「どの視点から見るのか」島守の塔 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
どの視点から見るのか
敗戦が決定的な時点で沖縄県知事を任命された島田叡(兵庫県出身)と県警部長を拝命した荒井退造(栃木県出身)が、県民の命を如何に救おうとしたかを描いた物語です。
真摯な作りの映画だったと思います。でも、島田は文民として出来得る限りの力を尽くしたのかも知れませんが、本作は「悪」を結局軍部に押し付けただけの様にも見えました。鉄血勤皇隊を黙認したのも知事であったのですから、行政官としての責任と苦悩を作中でもっと深く突き詰めるべきではなかったかと思います。沖縄の人々は本作の描写をどの様にご覧になるのでしょう。
本作をご覧になった方には『沖縄決戦』(1971)も是非観て頂きたいです。目を覆いたくなるあの凄惨な惨禍がまず出発点であるべきなのです。
「島田知事は文官としては精一杯県民を思いやったのだ。当時としては仕方なかった」と言ってしまったら、「牛島司令官も仕方なかったんだ」「参謀長も仕方なかったんだ」と一億総懺悔のドミノ倒しになりかねません。問われるべき弱さは冷静に剔抉すべきではないでしょうか。
とは言うものの、70年前の『ひめゆりの塔』に出演なさった香川京子さんが終盤の慰霊場面で姿を見せた時には胸が詰まりました。香川さんご自身の意見も伺ってみたいです。
(2022/10/2 鑑賞)
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