「鹿を連想」クライムズ・オブ・ザ・フューチャー nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
鹿を連想
不穏で異様な世界観ですが、俳優陣の演技や説明的すぎない抑えた語り口で、今の現実と地続きのような感覚になります。
また、残酷な描写もありつつ、どこかユーモラスな描写もあり、登録所の二人や、技師の二人組など、狂っているような滑稽なような妙なテンションのバランスです。
登録所の二人が上役に報告する場面などは笑ってしまいました。
とはいえ、やはり冒頭など少年の描写は辛いです。
映画祭で退席者が出たなどと紹介されていますが、内臓や流血の描写よりこういう子供の扱いが不快だったのでは、などと思ってしまいましたが。
環境問題や変化を認めない社会体制のために、次の世代にしわ寄せがゆく、子供が犠牲になる、という意味合いにも感じました。
個人的には内臓や流血描写は平気な方ですが、それを快楽として味わうことが一般化している描写は、眉をひそめてしまうというか、価値観が狂って揺らぐというか。
肉体というものの感覚や扱いなど、考えさせられます。
そういった切られる描写はやはり女性が対象になっていて、切られる男性は主人公だけだったと思いますが、そこで特別感というか、主人公が性差を超えたところでの肉体の感覚を示している存在なのかとも感じます。
ラストは、肉体の変容を認めることで解放されたかのような表情が、やはり印象深いです。
ストーリーでは技師の二人組の素性が分かりにくかったのですが、捜査対象者らしき人物をアレしているところから権力側の工作員的なものかなと解釈していますが、実際のところどうなのか…、狂信者的な理由なのかも…とも。
耳男やバイオメカのパフォーマンスなど映像的にも面白かったです。
骨チェアーなどは何だこりゃ?、と。
骨チェアーの理屈はよく分かりませんが、これも奇妙な滑稽さがありました。
プラスチックを食べるといった部分では、観光地の鹿がビニール袋のゴミなどを食べてしまって消化できずに死んでしまうというニュースを連想してしまいました。
ゴミを捨てないようにしなければ、という話でしたが、人間に置き換えてみると、この先ゴミを捨てないようにできなければ、それを消化できるようにしなければ、などという未来にいつかなるのかも…などと考えてしまいます。