「香取慎吾と岸井ゆきのの演技力を作り手はもっと信頼してよかったのでは…」犬も食わねどチャーリーは笑う わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)
香取慎吾と岸井ゆきのの演技力を作り手はもっと信頼してよかったのでは…
これは自分の肌に合わなかった。物語の核心には触れず思ったところを。
修羅場になるようなケンカのシーンや、二人が向き合おうとするシーンの演出が致命的に下手。喋り手にカメラを向けて、喋り手が話して、次に相手にカメラを向けて、話して、カメラをまた相手に向けての一辺倒。気持ち悪いくらい画面を揺らしながら。そのセリフを受けて感情が変わっていくさまを引きでピタッと止めた画面で見せたら良いのになと、それに耐えうる役者を揃えているのになというのが大きな不満点。そのわりにフクロウのシーンは画面を揺らさない。冷静な視点だからと好意的に受け取ることもできるが…
冒頭のシーンで香取慎吾と岸井ゆきのの出会いが描かれる。地震対策の商品を紹介するというものなんだけど、出会わせる必然性をつけるためとはいえ、そんなにおすすめの商品なら女性が手の届きにくい高さに置くか?とは思ってしまった。その後別の客で同じようなシーンがあるのでなおさら。
ここで終わればきれいなのに…というところが5回くらいあるのに終わってくれない。会社での感情爆発シーンは、同僚がキレてる理由も黙って2人の会話を見届けてくれる理由も意味不明で。その後、香取慎吾と岸井ゆきのの喘ぎ声(性的シーンではありません)をスローで聞かされるという拷問がほぼラストシーンなんだけど、あれも確かに落ちる前とはいえ…見た人ならわかると思いますが、あの時点で幸せはもう引っかかって手元にはないことを示してません?それで掴んで嬉しいか?っていうね。
きたろうのシーンもラップのシーンもノイズにしかなってないように感じた。五七五で旦那の不満を述べるシーンも…コメディとはいえ北朝鮮を持ち出すのはさすがに不謹慎すぎない?
とにもかくにも、岸井ゆきの演じる役どころのやることなすことが理屈が通ってなさ過ぎて、かと言って理屈が通ってなさ過ぎるから愛せるといった類の突き抜け方もないので不愉快極まりないという。子連れの友だちにキレるシーンとか、親にとあることを香取慎吾が言っていったことを知ったことをキレるシーンとか…
岸井ゆきのが承認欲求を満たすために外向きに発信するというのは、それこそ「神は見返りを求める」を観たばかりなので、そちらのほうが上手だったなと。
中田青渚ちゃんはいい役もらってたけど、あの終わりでいいんか?よく話してくれたねってそこだけ岸井ゆきのが冷静なのも相まって、解決になってます?っていう。あと、新郎を胴上げしすぎて酔いますよ。
結婚式が始まる地獄の雰囲気は最高で笑ってしまった。あと、普通の男を演じる香取慎吾は良かったし、そこにホームセンターの店員という職業を付け加えたのも効果的だったと思う。岸井ゆきのもさすがでした。