劇場公開日 2023年10月14日

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ヨーロッパ新世紀のレビュー・感想・評価

全27件中、1~20件目を表示

4.5現代グローバル社会の不寛容さ

2023年11月30日
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鑑賞方法:映画館

直接的には移民に対する差別、格差の問題など、多くの国で抱える社会問題を描いた作品と言えるが、もっと広く人間は根本的に不寛容さを抱えた存在ではないかと問いかけている。
主幹産業だった炭鉱の閉鎖以来、貧しい状況から抜け出せない村。新しくできたパン工場に補助金目当てで外国人労働者を雇い入れると差別が発生していく。外国人労働者の受け入れが経済的には村の助けになるわけで、合理的に考えれば村の人々にとっても良いことなはず。しかし、人々は経済合理性だけで物事を判断しない。
そうした外国人労働者の追放を訴える集会が教会で開かれる。教会でそんな話し合いをすることに、なんとも言えない気分になる。心の拠り所としての宗教は、時に排他的になる理屈としても機能してしまう。
排他的な村であることは確かだが、それをすべて断罪して終わりにしない作品でもある。よそからやってきたフランスのNGO職員の言葉は正しいが空虚である。複雑なグローバル社会がきしんでいる、機能不全であるとこの映画は描いている。

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杉本穂高

4.5対立と分断が激化する2020年代の世界との悲痛な共鳴

2023年10月31日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

知的

東欧ルーマニアの村を舞台にした映画だが、欧州各国で深刻さを増す移民・難民をめぐる問題をはじめ、ロシアによるウクライナ侵攻、そしてこの10月に勃発したパレスチナのイスラム組織ハマスとイスラエルの武力衝突など、人種や宗教の違い、利害の不一致、歴史的な不和に根差した対立と分断が激化する今の世界と悲しいくらいに共鳴する。

監督・脚本のクリスティアン・ムンジウが提示してみせるのは、多様性・融和の理想と差別・憎悪の現実という痛ましくも埋めがたいギャップだ。もともとルーマニア人、ハンガリー人、ドイツ人の多民族コミュニティーが危ういバランスで共存してきたトランシルヴァニアの斜陽の村に、パン工場経営者がEUの補助金目当てでスリランカ人労働者を雇い入れたことにより、外国人への反感や憎悪の感情が次第に高まっていく。

不仲な両親のもとから子供が消える点では「ラブレス」、差別をめぐる議論が大きなウェイトを占める点では「ウーマン・トーキング 私たちの選択」、村の閉鎖性と“熊”つながりでは「熊は、いない」といった比較的近年の力作を思い出した。

ラスト1分の畳みかけるような展開が強烈で、黙示的でもある。何かを象徴するような、予言するような幕引きの“その後”を想い続けることが、観客に課された宿題なのかもしれない。

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高森 郁哉

4.0静けさの中、やがて嵐がやってくる

2023年10月31日
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原題「RMN」はルーマニア語でMRIという意味だとか。なるほど本作には年老いた父親が医療施設でMRIを受けるシーンが描かれるし、この映画そのものもまた、現代ヨーロッパの田舎町をめぐって、表層からは窺い知ることのできない内部状況をつぶさに探ろうとする構造を持っている。えてして我々はヨーロッパをひと括りにして考えがちだが、本作からは地方の閉鎖性、外国人への差別意識、EU補助金をめぐるジレンマ、東西格差の問題など、様々なものがマグマのごとく溜まりたまっている様子が伺える。これらを観客に突き付けてただただ嫌な気持ちに浸らせるのでなく、事態が最大風速を迎えるくだりでムンジウ監督があえて固定カメラで長回しに打って出るところなど、我々の理解と映画の魔法とを深く交わらせようとする趣向もまた大きな魅力だ。このような病巣は世界中に溢れている。本作はさながら鏡のような存在であり、かつ現代の寓話とも言えるだろう。

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牛津厚信

3.0こらもヨーロッパ

2023年12月29日
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鑑賞方法:映画館

知的

ヨーロッパの片隅の小さな村、季節は冬、寂し気な風景の中で、淡々と小さな出来事が起きる。最近は日本ではあまりニュースにならない外国人労働者問題、排除を主張する村人、受け入れる雇い主と行政側の立場、意見をぶつけ合う場面はEU加盟国ならではの悩みが素直に伝わる。改めてヨーロッパは多民族の集まりで我が国とは随分と事情が違うと思いました。

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杞憂

0.5久しぶりにイライラ 主人公の行動に共感できない ルーマニアハンガリ...

2023年12月9日
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鑑賞方法:映画館

難しい

久しぶりにイライラ 主人公の行動に共感できない
ルーマニアハンガリーナチスドイツの名残でドイツ系トランシルヴァニア地方ギリシャの上 ドラキュラ伯爵で有名常にトルコからの侵略と戦っている
見る前すごく期待していた。アンアンの稲垣吾郎の映画コラムで取り上げていたし。
活弁シネマ推薦の映画なのか?
社会派でも思いっきり左翼的な女性が出てくる もっと郷に入っては郷に従うをすればいいのに 主人公の男の体格の良さ愚鈍さに見えてきて動物的熊のような凶暴さも備えててどうしようもない人物に見えた。
産業がない寒村で男たちは西のドイツへ出稼ぎ EU内で絶え間なく資本主義の競争にさらされている底辺の地位にいるしかない白人ではあるけれども 村にやってきたスリランカ人に対する猛烈な反発
この映画を見た後は日本人である幸せ 他国の存在を常に感じなくてもいいし社会の中でダメ人間でも比較的なあなあで生きてける自分の方から堕落したり法を破ったり危険を冒そうとさえしなければ トランシルヴァニアのこの主人公の男よりは

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チャン・パー

4.0遠い外国の話ではない

2023年11月25日
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鑑賞方法:映画館

17分の長回しが映画とは思えないほどのリアリティである。

何も罪を犯していない外国人を排除しようとするこの村は差別的だと言ってしまえばそれまでだが、果たして日本でも同じことが起きていないと言えるだろうか。
自分の住んでいる地域に急に外国人が増えたら、相手を知ろうとする前に警戒し排斥しようとすることは人間誰しも持ちうる感情なのかもしれない。問題はその感情とどう向き合うか、で。

主人公は根っからの悪人というわけではないものの、なんとも典型的な「有害な男らしさ」をまとっている。村人の反発を恐れて移民を教会に入れない事なかれ主義の神父といい、移民労働者たちを除けば出てくる男性はろくでもない。建前だけでも正義を掲げることすらしない。

熊がニュースを賑わせる昨今、熊から身を守るために猟銃を持つ村人達と、熊の数を調査するために来た動物保護団体の外国人との対比が何とも皮肉だ。

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Jax

4.0もう、あそこのパンは食べないの。

2023年11月17日
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鑑賞方法:映画館

ドイツに行けば差別されるルーマニア人が、自分たちの村では今度はスリランカ人を差別する。人種、宗教の異なる相手が自分たちより下(とは勝手な優越感なのだが)と見れば、排除することを正義だと信じる人々。古今東西、人間の内面に自我と欲望が存在する限り、歴然とあり続ける問題だものな。この映画の話が他人事のつもりだったのに、「アジア人って日本人じゃなかったのね」と残念がるシーンを見て、ちょっとほっとしている自分もいる。やはりどこかで差別する意識があるからなのだろうな。ヨーロッパの地域間格差の詳細は不勉強だが、ルーマニアが周辺強国の狭間できゅうきゅうと生き延びてきたことは理解できた。そういった人々が偏狭で偏屈なのも、例えば日本の戦乱期の山あいに暮らしていた百姓たちを想像すれば、同じだろうと思う。どの国でも、どの時代でも、人間は一緒なのだ。そして思う、自分はどちら側なのだろうか。もしくは、どちらでもないのだろうか。もし、自分が村人の立場にいた時、スリランカ人の握ったパンを食べることに躊躇うのだろうか。迷うことなくパンを食わないと同調するのだろうか。逆に気にしないと思えた時に、俺はパンを食べるって言える勇気があるだろうか。

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栗太郎

3.0都市に住む人々の綺麗ごとでは納まらない現実。

2023年11月11日
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閉鎖的なルーマニアの寒村。唯一の産業のパン工場が人手不足でスリランカ人労働者を雇用しとことで起きる排斥運動。異邦人へのコンサバティブ&エクスクリーシヴな「田舎」の悲劇。ある意味では、集会で議論されている中味は、カワグチを連想させる。レイシズムと伴うヘイトは、無くならないという諦観がある。特に、舞台である寒村は、ルーマニアとハンガリーとドイツ民族の葛藤の末、ロマを排除する団結で平和(均衡)を維持した、という過去があるというような描かれ方がされている。だから余計にスリランカ人という異質な存在への<恐怖>があるのだろう。

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t2law

5.0民族差別、ジプシー排除の実態

2023年11月9日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

寝られる

ヨーロッパ新世紀
大阪十三の映画館「第七芸術劇場」で鑑賞した。2023年11月3日
パンフレットを入手

ルーマニア人はEU内では、差別の対象となっているという事実。映画やパンフレットに記載がないのは、それが定着しているからではと思います。
そうした背景を把握した前提で映画を鑑賞する必要があります。

この舞台はルーマニアの小さな村。ルーマニア人とハンガリー人が住んでいて、少数のドイツ人、ロマの人々が住んでいる。
民族差別、ジプシー排除の実態です。

ストーリーを簡単に述べる

羊屠殺業を営む人物が、パン製造を始めることで、シーラをパン工場の責任者とした。
パン製造工場で働いていたスリランカ人を異物とみなした村人たちが、容赦なく偏見のまなざしを送り、攻撃的な発言を述べる。
その一方で民族や宗教など多様なルーツを持つ村人、様々な立場のひとが騒ぎ出す。
それが大きく拡大していき村全体の大きく揺るがす事態に発展。
あらためて緊急集会をひらくが、批判の声が一層大きくきくなっていく、リベラルなEUの対応にも批判の矛先が向けられてしまう
凄まじい罵声が飛び交う混乱となっていくのだった。

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大岸弦

5.0痛烈なメッセージ

2023年11月8日
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鑑賞方法:試写会

泣ける

知的

難しい

今を辛辣に問いかける衝撃作。社会問題×トランシルヴァニアの壮大な風景の凄まじい融合。尋常じゃない没入感にラストの17分に及ぶ圧巻の長回し。何もかも心臓に響き渡るただならぬ不穏さ。少年の語らない目で訴えかけるリアル。身体全体で震え上がる現実に息を呑む。

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るいまーる

3.5移民問題

2023年11月5日
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いろんな言語での「ありがとう」

ちょっと難しかったけどしっとりした怖さが漂っていた。

やはり人は過去に受けた恐怖や迫害を忘れられない生き物である。

手に入れた安息とも思える土地で常に外部からの侵入を守ろうとする人もいれば、今のままじゃ良くならないと思い新しい事を始め外部から人を迎えようとする者もいる。

どちらの考え方も間違っていないからこそ問題はなかなか解決していかない、

ラストは怒涛の展開で思考がついて行かなかったが、、なんとなく恐ろしい村人達の力が働いていたのではないか?と、、うーん。解釈が難しいや、

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バキ

3.0新世紀の行方

2023年10月26日
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 何もしなくても、ヒトは分かり合えると思うのは、ガンダムの見過ぎですかね。
 どうにも違和感、覚えます。ヨーロッパのヒトって、狩猟民族の末裔なの?。良く言えば同調圧力に屈しない。再変換すると、我を貫きまくる。和をもって尊しなんて欠片も思わない。だからこそ、対話が熱くなる。言わなくても分かるだろ?、は、通じない。そもそもひとつのクニで、複数の言語が飛び交うのだから。同じ目的があるとしても、目指すルートが異なるヒト達と、どう向き合うのか。答えが見つかりません。

 新世紀に、私達が目指すものは何?。

 一歩間違えると、世界規模の紛争に成りかねないウクライナと、イスラエル。何らかの形で欧州、あるいは欧州より移民したヒトが造ったクニと関わりがある。だとしたら、今、欧州で、何が起きているのか、どんなことを考えているのか、知って損はないはず。
 因みに、ドイツとフランスは、時に事件が起きながらも、移民政策を推進。ただ、そうでないクニもあるようです。ひっくるめて欧州ですが、その内部には結構、温度差があるみたい。ところで特別軍事作戦を、未だに敢行する例の大統領、その温度差が拡がるのを待っているとか。困ったヒトですね。
 クニに名前と特徴があるように、ヒトにも名前がある。それぞれの個性がある。それらを個別に知ることが、対話の始まりなのかな。
 とは言え、ドラキュラ公のお膝元で出稼ぎするのは、止めたほうがいいみたいですね。

「この自由な世界で」
 タイトルはすごく素敵ですが、内容はすごく陰鬱。地球の歩き方には、決して掲載されない欧州の姿を垣間見ることになります。ついでに、ブルガリア映画「ソフィアの夜明け」もどうぞ。ヨーグルト食べてるだけでは生活できない現実に、打ちのめされてね。

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機動戦士・チャングム

3.5世界の現実、日本の他人事。

2023年10月22日
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鑑賞方法:映画館

ロシアとウクライナ
アルメニアとアルバニア
イスラエルとパレスチナ
知っているのはこの程度だが、プチな争いは数知れず。宗教、人種、国籍など導火線はいつでも着火できる状態にあるように思う。
個人的には、日本はこのテーマに対する耐性が、歴史的にも他のどの国よりも低いように思う。今はインバウンドに浮かれてるレベルなので、映画で描く世界はまだまだ他人事。現実になる頃、日本はどうなっているのだろうか。

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ラーメンは味噌。時々淡麗醤油。

4.5内容だけでなく、題名から字幕まで秀逸

2023年10月22日
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鑑賞方法:映画館

グローバル化の進展の結果、国境を越えたヒト、モノ、カネの移動が飛躍的に増加し、特にヒトの移動により異文化、異人種、異宗教、異言語をバックボーンに持つ人々が、同じ地域に同居する機会が増えるようになりました。その結果、元から住んでいた住人と、新たに移り住んできた移民との間に軋轢が生じ、様々なトラブルが発生しています。本作は、ドラキュラ伝説発祥の地と言われるルーマニアのトランシルヴァニア地方の田舎を舞台にした物語でしたが、程度の差こそあれ、日本も含めて世界的に生じている現象であり、「ヨーロッパ新世紀」という題名でありながら、全世界的な問題を取り扱った意欲作でした。

主人公のマティアスは、ドイツに出稼ぎに出ていましたが、職場で受けた差別発言をきっかけに暴力沙汰を起こしてトランシルヴァニアに帰郷。ところが故郷に待つ妻・アナとの関係は冷え切っており、一粒種の小学生のルディは口がきけなくなってしまっていました。身体が衰えた父親との関係も微妙。

そんなマティアスの故郷は、元々は鉱山の街として栄えていたようですが、主要産業の鉱山が閉鎖されて働き盛りの人達はマティアスのようにEU域内をはじめ他国に出稼ぎに出てしまい、逆に地元の働き手がいない状況。そのためマティアスの元恋人であるシーラが勤めるパン工場では、スリランカ人労働者を受け入れることになり、地元民との軋轢、というか、地元民が一方的にスリランカ人を追い出そうという騒動が生じることになりました。

スリランカ人労働者が特に問題を起こした訳ではないにも関わらず、「衛生上問題がある」、「彼らがこねたパンは食べたくない」、「ウィルスを運んでくる」など、非科学的な批判が噴出。また、パン工場で求人をしても応募がなかったにも関わらず、「地元の人間を雇わず、外国人に仕事を与えた」などといった無茶苦茶な声や、彼らがクリスチャンであるにも関わらずムスリムだと決めつけるなど、地元民の主張は支離滅裂で頑迷ではあるけれども、騒ぎは大きくなるばかりの状況を、臨場感溢れる映像でこれでもかと突き付けて来るのが本作の最大の特徴でした。

働き手が減ってしまった結果、移民労働者に頼らざるを得ない状況は、今の日本でも同様です。コンビニエンスストアやファーストフードの店に行けば、外国人の店員がいるのは当たり前。それ以外にも、農場や工場、看護師や介護士など、外国人労働者は広範な領域で働いているのが今の日本であり、トランシルヴァニアだけの問題でないことは明白です。

幸いにして日本では、実質的に国境をなくしてしまったEUほど深刻な状況になっていないと思われますが、低賃金で人手不足を解消したい財界の意向を反映し続ける政権が続く限り、早晩日本のあちこちにトランシルヴァニアのような状況が出来するであろうことは容易に想像できます。特に円安が進行した上、四半世紀に渡って賃金が低下傾向にあった日本から、海外に働き場を探そうとする日本人は増えることが予想され、そうなれば人手不足解消のためにはどうしたって移民労働者に頼らざるを得なくなるでしょう。

そうなった時に、我々はいかに行動すべきなのか?本作が問いかけるのは、そうしたことなのではないかと感じたところです。

因みに邦題の「ヨーロッパ新世紀」に対して、現代は「R.M.N.」。これは、Rezonanta Magnetica Nuclearaの頭文字を取ったものだそうです。RMNは、日本で言うところのMRI(核磁気共鳴画像法)という医療機器のこと。かく言う私も何度かMRIでの検査を受けたことがありますが、身体に磁気を当てて脳や内臓の状況を見る機器です。劇中マティアスの父親がMRIの検査をし、その脳の検査画像をマティアスがスマートフォンで何度も確認する場面があるのですが、題名はここから取られています。

非常に暗喩的な題名で、一体何を意味しているのかは人それぞれ解釈があると思うのですが、パンフレットによれば、「共感などの社会的スキルは脳の大脳皮質の表面で生成され、残りの99%は、人間が生き残るための動物的な本能が占めている」そうです。移民など、バックボーンが異なる人への共感が生まれるか否かは、大部分を本能に依存しているということであり、もしかすると本作で移民に反対していた人たちの強硬な拒絶反応は、本能的なものなのかとも思ったりしました。そうだとすれば共感が生まれることは極めて困難であり、現下の世界状況は極めて絶望的だと言わざるを得ないものだなと感じたところです。

それにしても、原題をそのまま邦題にする”安易な”選択が多い中、「ヨーロッパ新世紀」という名付けは秀逸だったと思います。

あと、トランシルヴァニア地方は現在はルーマニアに属していますが、かつてはオーストリア・ハンガリー帝国に属していたことなどがあり、言語的にはルーマニア語、ハンガリー語、少数ながらドイツ語が使われているそうです。映画の中でも様々な言語が飛び交っていましたが、ルーマニア語の白、ハンガリー語の黄色、ドイツ語や英語、フランス語などその他のピンク色の字幕で表示されており、中々凄いアイディアだと感じました。これにより、登場人物たちがそれぞれの言語にどういった思いを持っているのかということも感じられるように出来ており、本作の理解を深めるのには欠かせない仕掛けだったように思います。

そんな訳で、映画の内容はもとより、題名や字幕に至るまで趣向を凝らした素晴らしい作品だったので、評価は★4.5とします。

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鶏

3.5主義主張_は盛ん

2023年10月21日
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トランシルバニア地方の寂れた村なのかな、景観もあるのではと思うのですが、終始寂しい寒空
村の若者は他国に出稼ぎに行っているというのによそ者入れるのは嫌とはどういう論理なんでしょう
日本だったら集団登下校、心のケアとか直ぐに対応するので、おとんの件といい介護、教育、医療も整備されていないなぁと思ってしまいました
村人話合いはまるで暴徒みたい
ラストの意味がよく分かりませんでした

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ゆう

4.5熊映画

2023年10月21日
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今週「コカインベア」という熊がコカイン喰ってラリパッパ~映画を観たのだが、この「ヨーロッパ新世紀」という映画もまさかの熊映画だった

ルーマニアのトランシルヴァニア地方の村を舞台に多民族の分断を描き、終盤の村人達の会議シーンは圧巻!(17分間の長回し)

この話、外国の話でしょ〜カンケーナイネ~なんて呑気に考えそうだが、日本の遠くない未来を暗示しているようで怖くもなる

弱者が更に弱い者を差別する典型的な話

最後のオチは多少分かりづらいが、シーラ役の彼女の脱ぎっぷりに👍

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うんこたれぞう

3.5ルーマニアを楽しみながら…

2023年10月21日
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ホラーっぽい映画なのかと思ってたら違った…(笑)

数年前よくニュースで取り上げられてた、移民の問題がメインです。

あと、映画を観ながらルーマニアを旅行するように楽しめる映画で、

同国が舞台だったゲーム『バイオハザード ヴィレッジ』と、ほぼ同じ風景が広がります(笑)

ゲームは、ルーマニアのロケーションを上手く落とし込んでるだなーと感心(笑)

プレイされた方はビックリすると思われ、ぜひ観てみて下さい(笑)

暗く寒そうで美しい国、行ってみたい(笑)

最後は、要考察!

デスク上の招き猫に関しても考察せずにいられない(笑)

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RAIN DOG

3.5ちょっと厳しかった…

2023年10月21日
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スリランカからの労働者の問題の前に、ルーマニアとハンガリー、ロマと西欧へのルーマニア労働者の出稼ぎ、など理解しておかねば分からないことが多く、正直訳が分からなかった。
映画としては更に「有害な男性性」などの問題も乗っけられており、どこから手を付ければ良いのか分からない状態…
問題意識も意図も分からないではないが、少し分かりやすくする事も出来たのではないかと思う…
ちょっと厳しかった…

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ぱんちょ

4.0吸血鬼は出ません。

2023年10月21日
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ルーマニアのトランシルバニアと言えばアレでしょ。
でポスターは男の子でしょ。
EUの移民問題でしょ。
でヨーロッパ新世紀って大仰なタイトルでしょ、、
ひとつも噛み合って無い事が凄く気になって観てみました。

難しくて思わずパンフ買って勉強!ヨーロッパの田舎の小国って大変なんだなぁ、侵略と征服の歴史ですよ。
見た目そんなに変わらんけど、昔は自分達が偉かったとか、先に住んでたーとか、男とわーとか、、プライドに固執するのは弱ってる時に人間やりがち、こだわりがち。
そんなわけで、やっぱり地続きの国って荒っぽくなるよね。ルーマニア人、ハンガリー人、ドイツ人、ロマ、
スリランカの労働者。パン工場のオーナーの机の上に置かれた金色の招きネコ、、、昔日本人も来てたらしい。
そこまでわかってようやくヨーロッパ新世紀ってタイトルがブラックジョークなんじゃないかと気がついた。
で、こないだ観た福田村事件なんかも思い出し、他人事じゃねーなぁ、、、、と。(原題はR.M.N.核磁気共鳴、医療で使うCTの事らしい。劇中の脳の輪切りかな?、、これまた意図不明)

小さな街で起きてる話だからコンパクトでわかりやすいが、ドイツやフランス、EU全体で起きてる移民問題と民族問題、差別問題の話なわけです。
ポスターの男の子は未来のEUを見つめて、言葉を失ったんだな、、、、、、色々メタファーあるから出来れば二度見ろと監督も言ってる。
絵作りも上手いし、超長回しもセリフのテンポがよく全くダルくなかった。ちょっと最後のシーン工場のお姉さんは何でそんなに謝ってるの?と思ったけど、、、まあ、も一度観るか。
カンヌ、パルムドールはダテじゃ無いと思う。
ムンジウ監督の前作も機会があれば観たい。

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masayasama

4.0人間の奥底に潜む闇が集団となった時に爆発する

2023年10月20日
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終盤の村の集会場での討論、スリランカ人をムスリムだとか、汚い手でパンをこねるのは気持ち悪いだとか、少数派のハンガリー人の癖にだとか、余所者に対する恐怖感からくる拒絶の心をえぐり出すシーンは、見ていても沸々と沸き上がるものがあった。EUに統合されたルーマニアの田舎町の置かれた現状(結局西欧への労働力の供給源だったり)も描かれており、心に残る作品だった。

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M.Ooi