「凄く丁寧に描かれた青春映画。」CLOSE クロース 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
凄く丁寧に描かれた青春映画。
トランスジェンダーの主人公がバレリーナを目指す姿を描いた「Girl ガール」のルーカス・ドン監督の長編第2作。
気になった前作と意味ありげ(に見える)なポスターに牽かれて鑑賞しました。
で、感想はと言うと…良い。
少年の友情と互いの感情のすれ違いと後悔を丹念に描いているが、もうそれそれはこれでもかとばかりに丁重な描き方で上映時間をたっぷり使っている。
なので痒いところまで手が届いた感はあるけど、惜しむらくは少し丁重に描き過ぎで物語の起伏が少し単調になっている感があるのと、観る側の解釈の隙間がない感じがしなくもない。
だけど、多感な少年期の葛藤と言うか、想いや感情と言った一筋縄でいかないものを丹念に丹念に描いているのは見事と言うしかない。
特に必要以上な起伏を付け足さなかったのも個人的には好感が持てる。
この辺りの描写がホント上手いんですよね。
中学生ぐらいの男の子は子供であっても、何処か大人な側面と言うか、そこにスライドしていく多感な時期であり、今まで口に出していても、それがとある切っ掛けから出せなくなってしまうことなんかがあるんですよね。
親友なんて言葉で括らなくても仲が良いのは普通であっても、それがいざ言葉にするとこっ恥ずかしい。
ましてや、それを周りにからかわれると余計に過剰反応で振る舞ってしまう。
大人だったら軽くスルー出来てしまうようなことでも、過敏に反応して、必要以上の誤解と透かしをしてしまい
“いやいや、そうじゃないんだよ。実は~”なんて袋小路に入ってしまう。
そんな小さなすれ違いによる誤解が悲劇を生んでしまう。
青春のすれ違いと言う言葉では括れないくらいに周囲に影を落としてしまうことが重く深くのし掛かるんですよね。
正直ポスタービジュアルからもっとLGBTQ的な問題に根付いたテーマかと思ったけど、凄く青春と友情な作品で驚いた。
第95回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされただけでなく、様々な賞を受賞したのも頷ける。
こういう作品を鑑賞出来たことで鑑賞の幅が広がった感じで嬉しく思います。
派手さは無いけど、丁寧に描かれた良作でお薦めです♪