのだろう。パク・チャヌクはもしかしたらそんなことを考えながらこの本作を撮ろうとしたのかもしれません。ファム・ファタールは必ずしも悪女である必要はない、そこがこのサスペンス・ロマンの起点だったような気がするのです。
聞くところによると、中国人女優タン・ウェイをあて書きにしたシナリオだというのです。彼女のデビュー作である『ラスト、コーション』(07、アン・リー監督)を偶然映画館で見たことがあった私は、魅惑的な裸身を本作においても大胆にさらしていただけるのか、と半ば期待して劇場に足を運んだのですが.....パク・チャヌクに見事裏をかかれてしまったのです。お得意のエロスと暴力シーンはあえて抑えめにしたとのこと、残念!
そんな二人のラブシーンはキス一回だけとなんとも薄味なのですが、なぜか本作はエロい、エロいのです!成瀬巳喜男は最高傑作『浮雲』の中でやはりキスシーン1回だけでズブズブの男女関係を描いて見せてくれましたが、ハードルを自ら高くしてそれをやすやすと飛び越えてみせるなんて芸当は、巨匠ならではの実にストイックな演出といえるでしょう。本作はまた、殺人事件の真相や恋愛の結末も霧の中に隠してハッキリとは見せていない、マイナス演出が魅力の1本といえるでしょう。
劇伴にマーラーのアダージョが使われていて、これはもしやと身構えて見ていたら、やっぱり出てきました。海に向かってソレが指さす写真。それをご覧になって皆さん何か思い出されませんでしたか?そう老マエストロの禁断の愛を描いた『ベニスに死す』のラストシーン。実は美少年タジオとは違って、ソレはまったく違うことをしていたことが後でわかるのですが....巨匠チャヌクここでも余裕で遊んでいます。
パク・ヘイル演じる刑事ヘジュンは、料理上手の恐妻家、しかし、殺人事件捜査となると目の色が変わる仕事バカ。自分が担当した未解決事件のことを考えて夜も眠れなくなるほどに。夫殺しの容疑者ソレ(タン・ウェイ)を見張っているうちに、(あくまでも精神的に)ソレに惚れてしまうのです。アリバイを見破られながら自分に情けをかけてくれたヘジュンを、ソレもまた心から愛してしまうのです。だけど2人は刑事と容疑者、決して結ばれてはならない禁断の間柄なのです。
ソレの最初の夫が山から滑落死、まったく別件の犯人はヘジュンに追われ丘の上へと追いつめられます。そしてヘジュンはソレにある山の頂上に呼び出されました。「韓国へ渡ってあなたの山を見つけなさい」ソレは別れ際母親からそう告げられたのです。その昔ジュディ・オングが女は海♪と歌っていましたが、折角見つけた頼りになる優しい私の山(男)が、海である私のせいで“崩壊”してしまった。ゆえにソレはヘジュンと別れる決心を固めたのではないでしょうか。
悪女!悪女!
自分、恋愛、夫婦、仕事、生きがい何を選ぶか
解るよ、ヘジュン。
パク・チャヌク作品、完全には観切れていないし、鑑賞した作品についても正直、きちんとした理解には程遠いと自覚しています。
今作『別れる決心(Decision to Leave)』も「ミステリー」という観点でいえば、いくら映画館で集中して観ていても一度では理解できない難易度だと思います。ただそれでも惹き込まれる「サスペンス」としての緩急ある展開に「ロマンス」が生まれて複雑さが増すハラハラ感は、もう一度観返したい、或いは手っ取り早く考察を検索したい気持ちにならざるを得ません。
何と言ってもヘジュン(パク・ヘイル)とソレ(タン・ウェイ)の距離感と感情の動き、そして駆け引きですね。殺人の可能性があるある男の死を調べる刑事ヘジュンと、その男の妻で幾つかの引っ掛かる点を理由に「被疑者」となるソレ。刑事としてソレに接するヘジュンは、(中国出身で)韓国語がネイティブでないソレの言葉遣いと、予想外の言動に底知れない魅力を感じ、惹かれてしまいます。正直、男性としては解ります。相手に惑わすつもりはなくても、立場上、まともに取り合おうとするのがむしろ裏目に出る感じが、それを観ている立場でいつしか事件のこと以上に(彼目線で)彼女のことが気になり、ヘジュンがついつい狼狽える様子に激しく共感してしまうのです。
そして中盤以降、ヘジュンが「別れる決心」をしてからの展開は、私は女性でないので想像でしかありませんが、ソレの気持ちに共感する女性も多いのではないかと想像(希望?)し、そんなソレにまた惑わされるヘジュンに寄り添い、大人の関係性、距離感、そして決意に翻弄され、終盤の展開にまた萌えてしまうのです。
そんなこんなで、この二人の心の動きを動機づけることとなる事件を改めて追い、理解して、浸りたい「深みに」パク・チャヌク作品に対してまた、「自分はまだ何も解っていない」ことを自覚させられるのです。もう一度観たい。
「崩壊」の意味
思わぬ一言が女性に響くっことありますね。
好きになっておきながら、そこに気付けていない男。
その辺りの描き方は設定以上に面白く感じました。
そして、「別れる決心」をするのは、やはり女性だっていうこと(刑事の奥さんもそうでした)。
本当に大事な人とはセックスは必要ないってことか。
そんな男女の機微みたいなものの方が、事件の展開よりも印象に残りました。
なので、どうしても分類するなら、やっぱりラブストーリーなんだという気がします。
ただ、刑事が容疑者に惹かれたきっかけが何だったのか(単に容姿だったんでしょうか)。
刑事が容疑者に心を寄せた「決心」みたいなものが観たかった気がします。
あるいは、そこも男の単純さを表現していたんでしょうか笑。
タイトルなし
ちょっと合わない作品でした
"あなたはわたしの蜘蛛の巣にとらわれた毒虫…のこるは…" 持ち前の濃密なエロス&バイオレンスを封印した鬼才が究極の"寸止め"に挑んだ女の情念映画!!
『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』や近年では『お嬢さん』といった強烈でフェティッシュな作品を多く生み出している鬼才パク=チャヌク監督の最新作。
渦中のファム=ファタールに、第二次大戦中の特務機関員と女工作員との道ならぬ愛を描いた大ヒット作『ラスト、コーション』で大胆な濡れ場を演じた中国女優のタン・ウェイさん、対する職務に忠実なエリート刑事に、個人的には若き日の佐野史郎さんに見えて仕方が無いパク・ヘイルさんを配したサスペンススリラー。
監督が偏執的なまでのエロスを追求してきたうえ、主演女優もその媚態で世界に名を轟かせただけに目くるめく官能的な画が支配する曼荼羅が展開されるかと思いきや、二人の交わされる視線や重なる手といったいわば"寸止め"の徹底によって直接的なそれの何倍もの淫靡さを漂わせており、出会うべくして出会ってしまった男女の、決して結ばれ得ないがゆえに紡がれる異形の愛の形を描くスリラーでありながら、一方で疑惑の連続死の真相を追うサスペンスとしても観客を惹き付けます。
おぞましいまでの愛の暴走を、全くおぞましさの無い穏やかなお布団の映像で描いた異色作にして傑作。
観た人それぞれに解釈と印象の強弱の分かれるシーン目白押しですので、是非ご自分でもご覧になって自分なりの解釈を吟味していただければと。
大きな見せ場ではなく、巧みに配置した仕掛けで物語を引っ張っていく牽引力がさすがな一作
日本では『オールド・ボーイ』(2004)の実写版監督としても知られているパク・チャノクですが、近作の『お嬢さん』(2016)のインパクトもすごく、先の読めないストーリーを紡ぎ出す希有な才能を持っていることを証明しました。
そんなチャノク監督の最新作なので、一見地味なタイトルや予告編映像にも、どこか「油断のならなさ」が漂っていました。全体的な物語としては予告編が示唆する方向性にある程度沿っていますし、主人公ヘジュン(パク・ヘイル)は終始、表情の冴えない地味な中年男性。さらにいくつかの場面を除いてはショッキングな映像も控えめです。
それにもかかわらず、全編にわたって意表の付く展開やとっさには意味の分からない要素が飛び込んでくるので、微妙な緊張感が常に持続します。本作はG指定なので、『お嬢さん』ほどのとんでもない展開にはさすがになりませんが、この引っ張り方は見事。
パク・ヘイルの、穏やかだがやはりどこか壊れている刑事の演技はもちろん良いけど、やはりソン・ソレ(タン・ウェイ)の表情、演技なくしては本作は半ば成立していなかったのでは、と思わせるほど役どころにみごとにはまっています。
スマートフォン越しの視線、真下に見下ろす俯瞰ショットなど、時折見せる意表を突いた視点の置き方も非常に面白く、映像的にも見所の多い作品です。
これぞ韓国ノワールの奥深さ
事件そのものはいたってシンプルなのだが、本作の肝はヘジュン刑事と容疑者ソレのスリリングな心理合戦にあるように思う。
いわゆるフィルム・ノワールではよくある構図であるが、本作はその過程をじっくりと描いて見せている。この微妙な距離感に見応えが感じられた。
また、ソレは両親を早くに亡くして中国から韓国に渡った女性であり、介護士の仕事をしながらDVの夫に苦しめられているという過去を持っている。これだけの不幸を積み上げられると、どこか同情心も芽生え、単に悪女というカテゴリに収まりきらない魅力を持っている。彼女の存在がこのドラマを支えているような気がした。
製作、監督、脚本はパク・チャヌク。稀代のストーリーテラーらしく、今回も物語は二転三転する内容で最後まで面白く観れた。冒頭の山岳転落事件は中盤で一応の解決を迎えるのだが、ここから更に物語は意外な方向へと向かい、チャヌクらしい捻りの利かせ方でグイグイと引っ張って行ってる。その中でヘジュンとソレの密かな恋慕が切なく静かに盛り上げられていて、観てて胸が苦しくなるほどだった。
また、追う者と追われる者、見る者と見られる者、ヘジュンとソレの立場を巧みに交錯させながらスリリングなメロドラマに仕立てており、このあたりの手捌きも実に堂に入っている。
例えば、”愛”を”崩壊”という言葉で裏読みさせたり、中国語と韓国語のズレの中に二人の心情の揺れを表現してみたり、指輪や靴、スマホ、食べ物、ハンドクリームといったアイテムを用いて互いの心情を繊細に紡ぎ出し、ヘジュンとソレの愛憎をクールに描出している。そのアイディアと手腕には唸らされるばかりである。
また、チャヌク作品と言えば、初期の復讐三部作や「お嬢さん」のような、ある種露悪的とも言える見世物演出が特徴であるが、今回はそうした大見えを切るようなシーンは余りない。どちらかと言うと、全体をしっとりとしたトーンで包み込んでおり、作家的にも熟成されてきた感じを受けた。
もう一つ、不意を突くようにユーモラスな演出を入れてくるのもチャヌク作品の特徴かと思う。本作で言えば、スッポン強盗にまつわるシーンがそうである。このエピソードはヘジュンと妻の関係を鑑みると余計に笑える。何かにつけてセックスレスによる夫婦の危機を口にするヘジュンの妻は造形面にこそ甘さを覚えるが、要所でユーモアを演出しており、こうした硬軟織り交ぜたチャヌクの手腕は実にしたたかにして見事である。
ヘジュンの相棒となる刑事が前半と後半で2名登場してくるが、これもシリアスなトーンの中にホッと一息付けるユーモアを演出していて人物配置も冴えている。
このように昨今のパク・チャヌク作品の中では、演出、脚本共にかなり出来が良く、改めて氏の手腕に脱帽してしまった次第である。
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