劇場公開日 2023年3月3日

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「世界論、宇宙論、映画論」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス critique_0102さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5世界論、宇宙論、映画論

2023年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

なんの前提もなく、ただアカデミーをとったという理由で見始めたのだった。
最初は、娯楽SFが、なぜアカデミーを取ったのかよくわからなかったのだが、
ここには「壮大な」物語が用意されていたのだった。
そしてこの壮大さとは、陳腐さと滑稽の裏返しであり、極めて矮小な世事のことでもあった。

あえて小賢しく言えば、
Everything Everywhere All at Onceの意味するのは、矛盾的総体の世界である。
これは時空を含めてのことなのだが、それをどのように描こうとするのかということだったのだろうか。

だから、いくら言葉を尽くしても言い表せないものがあるし、また世界がある。
それは、今を形成している重層的であり多層的な、これもまた無限な彼方にある可能性から現実化した今である。

それがEverything Everywhere All at Onceなのだ。

ありていに言えば
この現実化されている世界はモナドそのものだ。我々はなんら窓を持ってはいない。
だから、事柄の、出来事の繰り返しなど本来はないものであり、そこにただひたすらに道筋を作り合点したいと思うだけだ。

・・・などと・・
相当なものが盛り込まれていただけに、解釈もてんこ盛りになりそうだ。

おそらくは日常の「世界」はI have no story.と言えるようなものなのだろう。
Roman holidayのようなThere is no story.なのだ。

しかし、だからこそ、そこに描ける現実「世界」はまた「別様に実在する」世界だとも言える。それを相違させてくれる映画でもあった。

critique_0102