「敵対する者達の壮絶な危機脱出劇」モガディシュ 脱出までの14日間 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
敵対する者達の壮絶な危機脱出劇
2021年度韓国映画興行収入NO.1に相応しい作品である。本作は、敵対する韓国と北朝鮮の大使館員達のソマリア内戦からの壮絶な脱出劇である。前半で脱出までの経緯を丁寧に描いた上で、後半で壮絶な脱出劇を描いている。前半は会話劇主体の静的ストーリーで、凡庸、退屈なところもあり、そんなに面白い作品?という感じもしたが、尻上がりに面白さが増し、後半の脱出劇でピークに達する。脱出劇は斬新なカーアクションであり、韓国映画のポテンシャルの高さに圧倒される。
本作の舞台は、1990年のアフリカ・ソマリア。国連への加盟を目指して、韓国、北朝鮮大使館は激烈なロビー活動を繰り広げていた。しかし、ソマリアで内戦が勃発し、各国大使館も攻撃対象となる。大使館を追われた北朝鮮大使リムは、敵対する韓国大使ハンに助けを求める。その後、両国は、一致団結してソマリア脱出に奔走し、イタリア大使館の協力を得る。そして、イタリア大使館を目指した脱出劇を決行する・・・。
本作は、序盤はイマイチだが、中盤、終盤と尻上がりに面白くなる。作品の理解度が深まるに連れて面白くなる。作品の勝負所は、やはり、後半、終盤、ラストであり、本作は、そういうストーリー構成だから面白い。
前半は、韓国と北朝鮮大使館の熾烈なロビー活動をコミカル風味で描いてはいるが、両大使館の協力は有り得ないと観客が納得するには十分の敵対ぶりを見せつける。
身近なもので防弾対策をした車両で、弾丸を浴び続けながら、戦場を突破していく脱出劇は、従来にない斬新なカーアクションであり、何としてもイタリア大使館に辿り着くのだという韓国・北朝鮮大使館員達の強い思いが画面から伝わり胸が熱くなる。
ラストシーン。脱出劇は成功するが、韓国・北朝鮮大使館員達は従来の国家の枠組みを崩さない配慮をする。本作のメッセージは、危機が迫れば人は敵対する相手でも助け合えるである。
いつの日か、このメッセージが国家レベルで実現することを期待したい。