ヨーロッパ新世紀のレビュー・感想・評価
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余所者排斥
トランシルバニア地方と言えばドラキュラだけど、本作は全く関係なし!
2020年に実際にルーマニアで起こった外国人排斥事件が元になっている。
トランシルバニアの小さな村は、ルーマニア人、ハンガリー人、ドイツ人、
そして現在はロマと呼ばれるジプシーらが混在して暮らしている。
言葉はルーマニア語とハンガリー語を中心にドイツ語フランス語、英語が混在。
ハンガリー語で聞き、ルーマニア語やドイツ語で答える。
(そもそも日本人には聞き分け難しいので、それぞれの言語の字幕に色がついてます)
主人公は、男尊女卑の社会で育った腕力が全てを支配できると思っていそうな男。
ドイツでロマと罵られて、暴力を振るいそのまま逃げるようにトランシルバニアに。
家族とは距離が出来、元カノの所に行ってしまう。
元カノは地元のパン工場の責任者。
いくら求人を出しても、最低賃金の職場には地元の人間は誰も応募はしない。
元カノに、地元のパン工場で働かないかと聞かれても、即断る。
仕方なくアジア系の労働者を雇ったとたん、
村中が偏見を露わにして排斥運動が燃え上がる…
現代なのに、余所者に対して村民一丸となったヒステリックなこの反応にビックリ⁉
というか、日本でも似たような展開になりそうな事案でもある。
主人公の男の家族については、今一つよく分からなくて、考察の余地あり。
他人事にしてはいけない題材だった。
厳しい現実を突き付けられる
観て感動や興奮できる映画ではない。面白いとも言えない。なのに画面から目が離せず、最初から最後まで緊張感を強いられて疲れた。世界中で問題となっている経済格差や移民の問題を、ルーマニアという馴染みのない国を舞台にリアルに描いた作品。ルーマニアの映画は初めて観たが、登場人物は皆どこの国にもいるキャラで、感情移入しやすかった。
他所の国から来て働く者に対し、排除しようとする人たち。彼らの身内も他国に出稼ぎに行っており、立場は似た者同士なのに。つくづく人間は勝手な生き物だと思った。
クライマックスは文化センターでの住民たちの騒然たる論戦(?)で、台本があるとは思えないほど、リアルにまくし立て、ヘイトの醜さをこれでもかと延々見せつけ、単純に誰が悪いとかで片付けられない厳しい現実を突き付けられる。ある意味こんなにパワーのある映画はそうそうないと思う。
ただ、ラストのくだりだけは理解できなかった。なぜシーラはあんなに謝るのかわからない。クマのきぐるみみたいのが何なのかもわからない。口をきけなかった息子が取って付けたように父親に「愛してる」と言うのも無理やり感あり。そこまでのシーンがずっと見応えあったのに、最後がモヤモヤだらけで終わったのが残念でならない。
今のルーマニアってこんな感じなのね。
ルーマニア・トランシルバニア地方のお話で、複数のコミュニティに属する人たちは日々日常は過ごせますが、ちいさな火種で脆く崩れる様子が主人公の身の回りに起こる事件とともに描かれています。
映画を見る前は極力事前情報を入れずに観る派なんですが、本作は整理して知識増やしてもう一度観てみたいです。そもそも字幕が言語ごとに3色に分かれている(監督の意向を受けてだそうですが)という作品も初めてで、とっつきにくい作りです。
そんな難解な作品ではありますが個人的には「羊いっぱいのルーマニアの風景」「盛んにワインを飲む食事」「年末年始のパーティの様子」だけでも2時間十分にお腹いっぱいになる内容でした。
さらに極々個人的な見方ですが、あらすじ、主人公のダメっぷり、息子くんを強い男にするためのキャンプ、文化センターでの村人総出の大騒ぎ、パパの最期、なんとも言えないアフターベッドシーン、フランス人に寝取られるギミック、最後のオチまで、20年前のサウスパークのオマージュかと錯覚するくらいで、エンドロールはサウスパークのラストの音楽がぐるぐる脳を駆け巡りました(エンドロールの歌はとても素敵でしたが)。20年経って米国が抱える問題がが東欧まで来たという理解で良いのでしょうか。
(オンライン試写会はすべてネタバレ扱い)ある外国で起きている外国人排斥問題を扱う内容。
今年338本目(合計988本目/今月(2023年10月度)3本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))
fansvoiceさまのご厚意でオンライン試写会に見ることができました。
悪魔城ではなく…トランシルヴァニア…を舞台に、外国人排斥運動に始まる「互いにお互いを理解しない」ことを扱うテーマを扱った「重い」映画(実際に2020年に起きた出来事を参照にしています。このことはトークショーにて言及あり)。この排斥運動というのも、ただ単に「自分たちの職業がなくなる」という経済的な恐れ、また、歴史上交戦したことがある、宗教等で分かり合えない部分があるなどといったところ、程度の差はあれかなりの差べt感が見て取られます。
日本ではおよそこのようなことがないし(適法に暮らしている外国人の方とこのようなトラブルになることがまるでない)日本やお隣の韓国、台湾などまずもって起きえないような事象が、ルーマニア(ハンガリー)を舞台にして(トランシルヴァニアの所属争いがあるため)いろいろな出来事が描かれます。
日本は確かに「こういったトラブルに巻き込まれることが少ない」国ではありますが、それは地形上の問題であったり、日本における外国人政策等にもよってくるのだろうと思います(地形学的な問題によるところも大きそう)。
日本ではせいぜい、「難民の方かな?」くらいでしか外国人を(旅行客等に普段接する以上に考えると)とらえることがないのに対して、外国では血を流したり、殴り合ったりという「ここは俺が住むんだ」「ここは私たちのもの」「その仕事は何とか人にはやらせない」といった喧嘩…が、そして暴動に繋がっていくのです。
そのことが、冒頭にも書きましたが、2020年1~3月頃に起きた事件を部分的に指しており(多少の展開の違いはあるとのことだが、趣旨は変えていないとのこと)、「日本ではありえない排斥がどのようになされているのか」という点について触れられていた本作は評価が高いです。
採点上とくに気になる点はないのでフルスコア切り上げです。
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