劇場公開日 2022年7月22日

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「「硫黄島からの手紙」の主人公を、文官主人公にした感じの戦争映画」島守の塔 ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「硫黄島からの手紙」の主人公を、文官主人公にした感じの戦争映画

2025年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

まず良かった所から。
主人公の萩原聖人演じる、島田叡という人物の、
人間性、置かれた立場、県知事に就任する背景が、
「硫黄島からの手紙」の栗林中将に、非常によく似ていて驚いた。
地上戦最中の沖縄県知事が「よそ者」だった事も、さらに驚いた。

民間人ではあるけれども、品性があり、
徳があるようなエリートって感じの人柄で、
悲惨な目に遭うのを承知しつつ、誰かがやらねばの使命感のみで、
命令に従い現地に赴任し、案の定、悲惨な最期を遂げる人物。

使命感と自己犠牲を求められた首長のお話。
そういう人が、沖縄にもやっぱりいたんだって事を知る機会を得ただけでも、
この映画を鑑賞する価値や意味はあるし、製作された意義は大きい。

また、「硫黄島、、」の作品もそうだけど、
沖縄の民よりも、国を守る意識のほうが強すぎちゃって、
愚かな行動や決断をする暴走者が、
軍人だけでなく、沖縄の民間人の中にも、当たり前のようにいた事を、
避けずに描いてるのも、良い。

それが、吉岡里帆演じる、比嘉凛という人物なのだが、
男顔負けの女性愛国者という人物設定は、多少なりとも新鮮味があったし、
苦境が迫るにつれ、軍国少女的側面は消えていき、女性的な弱さが次第に出てくる所も、
吉岡の演技力の高さで、見せ場の1つになっていた。
特に、彼女の最後のシーンは良かった。

戦争は、声高らかに調子のいいことを吠える奴ほど、
追いつめられるとダメダメのクズになる。
そういう人々がいるから、余計に、本土とはまた違う、
沖縄の状況の酷さが、際立ってくる。

一番良かったと思うのは、
戦争は軍人や武官だけのものではないという特色が、この作品から垣間見れることだ。
民間人の中でも、一般人は普通の戦争映画でも描かれるが、
民間人の中での指導者、つまり県知事だったり、警察部長だったり、
非軍人の文官層は、確かに戦争映画の中には、
これまであまり出てこなかったかもしれない。そこに新たに目をつけたのは良かった。

あと、戦闘シーンなどの描写は、低予算の影響も色濃く見られたが、
それでも、真っ当な戦争映画、反戦映画の体は成していた。

悪かった所は、こういう性質の映画だから、揚げ足は取りたくないけれど、
全般通して何度も出現する、主人公が歌う「てるてる坊主」のくだり。
あれは、さすがに関西人の良くない所が如実に出ていた。

簡単に言うと「毎回スベってますよ、オジサンwww」って感じだった。
というか、てるてる坊主って、首を吊ってるから、
縁起が悪いんじゃね~の?って、ぶっちゃけ思った。

良かった演者
吉岡里帆

ソビエト蓮舫
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