「なんと妻の扱いというのは難しいものかと戦々恐々としてしまいました(^^ゞ」犬も食わねどチャーリーは笑う 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
なんと妻の扱いというのは難しいものかと戦々恐々としてしまいました(^^ゞ
映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』作品レビュー
倦怠期を迎えてしまった夫婦の物語。いま結婚している人なら身に迫るあるあるがぎっしり詰め込まれていて、日常の夫婦関係を見つめ直す作品になりました。
まぅ古今東西、「夫婦喧嘩は犬も食わない」と言うけれど、その喧嘩が大ごとになったらどうなるのでしょうか?
本作は、愛しさ余って憎さ百倍、いや千倍! 万倍!? ひと組の夫婦のゆずらないバトルをコミカルに描いたブラックコメディなのです。タイトルにある「チャーリー」とは、香取と岸井ゆきのが演じる田村夫妻が飼っているフクロウを指します。
『箱入り息子の恋』『台風家族』などオリジナル脚本でも勝負する市井昌秀監督の最新作です。
この物語の主人公、裕次郎(香取慎吾)と日和(岸井ゆきの)は結婚4年目の仲良し夫婦? というのは、もちろん表向き。
鈍感夫にイライラする日和は、積もりに積もった鬱憤を吐き出さなきゃやってらんないわー! と、出会ってしまったのは、SNSの〈旦那デスノート〉。そこには妻たちの恐ろしい? 本音、旦那たちが見たらゾッとするようなエグイ投稿がびっしり書き込まれていたのです。
そしてある日、裕次郎もその存在を知ってしまうことに!「これって俺のことか?」気になる投稿のペンネームはチャーリー。日和と一緒に飼っているフクロウの名前もチャーリーってことは! 夫婦ゲンカのゴングの鐘が、いま鳴り響きます!!
このフクロウも実は夫婦関係の絆を暗喩させる存在だったのです。
加えてサブストリーとして描かれるのは、裕次郎が勤務するホームセンターの後輩社員若槻広人(井之脇海)のマリッジブルーをどう乗り切って結婚式を迎えるのかです。若槻も〈旦那デスノート〉偶然知ってしまい、投稿者が上司である裕次郎の奥さんであるとわかったとき、ますます結婚に対して意欲を失ってしまうのでした。
これから結婚する若い世代にとっては夢も希望も失わせる悪夢の連続ような本作。はたして結婚生活に救いはあるものなのでしょうか。
それにしても夫婦間で素直にお互いを向き合うと言葉で書くと簡単です。けれども本作のように本当に向き合う前に、直ぐに仕事や趣味などに逃げ込んで、先送りしたくなりやすいものです。またその伝え方も大変デリケートです。本作ではそれがヒシヒシと感じられます。
日和が別居し、離婚しようと決断した原因は、裕次郎の流産に対するデリケートのない発言でした。裕次郎はかつて流産したことをずっと気にしていた日和に対して、励ますつもりでまた挑戦すればいいじゃないかと励ますのです。しかし日和の受け止め方は全く違っていました。その言葉で日和は「酷い!」と傷ついてしまい、別居してしまうのでした。男目線でこのやり取りを見ていると、なんと妻の扱いというのは難しいものかと戦々恐々としてしまいまったのです(^^ゞ
裕次郎が日和の職場まで乱入し、自分の想いをぶちまけるというシーンは、ちょっと強引な幕引きかなと思いました。
裕次郎を演じるのは主演の香取慎吾。映画『凪待ち』をはじめ多くの映画で様々な顔(役)を見せてきた香取が、本作では平凡で、情けなくて、ダメな夫を何とも愛おしく演じています。妻の日和を演じるのは岸井ゆきの。映画『愛がなんだ』『やがて海へと届く』をはじめ、テレビや舞台、幅広く活躍する実力派です。可愛らしさと毒舌さ、両方を合わせ持つ日和をチャーミングに演じきってくれました。
また、裕次郎の同僚役には、井之脇海、的場浩司、余貴美子というちょっぴりクセ強めのバイプレイヤーがズラリ、夫婦のバトルを盛り上げます。
公開:2022年9月23日
上映時間:117分