「何でこのオッサンが慕われるのか?」劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト) ジャワカレー澤田さんの映画レビュー(感想・評価)
何でこのオッサンが慕われるのか?
今回のシティーハンターは、一言で言えば「盛大な内輪揉め」です。
海原の世代違いの弟子が戦うというもので、これはよく考えれば昔の香港映画とかにありがちなシナリオ。ただ、同門対決にはそれ相応の「戦う理由」が必要なのですが、今作はそれが説明不足に陥っています。
最初は「飼い猫を探している」と言っていたアンジーが、次に「命を狙われている」、そこからあまり時間を置かずに「冴羽を殺しに来た」。この流れ、必要ですか? ハナからりょうちゃんを殺しにかからない理由は? そもそも、なぜアンジーは全く面識のないりょうちゃんに敵愾心を抱いているのか? そのあたり、本当に説明不足。
海原なる人物は確かにシティーハンター最大最強の黒幕なのですが、同時に原作をガッツリ読んだことのない人にしかピンと来ない人物です。つまり、彼が出てくる時点でライトユーザーやZ世代は切り捨ててるわけです。だから、「なぜ海原があんなに慕われているのか?」ということが多くの人には理解できない。
前作のラスボスは、AIとドローンを駆使してりょうちゃんを殺しにかかりました。我々一般人にとって、このふたつは「便利そうだけど何だか不安な代物」です。故に、我々のおぼろげな不安に確信を持たせるホットなテーマと言えました。そこに細かい説明はいりません。
しかし、今回の「エンジェルダスト」は全くのSF。その説明や世界観にきっちり時間を割かなければならず、それをしないと「一見さんお断り」のような映画になります。
ラストのりょうちゃんとアンジーの対決を、ただただ立会人として見守るファルコンと美樹の姿は真剣を通り越してシュールでした。彼らは解説者に徹しています。あと、今回の冴子はちょい役なんですね。つまり、りょうちゃんとその愉快な仲間たちが総動員で敵と死闘を繰り広げる……ということはないわけです。その時点で、いくらアンジーがエンジェルダストで超人化しようともりょうちゃん一家からすれば100%の実力を発揮せずにアンジーを倒してしまった…ということになります。
せっかくの映画なんだから、総動員体制で戦ってくださいよ。もっとも、そうする前に他の2人の悪役は死んでしまいましたが。
ギャグシーンも、少し間延びしている印象で「尺稼ぎかな?」という印象を覚えてしまいました。
最後のアンジーにトドメをさした射撃の仕方、あれは大昔にマイケル・ガーランドという殺し屋を戦闘不能にした方法とまったく一緒ですが、要は「使い回し」なんですよね……。「どうやって超人化したアンジーを殺せるのか?」というアイディアが制作陣に全く出てこなかった、ということでしょうか?
アンジーは、「007」で言えばボンドガール、「男はつらいよ」で言えば寅さんが片思いするヒロインみたいなものでしょう。なのに、そのキャラ描写に手抜きがあるっていうのは……。キャッツアイやルパン三世を出している場合じゃなかったと思います。