「永遠の監禁」リバー、流れないでよ なつさんの映画レビュー(感想・評価)
永遠の監禁
ずっと笑いっぱなしの時間でしたよ。
貴船にある老舗旅館でおこるSFドタバタコメディ。
あれ?この会話しましたよね?
で突如はじまるタイムループ。
しかもたった2分間。
旅館内全員が記憶を保ったままのループ。
2分なんてカップ麺も完成しないじゃん…と私は思ふ。
混乱の中従業員達は悲しいかな身についている従業員魂でお客様のケアを最優先。
減らない雑炊を食べ続けるという客には味変でどうぞと柚子胡椒をそっと出す。
スランプ中の作家先生には「締め切りは来ませんよ」
出れない風呂場から出られない編集者には作家先生の部屋番号を教える。
合言葉は「2分で戻りますから」
このマジボケ感に笑いっぱなし。
2分間のループに適応能力がチート級のキャラクター達はこの現象に最初こそ戸惑いつつも記憶を保ったまま「無かったことに」になる2分の中を活発に生きる。
今作の主人公ミコトの初期位置は貴船の美しい水辺のほとり。さらさらと流れる川の音が気持ちいい。
初期位置ってワードがRPGっぽくて良かった。
消えない記憶でできなかった事の続きや宿泊客のケア、この現象の原因の追求などトライアンドエラー。従業員側は「従業員」の枠を決して超える事なく奮闘。
しかし宿泊客側は消えない記憶と無かったことになる体験で次々とトラブルを始めてしまう。
激しい喧嘩、作家先生の飽くなき探究心からの自殺。
そんな折、ミコトは料理人の恋人と合流。修行のためにフランスへ行く予定だった彼。
そしてミコトは告白する。
「ループの原因は私なんだよね」
貴船の水神様の恋のお守りを持ち、川に願ったら時が止まったと。
ミコトは彼にずっとこの旅館にいて欲しかったのだ。
だから2分間の檻に閉じ込めた。怖い…
ループごとの深まる会話。2分間のデート。観る映画は「ローマの休日」ミコトよ…
2分毎に始まる2人の楽しい楽しい逃避行。
あの手この手の逃避行をミコトはとても楽しげに走る。
結局、原因のミコトは他従業員からも客からも責められることなく、あたたかく見守られながら川辺で祈る。
しかし、また時は戻る。
すると、止めたのは俺かもしれない…私かもしれない…とダチョウ倶楽部のようなオレオレ宣言。
そう、原因は序盤に出てきた意味深な格好の1人の女性。
観客がみなそう思っていたとは思うのだけど、いわゆるタイムパトロールだった彼女の船が壊れてしまい時空が歪んだと。
最後の2分でミコトは彼の前で長い髪を切る。
1度失恋したら髪を切るってのをやってみたかったんだよね。
2分で戻る失恋の儀式に何を思ったのだろう。
断ち切ったものはなんだろう。
タイムマシンもかなりチープで良い。ナニコレ?的な。
ビール大瓶を燃料にしてバーナーで炙り、猟銃で爆発を起こす。直し方も安上がり。
最後のパトローラーさんとミコト達の女子トーク。女将さんが爆速で持ってきたお土産を渡し、この先の貴船の明るい未来をそっと教える。
パトローラーさんとミコトの手には同じ貴船の恋お守りが…
彼女も遠距離恋愛だった。
そして時は動き出す。
切った髪も元通り。
仲間の仲居が2分間の中ダメ元であらゆる人たちに声をかけ、推しのチケットをゲットした話がとても良い。
ある意味、一生に1度しかない人生を2分間をなんども繰り返しながら考え、見つめ合い、行動し、自分の力でそれを糧にできた人々が少し羨ましかった。
カップ麺は作れないけど、ほんの少しの人生は変えることができたのだ。
基本的に優しい人々しか出てこないのでゆるゆるストーリーが居心地が良かった。86分という短さも含め、とても楽しく幸せな気持ちになれた。トリッキーな設定と様々な出来事が早いペースで起こるので中弛みもしてなかったと思う。
寝る前にこういう素敵な映画を観れるのはとても幸せな気分で寝れる。
貴船に行きたいなぁ〜
映画の情景が再度目に浮かんでくるような解りやすく、そしてあたたかいレビュー。感服いたしました。
下記の箇所なんて特に。
フォローさせていただきますね。
>合言葉は「2分で戻りますから」このマジボケ感に笑いっぱなし。
>宿泊客側は消えない記憶と無かったことになる体験で次々とトラブルを始めてしまう。
>2分で戻る失恋の儀式に何を思ったのだろう。断ち切ったものはなんだろう。
>ある意味、一生に1度しかない人生を2分間をなんども繰り返しながら考え、見つめ合い、行動し、自分の力でそれを糧にできた人々が少し羨ましかった。
カップ麺は作れないけど、ほんの少しの人生は変えることができたのだ。