「カンヌは格差社会がお好き。」逆転のトライアングル レントさんの映画レビュー(感想・評価)
カンヌは格差社会がお好き。
私はダニエルブレイク、パラサイト、万引き家族と格差を描いた作品がカンヌでは受けがいい。もちろん全てが傑作なのは間違いない。
本作は格差社会を痛烈に皮肉りながらもエンタメに振り切った点ではパラサイトに近い。
前半の主人公カップルの伝票駆け引きはいつまでも見てられるくらい可笑しかった。
中盤の嵐の中でのディナーのシーンはやり過ぎと思えるくらいセレブ達をこれでもかといじめまくる。
仕事中のクルーたちを傲慢にも泳がせたロシア人実業家の妻に対する酷い扱いは少々やりすぎと思いながらも、成熟しきった資本主義社会がまるでソドムとゴモラのように沈んでゆく様にはカタルシスを覚えた。
資本主義が滅びマルクスがいう資本が共有される社会主義体制が生まれる。しかし、そこではサバイバル能力に長けた掃除婦が新たな独裁者として君臨する。まさに社会主義に舵を切ったソ連の如く。
彼女はこの体制を守るためにヤヤの命を奪う。資本主義により搾取されてきた彼女が搾取する側に陥るという皮肉。
鋭い社会風刺に富んだ傑作。ちなみに前の席でいちゃついてた若いカップルは本作をデートに選んだことを後悔しただろうなあ。
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