「ラストカットに打ちのめされる」CLOSE クロース yookieさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストカットに打ちのめされる
主人公のレオと幼馴染のレミは、24時間ともに過ごす大親友。2人が中学校に入学した初日、その親密さをクラスメイトにからかわれたことで、レオはレミへの接し方に悩み始め、次第に距離をとるようになる。レオの態度に傷つき気持ちのやり場がないレミと、そんなレミを気にかけながらもクラスに馴染む事を優先しレミとの距離を置き続けるレオ。そんなレオにある日、レミとの突然の別れが訪れる。
このあらすじを読めば誰もが察するだろう、是枝裕和監督の「怪物」と近しいテーマの作品だ。しかし、怪物の方がずっと救いのある話であった。あの作品の少年ふたりは心を通わせ、少なくとも劇中ではラストシーンまで同じ場所にいた。でももしかしたら、あの2人にもその後同じような悲劇が訪れたのかもしれない…と、本作を観ると想像してしまう。レオの喪失感と罪悪感は如何ばかりかと、気の毒でならない。
舞台となるベルギー郊外で、花き農家を営む家に育つレオが、花摘みの手伝いをするシーンが印象的なのだが、綺麗な花が咲く暖かい期間が過ぎると、茎を倒し農地を耕す寒々しい季節が訪れ、少年2人の仲睦まじさを表していた「CLOSE」が、残された1人の少年が心を閉ざす「CLOSE」に転換していく様を、美しも切ない情景とともに観客に突き付けてくる。人生とはなんて無常なのだろう…。
今年の初めに友人を亡くした自分にとって「残された側」の後悔は痛いほどよく分かる。だから、ラストカットでレミの母親がみせる、様々な相反する感情が入り混じったあの表情に、こうやって生きていくしかないんだ…と改めて思い知らされるような結末だった。
「君の名前で僕を呼んで」「燃ゆる女の肖像」に匹敵する珠玉のラストカット、というHollywood Reporter評は、まさにその通りだと感じた。