トリとロキタのレビュー・感想・評価
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格差社会での移民/搾取問題を軸に、子ども道具のように使い捨て教育の機会も取り上げ見捨てる大人をドキュメンタリータッチで描く。見る側はその大人たちを批判しながら実は自分もその一人であることを痛感する。
アフリカの母親から送金を無心されたり、トリを守らなくてはならないという使命感と幼さゆえの不安定な精神状態で度々パニック発作に襲われるロキタ。一方、年下ながら「姉」を助けようと大胆な行動にでるトリ。騙し合いの大人たちとの汚れ仕事を担う中で、嘘や強引なやり方も自然と身についてしまう悲しさ。本来の子どもが持つのびのびした楽しさとは無縁と思えるが、「歌」が二人の心の支えになっているのが救いだ。
無理強いされたり搾取されたりしながらも、心を通わせ信じあえる二人の、強くて弱い姿が悲しい。
ダルデンヌ兄弟はいつものようにBGMを排し、観客はその場に居合わせているようなカメラワークで臨場感を出している。レストランの厨房、施設のベッドの上、ロキタの仕事場。現実は映画よりも過酷なのだろうが、この現実に大人はどう向き合えというのか・・・。
どの世界でも割りを食うのは子供。この風潮なんとかできんかと思うだけで無力感をまたもや味わう
トリとロキタがあれほど深く結びつくきっかけやエンディングでトリが大人たちに囲まれている姿に「何があったのだろう?」と途中省略感も抱くのだけれど、まるでドキュメンタリーを見るかのように、ほぼ無音の中ストーリーが展開していく。
最近の邦画だとマイスモールランドやファミリアなどもそうだけれど、移住前に夢見たような幸せな世界は望めない現実。
そして悪いことはしていないはずなのに、利用され、搾取され、力で脅されながら墜ちていくのは子供たちなのだと、胸が苦しくなりました。
日本にいると難民などの問題は身近ではないけれど世界では色んなところで起きているのでしょう。
負の連鎖を止める力など持ち合わせていませんが、せめて皆が笑いあい、苦しまない世界になりたい、なにか自分にもできないだろうかと思わせてくれる作品でした。
知らないという恐さ
アフリカからベルギーに船でやって来て養護施設で暮らす少年トリと、施設を出て大麻の売人の手伝いをしている少女ロキタの話。
イタリアン料理屋の厨房で働く売人に雇われて手伝いをしているロキタにくっついて、一緒にハッパを配達して回る血の繋がらない弟分トリ。
本当の弟たちの学費を仕送りする為、そして移民ブローカーへの借金返済の為、ビザの無いロキタがより稼げる住み込みのお仕事をすることになって…。
そういう世界を肌身では知らないし日本人だからか、やはりそういう世界に足を踏み入れ様とするぬるいロキタの気持ちは理解出来ないし、仮にそうだとしてもトリにその世界の片隅みを見せてしまうのもなんだかね。
ロキタは年の分だけいくらかはヤバさが判っている感じだったのに。
マルゲリータの件から、どうやって帰った?という雑さをみせつつ、なかなかヤバイ匂いを醸し出していたけれど、なるほどそういう話しですか…。
こういうのは映画として嫌いじゃないけれど、これを受けて最後は何を想うのか、ここからどんな方向にも進む可能性があるし、ヘタしたら子供だし何も考えてない可能性もある訳で…。
全てをみせろとは言わないけれど、あまりにもぶった切り過ぎで、ただそういう空気をみせたいだけのエンタメにも感じてしまって勿体ないなという印象。
採点5.0を超える超良作。多くの方に見てほしい良作。
今年108本目(合計759本目/今月(2023年4月度)3本目)。
シネマートではやや珍しいフランス映画の放映。
…が、これが個人的には大当たり。少なくとも「2023年上半期のトップ10」には残るかなという印象です。
お話自体は架空のもののはずですが、諸般の事情があってベルギーにやってきた2人が、滞在する権利を得るために「意に沿わない」職業を強要させられたり(難民問題、難民に対する人権感覚の低さ)、あるいは、一部の方が触れられていましたが、「男女同権思想に対する問題提起」(女性主人公のロキタに対して性的要求をする人が何名もいる)という、少なくとも「2軸」の問題提起が存在します。
お話自体は架空のはずですが、参照されているベルギーは、日本からみれば、「一見すると」男女同権思想や難民問題に関しては「多少の差はあっても」ベルギーのほうが先進国のように「一見」見えます。しかし、映画内でも示されているように、ベルギー国内でさえこうなのであり、難民問題や男女同権思想(特に女性に対する理不尽な性的要求の在り方)等が、「比較的先進国と思われる」ベルギーにおいても、「日本とそうそう変わらないレベル」になっていたのは「ある意味」驚きでした(この点に関しては、作品自体は架空ですが、ベルギー国内においても多少の差はあるとしてもこういう感じなのでしょう)。
確かに難民問題といえばどこの国でも「積極的に」歓迎する国というのは皆無ではないかと思うし、多少の差はあっても、「一定程度の差別」を受けることは確かです(人権の「先進国」と言えるベルギーであっても)。しかし、難民になることや「男女の選択」というのは個人に帰責性がないことです。それを各国(日本も含む)がただ単にたらいまわしにしているのがリアル世界の今の姿であり、また、リアル世界を考えると、ロシアとウクライナの戦争から発生する直接・間接的な難民、あるいは、クルド人難民等、「今も未解決」な問題が山積しているのが事実で(クルド人難民については、2022年の「マイスモールランド」が詳しいです)、それをどうとるかは、各国の裁量権はあるものの、「人権の先進国」であるベルギーがここまで支離滅裂だった、というのは驚きです。
翻って日本を見ると、2022年に「マイスモールランド」が公開されてから10月か11月だったかに難民申請がリアルで認められた事案が実際に存在し、日本では「難民問題」に関しては聞き取り調査を行い、「明確に難民として認められる」ものについては救済される扱いになっています。ただそれはあくまでも入管法ほかの個々の個別の事案ごとの聞き取り調査の結果、行政が裁量で認める認めないの話であり、「その救済からこぼれている方」も多数いるのもこれもまた否定のできないところです。
ここをどうとるかは難しいものの、日本がアメリカに次ぐ第二の経済大国であることを考慮すると、「本人の聞き取りや現地調査等をしっかりと行い、明白に難民申請が認められるか、明白に送り返すことが人道に反するようなものはすべて認めるべき」というのが個人の信条であり(これが国際協調というものです)、この映画は「日本」を舞台にしていませんが、「日本で」放映されている映画ということを考えると、「ベルギーと日本の差」も考える必要があり、こういったことを(間接的に)問題提起された作品は極めて評価が高いです。
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(加点0.5/映画の扱う内容に好感が持てる/評価上5.0を超えられないため、ここで記載)
・ 難民問題というのは、今もまた秒単位・分単位で発生している事柄です。いわゆる「南北格差」や「本人に帰責性のない、生まれ育った国の突然のゲリラ抗争」で逃げてきたなど、「本人にいかんともしがたい部分」は当然存在します。それを支えるのが、社会的に余裕があり、また多様性を尊重する先進国の「当然の役割である」という考え方に立てば、この映画で述べていることは、非常に好感度が高いです。
趣旨的に「若干、一部」「マイスモールランド」等と(その趣旨が若干)重複する部分もありますが、「難民とは何か、難民に対して先進国は何を施すのが良いのか」といった問題提起が感じられる点については、きわめて高く評価しました。
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マダム
ラスト。
ロキタが道に出て車を捕まえる。
一度止まったマダム。
彼女はロキタを警戒して、去ってしまう。
そして車を停め続けたロキタは
銃殺される。
あのマダムは大衆の象徴のよう。
厄介な者は出来るだけ自分のスペースに入れたくない。
自分の日常を崩したくないし、
自分だけはセーフゾーンに居たいのだ。
すぐそこにどれだけ困っている人がいようとも。
それがこの世界の多くの人々だ。
あの車はその象徴だ。
だから、車が見捨てたロキタは殺される。
見捨てるという事は、殺すと同義なんだ。
この映画では、
女性の搾取についても描かれる。
女性はあらゆる権威と暴力を駆使され、
経済的困難を利用されて、性的に搾取される。
考えられないほど子供たちは冷静で
生きる為の知恵に溢れていて、
それでいて笑顔が少ないのが余りにも悲しかった。
後ろめたさを抱えながら劇場を後にした。
真摯に
兎に角しんどい。
なぜ誰もがこんな風に子供を搾取するのか?
なぜ誰もがこんな風に子供を救わないのか?
碌でもないが、日本だって同等以上に碌でもない。
移民や難民を拒否する連中は「こんな社会にしないために」と言うだろう。だけどね、別の選択肢もある。移民(難民)をより寛容に受け入れ、社会の役に立ってもらうという選択肢も。
なぜ世界はそうした選択肢を拒否するのか?
救おうとする人々さえ入り口を閉ざそうとするのか?
という問いかけそのもの。真摯に考えねばならない…
今こそ見られるべき傑作!
ここで描かれていることは「遠い世界の話」ではない。私たちの身の回りから覆い隠された、もしくは私たちが見ようとしてこなかった「リアルな日常」だ。
この作品に登場する大人の多くは、「搾取する」あるいは「目をつぶる」ひとたち。彼らに囲まれ、じりじりと過酷な現実に絡め取られていく移民の「姉弟」の姿を、映画は声高に糾弾することなく淡々と追い続ける。この上映時間89分を前にすると、生半可な同情のことばも涙もただ虚しい。
ただ、そんな余りにも辛い現実の渦中にあって、ふたりが唄う歌は、一縷の光明を、間違いなく私の眼と耳にしみこませてもくれた。
編集に技巧を凝らし、様々な映画的記憶を織り込んだ長尺の話題作が続々と公開され、米アカデミー賞などを賑わしている昨今、そんな時流とはきわめて対照的に、贅肉を削ぎ落してシンプルかつ繊細に“語りかけてくる”本作こそ、いま見られるべきマスターピースではないだろうか。
この子たちの“リアル”を我が目に刻むため、再び映画館に向かうだろう。
ロキタが可哀そう
ベルギーに入国した難民がドラッグの運び屋をやりながらビザを得ようとする偽の姉弟の物語です。
カンヌ国際映画祭75周年記念大賞をとった作品です。
難民がせいかつしていくことがいかに大変かわかる映画です。
結末は、まるで、ドキュメンタリー映画のようです。
良作です
祖国なき者はどこで安息を得られるのか?世界のどこかでこのような悲劇が起きているかも、と思うと胸が痛くなります。お涙頂戴ではなく、ドライな描き方がとてもリアル。主人公2人の不遇の中で強さとしたたかさが感じられる演技も良かった!
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